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インボイス制度適用後の仕入税額控除の要件
~免税事業者等からの仕入れの処理にも要注意~

2021.07.01
公認会計士 太田 達也

帳簿および適格請求書等の保存

令和5年10月1日から、適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)が導入されます。本年10月1日から、適格請求書発行事業者の登録申請の受付が始まる点は周知の通りです。適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件は、基本的には帳簿および適格請求書等の保存です。本稿では、この保存要件を満たすための対応について解説します。

帳簿の記載事項

令和元年10月1日から導入された区分記載請求書等保存方式の段階で、課税仕入れが軽減税率対象品目に係るものである場合に、帳簿に記載すべき事項として「軽減税率対象品目である旨」が追加されました。この記載については、事業者が定めた記号を付す等の対応でもよいとされています。

帳簿の記載事項については、適格請求書等保存方式の段階での追加項目はありません。すでに対応済とみることができます。

適格請求書の記載事項

適格請求書の記載事項は、次の表の通り、点線の下線が引いてある項目が追加されます。なお、小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業、駐車場業(不特定多数の者に自動車その他の車両の駐車のための場所を提供するものに限る)またはそれらに準ずる不特定多数の者に資産の譲渡等を行う事業を行う場合は、適格請求書に代えて適格簡易請求書の交付でよいとされ、適格簡易請求書の記載事項は、一部簡略化されています。

請求書の記載事項の比較

請求書等保存方式
(~令和元.9.30)
区分記載請求書等保存方式
(令和元.10.1~令和5.9.30)
適格請求書等保存方式
(令和5.10.1~)
  • 請求書発行者の氏名または名称
  • 取引年月日
  • 課税資産の譲渡等に係る資産または役務の提供の内容
  • 税込価額
  • 請求書受領者の氏名または名称
  • 区分記載請求書発行者の氏名または名称
  • 取引年月日
  • 課税資産の譲渡等に係る資産または役務の提供の内容(軽減税率対象品目である場合は、その旨
  • 税率ごとに合計した税込価額(税率ごとに合計した税抜価額および消費税額等の記載でも可)
  • 請求書受領者の氏名または名称
    (注)追加項目について、請求書の交付を受けた事業者による追記可
  • 適格請求書発行者の氏名または名称および登録番号
  • 取引年月日
  • 課税資産の譲渡等に係る資産または役務の提供の内容(軽減税率対象品目である場合は、その旨)
  • 税率ごとに合計した税抜価額または税込価額および適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税額等
  • 請求書受領者の氏名または名称
    (注)請求書の交付を受けた事業者による追記不可
(注) 下線(並字)が区分記載請求書等保存方式の段階で追加された項目です。
  下線(太字)が適格請求書等保存方式の段階で追加される項目です。

適格請求書等保存方式では、区分記載請求書等の記載事項に加えて「登録番号」、「適用税率」および「消費税額等」が求められます。この消費税額等については、次のいずれかによって計算した金額です。

  1. 税抜価額を税率の異なるごとに区分し、それぞれの合計額に標準税率(10%)または軽減税率(8%)を乗じて得た額
  2. 税込価額を税率の異なるごとに区分し、それぞれの合計額に110分の10または108分の8を乗じて得た額

消費税額等の端数処理

適格請求書に記載される消費税額等は、上記の方法で計算した金額ですが、1円未満の端数処理については、切捨て、四捨五入、切上げなど、任意の方法とすることができるとされていますが、一請求書当たり、税率ごとに一回ずつとされる点に十分な留意が必要です。

なぜこのようなルールが適用されるかですが、適格請求書等保存方式の下では、売上税額および仕入税額の計算について現行と同じ総額計算方式だけでなく、積上げ計算方式も選択できるとされており、一品目ごとに端数処理(かつ切捨て処理)したものを積み上げて売上税額の計算をすることを認めてしまうと、納税額が過少になってしまう点を考慮したものと考えられます。

ただし、例えば個々の取引について納品書を交付しつつ、1カ月分の取引をまとめて請求書を交付する場合において、納品書に「税率ごとに区分した消費税額等」を記載するときは、納品書につき税率ごとに一回の端数処理を行うことが認められます(「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(以下、「適格請求書Q&A」)問44)。この場合、納品書に「税率ごとに区分した消費税額等」が記載されていれば、1カ月分をまとめた請求書に「税率ごとに区分した消費税額等」を特に記載する必要はなく、納品書ごとの税込価額と税込価額の合計額を記載する方法によることができます。

帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる取引

適格請求書等保存方式の下では、いわゆる3万円特例は廃止され、「支払対価の額の合計額が少額である場合」に代えて「請求書等の交付を受けることが困難である場合」と規定され、次に掲げる課税仕入れについて、当該課税仕入れを行った事業者において適格請求書等の保存を要せず、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入税額控除を認めるものとされます。

帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められる取引

  1. 公共交通機関である船舶、バスまたは鉄道による旅客の運送として行われるもの(3万円未満のものに限る)(注1)
  2. 適格簡易請求書の要件を満たす入場券等が使用の際に回収されるもの
  3. 古物営業を営む者が適格請求書発行事業者でない者から買い受けるもの
  4. 質屋を営む者が適格請求書発行事業者でない者から買い受けるもの
  5. 宅地建物取引業を営む者が適格請求書発行事業者でない者から買い受けるもの
  6. 適格請求書発行事業者でない者から再生資源または再生部品を買い受けるもの
  7. 自動販売機または自動サービス機からのもの(3万円未満のものに限る)(注2)
  8. 郵便切手類のみを対価とする郵便の役務および貨物の運送(郵便ポストに差し出された郵便物および貨物に係るものに限る)
  9. 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当および通勤手当)(注3)
  • ※1 3万円未満の公共交通機関による旅客の運送かどうかは、1回の取引の税込価額が3万円未満かどうかで判定します(インボイス通達3-9)。したがって、1商品(切符1枚)ごとの金額や、月まとめ等の金額で判定することはありません。3人分の運送役務の提供を行う場合には、3人分の金額で判定することとなります。
  • ※2 出張旅費、宿泊費、日当については、所得税法基本通達9-3により所得税が非課税となる範囲内で認められ、通勤手当については通勤に通常必要と認められるものであればよく、所得税法施行令20条の2に規定される非課税とされる通勤手当の金額を超えているかどうかは問いません(インボイス通達4-9、4-10、適格請求書Q&A問71、問72)。
  • ※3 代金の受領と資産の譲渡等が自動で行われる機械装置であって、その機械装置のみで、代金の受領と資産の譲渡等が完結するものをいいます(インボイス通達3-11)。したがって、例えば自動販売機による飲食料品の販売のほか、コインロッカーやコインランドリー等によるサービスのように機械装置のみにより代金の受領と資産の譲渡等が完結するものが該当します。

なお、帳簿のみの保存により、仕入税額控除が認められる場合、帳簿の記載事項については、通常必要な記載事項に加え、次の事項の記載が必要となる点に留意する必要があります。

  • 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるいずれかの仕入れに該当する旨
    例:① に該当する場合、「3万円未満の鉄道料金」
    に該当する場合、「入場券等」
  • 仕入れの相手方の住所または所在地(一定の者を除く)

仕入税額控除の要件を満たす請求書等

先の「帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められる取引」に掲げる場合を除き、次に掲げるもののいずれかの保存が、課税仕入れに係る仕入税額控除の要件とされます。

仕入税額控除の要件を満たす請求書等

  1. 適格請求書
  2. 適格簡易請求書
  3. 適格請求書の記載事項に係る電磁的記録(いわゆる電子インボイス)
  4. 事業者が課税仕入れについて作成する仕入明細書、仕入計算書等の書類で、適格請求書の記載事項が記載されているもの(適格請求書発行事業者の確認を受けたものに限る)
  5. 媒介または取次ぎに係る業務を行う者(卸売市場、農業協同組合または漁業協同組合等)が、委託を受けて行う農水産品の譲渡等について作成する一定の書類

上記の③は、いわゆる電子インボイスですが、その場合の保存方法としては電磁的記録のまま保存するか、紙に印刷して保存するかの選択になります。電磁的記録のまま保存する場合には、保存の方法について一定の要件を満たす必要がある点に留意する必要があります(適格請求書Q&A問54)。

また、上記の④および⑤は、現行の制度の踏襲になりますが、その記載事項について適格請求書と同様の記載事項が求められる点に留意する必要があります。

免税事業者等からの仕入れに係る会計処理

インボイス制度導入後は、原則として、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについては、税務上、仮払消費税等の額はないこととなります。しかし、法人の会計においては、消費税等の影響を損益計算から排除する目的や、そもそも会計ソフトがインボイス制度に対応していないなどの理由で、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについてインボイス制度導入前と同様に、支払対価の額に110分の10(軽減税率の対象となる場合は108分の8)を乗じて算出した金額を仮払消費税等の額として経理することも考えられます。この場合、仮払消費税等の額として経理した金額を取引の対価の額に算入して法人税の所得金額の計算を行うことになります。

ただし、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの6年間については、免税事業者等(免税事業者、適格発行事業者の登録を受けていない課税事業者および消費者)からの課税仕入れについて経過措置(注4)が適用されますので、別途配慮が必要になります。例えば、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの取引については、課税仕入れに係る支払対価の額に110分の7.8(または108分の6.24)を乗じて算出した金額に80%を乗じて算出した金額を、課税仕入れに係る消費税額とみなすとされますので、実際の仮払消費税等は当該80%部分であり、残額の20%部分を取引の対価の額に算入して法人税の所得金額の計算を行うことになります。

具体的な税務調整の方法等については、国税庁から公表されている「令和3年改正消費税経理通達関係Q&A」が参考になります。

  • ※4 経過措置とは、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの免税事業者等からの課税仕入れについては、支払対価の額に110分の7.8(または108分の6.24)を乗じて算出した金額に80%を乗じて算出した金額を、令和8年10月1日から令和11年9月30日までの免税事業者等からの課税仕入れについては、支払対価の額に110分の7.8(または108分の6.24)を乗じて算出した金額に50%を乗じて算出した金額を課税仕入れに係る消費税額とみなす内容です。
当コラムの意見にわたる部分は個人的な見解であり、EY新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことをお断り申し上げます。

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