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M&Aによる一部事業の身売りと適格分割の該当性

2019.12.02
公認会計士 太田 達也

M&Aと会社分割の活用

M&Aにより特定の事業を手放す場合、残したい事業と手放したい事業を切り分ける方法として会社分割が用いられる場合が少なくありません。このようなケースにおける会社分割が法人税法上の適格分割として実行可能であるかどうかが問題になります。この点については、最近の税制改正が影響する点に留意が必要です。

平成29年度税制改正による影響

分割型分割が適格分割となるための要件の一つとして、平成29年度税制改正前は分割後の支配の継続要件として、分割後に分割法人と分割承継法人の双方について一の者による支配関係が継続することが見込まれることが要件とされていました。ここでいう「一の者」とは、分割前に分割法人および分割承継法人を支配している者をいいます。要するに、株主を意味しますが、株主が法人である場合は1社、個人である場合は1人ではなく親族等の特殊の関係のある個人を含みます(特殊の関係のある個人について、詳しくは法人税法施行令4条1項をご参照ください)。

しかし、平成29年度税制改正により、分割後における一の者と分割承継法人との間の支配関係の継続が見込まれることが要件と改められました。すなわち、この改正により、一の者と分割法人との間の支配関係の継続が見込まれていることは要件から除外されたわけです。平成29年10月1日以後の分割について適用されています。

M&Aへの影響

上記の改正は、継続を図る事業を分割により移転し、不採算事業のみを分割法人に残した上で、その分割法人を解散・清算するという方法による不採算事業の整理を適格分割により実行することを可能にしました。また、それ以外にも、次の例に示すように、M&Aの実務にも重要な影響を与えることになったと考えられます。すなわち、一部の事業のみをM&Aにより第三者に手放すスキームについて、適格分割により実行することが可能になったといえます。

具体例

以下、具体例に基づいて説明します。

前提条件

A社(株主はX社のみ)は、「機械部品の加工業」と「機械部品の販売業」の両方を営んでいます。機械部品の加工業はIT化を進め、加工技術の向上を図り、付加価値のある製品を製造できるようになり、売上が上昇してきました。一方、機械部品の販売業は取引先Y社との長年の付き合いから行ってきていますが、海外から仕入れたものをそのまま卸しているものであり、マージンが薄く、為替相場の変動の影響を受けやすい状況であり、できればA社は撤退したいと考えていました。

今回、機械部品の販売先Y社から、事業の拡張に伴い、機械部品を安定的にまとまった数量で自ら調達を行いたいという意向があることを提示され、A社の仕入ルートをそのまま引き継ぎたいというねらいもあり、機械部品の販売部門の移転および受入れを行うことで合意しました。

手順1

A社は、新設分割型分割により、機械部品の加工業を移転し、新設会社とします。ただし、同時に社名変更し、もともとのA社をB社とし、機械部品の加工業を行う新設会社をA社としました。そのようにすることにより、同じ社名で機械部品の加工業を引き続き行うことが可能です。

分割前
分割後

手順2

X社が有するB社株式をY社に売却します。なお、X社とY社との間には、資本関係はありません。

本分割

本分割は、①分割前に一の者(X社)とA社との間に完全支配関係があり、かつ、分割後において当該一の者と分割承継法人であるA社(機械部品の加工業を行う会社)との間に当該一の者による完全支配関係の継続が見込まれており、②分割の対価として分割承継法人株式のみが交付されているため、適格分割に該当すると考えられます。したがって、課税関係は生じないと考えられます。

本分割が適格分割となるのは、平成29年度税制改正により、分割後における一の者と分割法人との間の支配関係の継続が見込まれることが適格分割となるための要件から削除されたからです。その点については、一の者と分割承継法人との間の支配関係の継続が見込まれることが要件とされたわけです。

なお、Y社がB社を別会社のままにしておきたくないと判断した場合には、Y社がB社を吸収合併することも可能であると考えられます。

当コラムの意見にわたる部分は個人的な見解であり、EY新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことをお断り申し上げます。

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