回収可能性適用指針における(分類4)の要件である「当期末において、重要な税務上の欠損金の期限切れが見込まれる」の意味

2017年5月17日
カテゴリー 会計実務Q&A

Question 

「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(以下「回収可能性適用指針」という。)第26項(3)における(分類4)の要件である「当期末において、重要な税務上の欠損金の繰越期限切れが見込まれる」とは、「当期末」において翌期以降に欠損金の繰越期限切れが生じることが「見込まれる」場合も含まれるのでしょうか、それとも当期中に欠損金が繰越期限切れになる場合のみを意味するのでしょうか。

Answer 

回収可能性適用指針第26項(3)の定めは、従前の「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」5におけるいわゆる分類④の会社の判断基準にあった「当期末において重要な税務上の欠損金の繰越期限切れが見込まれる」という定めを踏襲していると考えられます。ここで従前の分類④の判断においては、当期末において重要な欠損金の繰越期限切れが見込まれる会社は通常、将来の課税所得の発生を合理的に見積ることが困難であることを理由に、翌期確実に見込まれる課税所得の範囲内で翌期のスケジューリングの結果に基づき繰延税金資産の回収可能性を判断していたことから、「当期末において重要な税務上の欠損金の繰越期限切れが見込まれる」とは当期末の実際の期限切れを指していたと考えられ、将来の期限切れを見込むかという解釈ではないと考えられます。

このため、仮に将来における重要な税務上の欠損金の期限切れが確実に見込まれる場合であったとしても、将来における期限切れは回収可能性適用指針上での(分類4)の要件とはされていないと考えられます。

本質問において、会社は回収可能性適用指針第22項の(分類3)のすべての要件を満たしているのであれば(分類3)の企業として取り扱われると考えられます。ただし、回収可能性適用指針第25項では、(分類3)に該当する企業での将来の合理的な見積可能期間は、個々の企業の業績予測期間、業績予想能力、当該企業の置かれている経営環境等を勘案した結果、5年以内のより短い期間となる場合があり、その場合、当該期間を合理的な見積可能期間とすると定めています。次年度以降において重要な税務上の欠損金の期限切れが見込まれる状況である背景から、見積可能期間について慎重な判断が求められると考えられますので、十分に留意する必要があります。

参照条文等

  • 企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」第26項(3)
  • 監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」5

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