合併により複数制度がある場合の簡便法適用の可否

2017年7月19日
カテゴリー 会計実務Q&A

Question 

他社と合併した結果、全社の従業員は300人を超えましたが、異なる退職給付制度が2つあり、それぞれ当面は並存する予定です。1つ1つの制度でみると適用される従業員数はそれぞれ300人未満となっています。この場合、それぞれの退職給付制度について簡便法を採用することができますか。

Answer 

小規模企業等にあっては、高い信頼性をもって数理計算上の差異の見積りが困難である場合や退職給付の重要性が乏しい場合があることから、簡便法による退職給付債務等の計算が認められています。また、小規模企業等は、原則として、従業員数300人未満の企業をいいますが、従業員数が300人以上の企業であっても年齢や勤務期間に偏りがあるなどにより、原則法による計算結果に一定の高い水準の信頼性が得られないと判断される場合には、簡便法によることが認められています。

複数の退職給付制度を有する事業主において、従業員数により簡便法が採用できるかどうかは、退職給付制度ごとに判定することとされています。これは、退職給付債務の数理計算が会社単位ではなく、制度ごとに行われるためだと考えられています。そのため、複数の制度を採用している会社で、特定の制度において従業員数が300人未満である場合には、当該制度については簡便法の採用が認められます。

ただし、複数の制度について実質的に同様な制度とみて高い信頼性をもって数理計算上の見積りを行うことが可能な場合も考えられます。その場合であり、かつ、従業員数が300人超になったことで全体として退職給付に重要性があると考えられるようになった場合には、各制度が300人未満であると形式的に判断して簡便法を採用するのではなく、全体を300人超の1つの制度とみて原則法を採用することが適当な場合もあると考えられます。

根拠条文

  • 「退職給付に関する会計基準の適用指針」47項

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