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マイナス金利下における金利スワップの特例処理等の適用の可否

2017.05.17

Question

今般、日銀のマイナス金利政策に伴い、日本円LIBORなどでもマイナス金利が観察されています。この状況下において、新たに変動金利の借入を行い、変動金利の借入金利息を固定化する目的などで金利スワップ取引を行う場合、ヘッジ会計の会計処理として金利スワップの特例処理、又はヘッジ会計(繰延ヘッジ処理)を適用することが認められるのでしょうか。

Answer

(金利スワップの特例処理について)
金融商品会計基準上、金利スワップをヘッジ手段とするヘッジ会計においては、一定の要件を満たしたとき(ヘッジ会計の要件を満たし、かつ、想定元本、利息の受払条件及び契約期間がヘッジ対象とヘッジ手段でほぼ同一である場合)には、金利スワップを時価評価せず、その金利の受払の純額をヘッジ対象に係る利息の受払に加減して処理することができる「金利スワップの特例処理」の適用が認められます。この金利スワップの特例処理に係る具体的な要件については、金融商品実務指針に定めが設けられていますが、厳格な解釈が求められているものと考えられます。

本件のケースにおいて、金融法委員会が公表している「マイナス金利の導入に伴って生ずる契約解釈上の問題に対する考え方の整理」(平成28年2月23日)の見解に拠った場合には、仮に借入金等に係る適用金利が計算上マイナスとなったときでも、貸付人(金融機関など)は借入人に対してマイナス金利を適用して計算された利息相当額を支払う義務は負わないものと考えられます。一方、ヘッジ手段側であるデリバティブ(金利スワップ)に関しては、マイナス金利に関して、特例的な条項が付されていない限り、当該マイナス金利に基づいて算定された金利相当を当事者間でやり取りすることになります。

このように、ヘッジ手段である金利スワップにはマイナス金利に関して特例的な条項がなく、ヘッジ対象である借入金のみが実質的にゼロフロアーとなっているのであれば、上記の趣旨から、金融商品実務指針の借入金等の変動金利の基礎となっているインデックスが金利スワップで受払される変動金利の基礎となっているインデックスとほぼ一致していることの条件を充たしていないと考えられ、金利スワップの特例処理は認められないと考えられます。

なお、これまで金利スワップの特例処理が適用されていた金利スワップについては、現時点では、実際に借入金の変動金利がマイナスとなっている例は少ないと考えられること、また、仮にマイナスとなっている場合でも、借入金の支払利息額(ゼロ)と金利スワップにおける変動金利相当額とを比較した場合、通常、両者の差額は僅少と考えられることから、平成28年3月期決算においては、特例処理の適用を継続することは妨げられないものと考えられる見解が企業会計基準委員会(ASBJ)より示されていますが、当該見解は既存の契約に関して示されたものであり、限定的に解釈すべきものと考えられます。

(ヘッジ会計(繰延ヘッジ処理)について)
ヘッジ会計を適用するには、ヘッジ取引時において、ヘッジ取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが客観的に認められ、かつ、ヘッジ取引時以降において、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益が高い程度で相殺される状態又はヘッジ対象のキャッシュ・フローが固定されその変動が回避される状態が引き続き認められることによって、ヘッジ手段の効果が定期的に確認される必要があります。すなわち、事前テストとして、ヘッジ取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが客観的に認められることのほか、「ヘッジ手段とヘッジ対象」及び「ヘッジ有効性の評価方法」の文書化が求められるとともに、事後テストによって、ヘッジ有効性が定期的に確認されることとなります。

マイナス金利の水準・期間等によっては、事前テストの要件を満たす場合もあると考えられるため、一概に事前テストの要件を満たしていないとまでは言えないと考えられます。事前テストの要件を満たす場合、事後テスト(80-125%テスト)により、ヘッジ対象とヘッジ手段との間に高い相関関係があると認められれば、ヘッジ会計(繰延ヘッジ処理)の適用は認められると考えられます。


参照条文等

  • 企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第31項、注14
  • 会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品実務指針」という。)第143項から第159項、第178項、第346項
  • 「金融商品会計に関するQ&A」Q58
  • 公益財団法人財務会計基準機構 企業会計基準委員会 第332回企業会計基準委員会の概要 議事概要別紙(審議事項(2)マイナス金利に関する会計上の論点への対応について)



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