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「収益認識に関する会計基準」適用下における貸借対照表の表示

2020.11.02
公認会計士 太田 達也

契約資産、契約負債、顧客との契約から生じた債権の計上

企業が履行している場合や企業が履行する前に顧客から対価を受け取る場合など、契約のいずれかの当事者が履行している場合には、企業は、企業の履行と顧客の支払との関係に基づき、契約資産、契約負債または顧客との契約から生じた債権を計上することになります(収益認識会計基準79項前段)。

要するに、契約の当事者(企業および顧客)のいずれかが、他の当事者よりも先に義務を履行する場合、契約の当事者である企業は、資産または負債を認識する必要があるという意味です。

図

上図の場合は企業において契約資産または債権が計上され、下図の場合は企業において契約負債が計上されます。

契約資産と債権との違い

「契約資産」とは、企業が顧客に移転した財またはサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利(ただし、顧客との契約から生じた債権を除く)をいうものと定義されています(収益認識会計基準10項)。

契約資産と債権の違いは、対価に対する権利が、契約資産の場合は支払期日の到来以外の条件が求められる権利であるのに対して、債権の場合は対価を受け取る期限が到来する前に必要となるのが時の経過のみであるという点です。

「顧客との契約から生じた債権」とは、企業が顧客に移転した財またはサービスと交換に受け取る対価に対する権利のうち無条件のもの(すなわち、対価に対する法的な請求権)をいうものと定義されていますが(収益認識会計基準12項)、売掛金のように支払期日の到来のみが満たされればよいものは債権です。一方、工事進行基準の適用において進捗度に応じて収益を計上するときの相手勘定である完成工事未収入金は、工事が未完成である以上、支払期日の到来以外の条件が求められる権利に該当するため、契約資産となります。

また、企業が顧客に製品Xおよび製品Yを合わせて販売する契約を締結し、製品Xの引渡しに対する支払が製品Yの引渡しを条件とすると定められている場合、すなわち企業が製品Xと製品Yの両方を顧客に移転した後に初めて対価が支払われる契約条件である場合は、製品Xを販売した時点で計上する収益の相手勘定は契約資産となります。その後製品Yを販売した時に、契約資産から売掛金等の債権に振り替えることになります。

表示する科目

契約資産、契約負債または顧客との契約から生じた債権については、財務諸表等規則に従い、従来から用いている科目、もしくは当該資産または負債を示す名称を付した科目をもって表示するなど、貸借対照表が明瞭に表示されていることに留意した上で適切な科目をもって表示します。契約資産、完成工事未収入金、契約負債、前受金、売掛金、営業債権など、適切な科目をもって表示することが考えられます。

また、収益認識会計基準に定めのない契約資産の会計処理については金融商品会計基準における債権の取扱いに準じて処理するとされていますので、例えば契約資産に係る貸倒引当金の会計処理については、金融商品会計基準の取扱いを適用することになります。また、外貨建ての契約資産に係る外貨換算については、「外貨建取引等会計処理基準」の外貨建金銭債権債務の換算の取扱いに準じて処理することになります(収益認識会計基準77項)。

契約資産と顧客との契約から生じた債権の区分表示

令和2年3月31日付の改正前の収益認識会計基準では、経過措置として、契約資産と顧客との契約から生じた債権を区分表示しないことができるとされていましたが、改正後の収益認識会計基準ではこの経過措置を定める規定が削除されました。したがって、改正後の収益認識会計基準を適用する場合は、この経過措置の適用は受けられない点に留意する必要があります。

契約資産と顧客との契約から生じた債権を区分表示するのが原則となりますが、契約資産と顧客との契約から生じた債権のそれぞれについて、貸借対照表に他の資産と区分して表示しない場合には、それぞれの残高を注記することになります。残高の内訳が分かるように実務対応する必要が生じます。また、契約負債を貸借対照表において他の負債と区分して表示しない場合には、契約負債の残高を注記することになります(収益認識会計基準79項後段)。

区分表示をしない場合には、それぞれの残高の注記が必要になる点に留意する必要があります。

当コラムの意見にわたる部分は個人的な見解であり、EY新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことをお断り申し上げます。

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