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子会社株式の有税評価損に係る税効果会計

2019.10.01
公認会計士 太田 達也

繰延税金資産の回収可能性の判断における(分類1)に係る改正

2018年2月16日付で、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(以下、「適用指針」)が改正され、「(分類1)に該当する企業においては、原則として、繰延税金資産の全額について回収可能性があるものとする。」(適用指針18項)とされ、「原則として、」の文言が追加されました。

分類1であっても、繰延税金資産の回収可能性がないと判断されるケースがあり得ることを踏まえた改正であると考えられます。

完全支配関係がある子会社の清算の場合

グループ法人税制が導入された平成22年度税制改正により、完全支配関係がある子会社を清算した場合、税務上、その子会社株式の消滅に係る損失を認識できないとされました(法法61条の2第17項)。その子会社株式の税務上の帳簿価額について、資本金等の額の減算として取り扱います(法令8条1項22号)。解散・清算に先立って、子会社株式について有税の評価損を計上している場合においても、その評価損は認容されないことを意味します。

(補足注)有税処理とは、会計上費用処理していても、税務上損金不算入のため、法人税申告書において、加算調整することをいいます。

この点を踏まえて、適用指針において次のように改正理由を説明しています。「完全支配関係にある国内の子会社株式の評価損について、企業が当該子会社を清算するまで当該子会社株式を保有し続ける方針がある場合等、将来において税務上の損金に算入される可能性が低い場合に当該子会社株式の評価損に係る繰延税金資産の回収可能性はないと判断することが適切であると考えられるため、(分類1)に該当する企業において、将来の状況により税務上の損金に算入されない項目に係る一時差異について、例外的に回収可能性がないと判断する場合があることを明らかにするため、繰延税金資産の全額を回収可能性があるものとする取扱いに、「原則として、」との文言を追加した。」と説明されています(適用指針67-4項)。

本コラムの2018年6月1日アップ分において、具体的な設例を交えてその内容を解説していますので、ご参照いただければ幸いです。なお、この設例においては、完全支配関係がある子会社から引き継がれた場合の当該繰越欠損金に係る繰延税金資産の計上については省略しています。実務上は、その点も考慮しなければなりません。

子会社の適格合併の場合

このように、(分類1)であっても、繰延税金資産の回収可能性がないと判断されるケースは、ほかにも考えられます。

例えば、子会社株式について有税の評価損を計上していたとします。この有税の評価損は、将来減算一時差異に該当すると考えられます。その子会社を親会社が合併することになったとします。企業グループ内の支配関係がある会社間の合併であり、所定の要件を満たした場合には、税務上の適格合併に該当することが考えられます。このケースの場合、完全支配関係がなくても、支配関係(資本関係が50%超)がある会社間の合併であれば、所定の要件を満たす場合に、適格合併に該当すると考えられます。

合併法人が有する被合併法人の株式を「抱合せ株式」といいますが、税務上、適格合併の場合は抱合せ株式の消滅に係る損失を認識しないで、抱合せ株式の帳簿価額相当額について、資本金等の額の減算を行うものとされています(法令8条1項5号)。

このように、子会社株式について有税の評価損を計上している場合において、その子会社を親会社が合併することを決定した場合、すでに繰延税金資産を計上していた場合であっても、将来において税務上の損金に算入される可能性が低いと判断されるため、繰延税金資産を取り崩さなければならないと考えられます。(分類1)の企業も、その例外ではないと考えられます。

一方、適格合併の場合、被合併法人の繰越欠損金を合併法人が原則として引き継ぎます(法法57条2項)。子会社から引き継がれた繰越欠損金については、繰延税金資産の回収可能性を検討した上で、計上の可否を検討する必要があると考えられます。(分類1)の企業は、繰延税金資産を基本的に計上することになると考えられます。

以上のように、繰延税金資産の回収可能性の判断については、将来減算一時差異に係る将来の損金算入の可能性を考慮して、適切に行う必要があります。

当コラムの意見にわたる部分は個人的な見解であり、EY新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことをお断り申し上げます。

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