災害損失欠損金額とは

台風、地震、水害等の災害により、棚卸資産、固定資産または一定の繰延資産について生じた損失の額は、災害損失欠損金額を構成する「災害により生じた損失の額」に該当します。例えば、災害によりやむなく棚卸資産、固定資産を廃棄せざるを得なくなったときの廃棄損や除却損等は当てはまります。

また、新型コロナウイルス感染症の影響により生じた飲食業者等の食材(棚卸資産)の廃棄損、感染者が確認されたことにより廃棄処分した器具備品等の除却損、イベント等の中止により廃棄せざるを得なくなった商品等の廃棄損のほか、施設や備品などを消毒するために支出した費用、感染発生の防止のため配備するマスク、消毒液、空気清浄機等の購入費用等の額も、災害損失欠損金額を構成する「災害により生じた損失の額」に該当します。

災害により棚卸資産、固定資産または一定の繰延資産について生じた損失の額が対象とされているため、例えば外出自粛の要請等があったことによる店舗の売上の減少額などは対象外です。詳しくは、国税庁から公表されている「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」をご参照いただければと思います。

災害損失欠損金額は、災害欠損事業年度の欠損金額のうち、災害損失により生じた損失の額に達するまでの金額をいいます。すなわち、災害欠損事業年度の欠損金額(青色申告の場合は、青色欠損金額)≧災害損失欠損金額という関係が成り立つと考えられます。

災害欠損事業年度の欠損金額(青色申告の場合は、青色欠損金額)≧災害損失欠損金額 図表

「青色欠損金額の繰戻し還付」または「災害損失欠損金額の繰戻し還付」の選択が生じる場合

青色欠損金額の繰戻し還付制度(法法80条1項)とは別に、災害損失欠損金額の繰戻し還付制度(同条5項)があります。この両者の関係を整理する必要があります。

青色欠損金額の繰戻し還付制度の繰戻しの対象は前期に限定されるのに対して、災害損失欠損金額の繰戻し還付制度の繰戻しの対象は(青色申告法人の場合は)前期および前々期の2期になりますので、青色申告法人であっても災害損失欠損金額の活用を検討すべきケースが生じ得ます。

青色欠損金額 前期にのみ繰戻し可
 
災害損失欠損金額 前期、前々期に繰戻し可(青色申告法人の場合)

青色申告法人における災害損失欠損金額は、青色欠損金額に該当しますので、災害損失欠損金額の全部または一部につき、「災害損失欠損金額の繰戻し」または「青色欠損金額の繰戻し」のいずれかの規定を選択することができます。前々期への繰戻しについては「災害損失欠損金額の繰戻し」を適用するしかありませんが、前期に繰り戻す場合には、「災害損失欠損金額の繰戻し」、「青色欠損金額の繰戻し」のいずれの規定も適用することができることとなります。災害損失欠損金額を前期または前々期のいずれの事業年度にいくら繰り戻すか、また、青色欠損金額の繰戻しが可能である場合に、青色欠損金額の繰戻しの適用を受ける金額と災害損失欠損金額の適用を受ける金額とをどのように区分するかは、法人の計算によります(法基通17-2-4)。

災害損失欠損金額とそれ以外の青色欠損金額を有する場合において、これらの欠損金額を前期に繰り戻す場合には、これらの欠損金を区分することなく、その合計額について青色欠損金額の繰戻しの適用を受けることもできます。その場合は、「災害損失の繰戻しによる還付請求書」の作成は行わず、「欠損金の繰戻しによる還付請求書」のみを作成することになりますが、還付請求税額や翌期へ繰り越す欠損金額は、それぞれを区分して二つの還付請求書を作成する場合と同様の結果になります。

適用対象法人の違い

災害損失欠損金額の繰戻しは資本金の大小を問わず適用できますが、青色欠損金額の繰戻しは、資本金の額または出資金の額が1億円以下の中小企業者等に限り適用できるとされています。なお、新型コロナ税特法により、令和2年2月1日から令和4年1月31日までの間に終了する事業年度に生じた青色欠損金額に限り、資本金または出資金の額が1億円超10億円以下の法人も対象とされている点に留意する必要があります。ただし、大規模法人(資本金または出資金の額が10億円超の法人および相互会社)による完全支配関係がある法人、100%グループ内の複数の大規模法人に発行済株式等の全部を直接または間接に所有されている法人は除外されています。

なお、欠損金の繰戻し還付を適用したときの税効果会計の処理については、拙稿「欠損金の繰戻し還付に係る税効果会計の処理 」(太田達也の視点 2021.03.01掲載)を参照ください。また、欠損金の繰戻し還付制度を適用するときの還付請求書、明細書および別表等の記載方法等については、拙著『決算・税務申告対策の手引 令和4年3月期決算法人対応』(税務研究会出版局 2021年12月中旬刊行予定)を参照いただければ幸いです。

当コラムの意見にわたる部分は個人的な見解であり、EY新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことをお断り申し上げます。

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