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スケジューリング不能な一時差異と分類2における取扱い
~繰延税金資産の回収可能性があると判断できる場合~

2021.02.01
公認会計士 太田 達也

スケジューリングの可否について

繰延税金資産の回収可能性の判断において、期末の将来減算一時差異と税務上の繰越欠損金等について、翌期以降の税金の減額効果が生じるかどうかをみます。期末の将来減算一時差異について、翌期以降のいずれの期においていくら解消する見込みであるかをみることをスケジューリングといいますが、原則として、スケジューリングに基づいて回収可能額を判断します。

投資有価証券の減損損失の否認金(注)や土地等の非減価償却資産に係る減損損失の否認金(注)は、翌期以降に当該投資有価証券や当該固定資産の売却に係る意思決定または実施計画等がない限り、税務上の損金算入時期がわからないため、スケジューリング不能な一時差異になります。一方、賞与引当金や未払事業税については、翌期に解消することが見込まれますので、スケジューリング可能な一時差異であると判断されます。

(注)否認金とは、会計上費用または損失に計上したものの、税務上は損金算入要件を満たさないと判断し、自己否認(法人税申告書の別表4で加算)したものをいいます。税効果会計における将来減算一時差異に該当します。

減価償却資産の減損損失に係る否認金の場合

土地等の非減価償却資産の減損損失に係る否認金の場合、当該資産の売却に係る意思決定または実施計画等がない限り、税務上の損金算入時期がわからないため、スケジューリング不能な一時差異になると考えられます。

一方、減価償却資産の減損損失に係る否認金の場合、減価償却超過額の認容額についてスケジューリングができますので、原則として、スケジューリング可能な一時差異に該当すると考えられます。それは、減価償却資産の減損損失は、税務上償却費として損金経理した金額に含まれますので(法基通7-5-1(5))、減損損失を計上した事業年度において償却超過額が発生し、その翌期以降は償却不足額について認容がされるからです。ただし、その減価償却資産が事業の用に供されていない場合は、税務上の認容はありませんので、当該資産の売却に係る意思決定または実施計画等がない限り、スケジューリング不能な一時差異になると考えられます。

分類2における例外的な定め

「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(以下、「適用指針」)における分類2に該当する企業においては、原則として、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産について、回収可能性がないものとされます。ただし、スケジューリング不能な将来減算一時差異のうち、税務上の損金算入時期が個別に特定できないが将来のいずれかの時点で損金に算入される可能性が高いと見込まれるものについて、当該将来のいずれかの時点で回収できることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合、当該スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があるものとされます(適用指針21項)。 適用指針75項では、政策保有株式を例として、スケジューリング不能な将来減算一時差異であっても、分類2の企業において、例外的に繰延税金資産の回収可能性があると判断される場合がある点に示されています。政策保有株式は一例であって、このケース以外にも例外的に繰延税金資産の回収可能性があると判断される場合はあると考えられます。

例えば遊休土地を減損した場合において、当期末において当該土地の売却時期の意思決定は行っていないが、再使用の見込みがなく、企業として当該遊休土地を処分する方針である場合、当該土地の減損に係る将来減算一時差異は、期末時点では売却時期の意思決定または実施計画等が存在していないことから、スケジューリング不能な将来減算一時差異に該当することとなると考えられます。分類2に該当する企業においては、スケジューリング不能な将来減算一時差異のうち、税務上の損金算入時期が個別に特定できないが将来のいずれかの時点で損金算入される可能性が高いと見込まれるものについて、当該将来の税務上の損金算入時点における課税所得(すなわち、当該土地の減損に係る将来減算一時差異以外の将来減算(加算)一時差異の解消額を減算(加算)した後の課税所得)が当該スケジューリング不能な将来減算一時差異の額を上回る見込みが高いことにより、繰延税金資産が回収可能であることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合、当該スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があるものと判断されます(適用指針75項)。

具体例

以下、具体例により説明します。分類2の企業であったとします。翌期以降(XX1期以降)の一時差異等加減算前課税所得、期末の将来加算一時差異および将来減算一時差異の翌期以降の各期の解消見込額を見積もったところ、以下の数字であったとします。なお、XX6期以降の記載は省いています。

具体例

上記の例において、遊休土地の減損損失否認金は、X1期以降のいずれの期に解消するかは個別に特定できませんが、再使用の見込みがなく企業として当該遊休土地を処分する方針である場合、翌期以降のいずれかの時点で損金算入される可能性が高いと見込まれます。X1期以降のいずれの期に解消したとしても、課税所得(当該スケジューリング不能な将来減算一時差異以外の将来減算(加算)一時差異の解消額を減算(加算)した後の課税所得)が当該スケジューリング不能な将来減算一時差異の額を上回る見込みが高いと判断できるように思われます。

当コラムの意見にわたる部分は個人的な見解であり、EY新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことをお断り申し上げます。