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太田達也の視点

圧縮記帳の会計処理
~直接減額方式と積立金方式について~

2017.08.01
公認会計士 太田 達也

圧縮記帳制度の趣旨

国庫補助金の交付を受けたときの受贈益、保険金の交付を受けたときの保険差益、固定資産の交換によって生じる交換差益、収用等によって生じた譲渡益などは、税務上は益金ですので、原則として課税所得を構成します。しかし、このような益金を原則通り課税しますと、さまざまな弊害が生じ得ます。例えば、国庫補助金を受けたときに、その受贈益に対して直ちに課税すれば、補助効果が減殺されてしまい、予定していた資産の取得が困難となることも考えられます。保険差益も、法人の意思に反して実現したものであり、これに直ちに課税すると災害の復旧を妨げる要因となります。収用等が行われて生じた譲渡益についても、強制力が働いて生じた実現益であり、これに課税すると公共事業の促進を阻害するという問題が生じ得ます。

圧縮記帳という制度は、政策的理由から、国庫補助金に係る受贈益、保険差益、交換差益、収用等により実現した譲渡益等について、一定の要件を満たしていることを条件として、その利益を原資として取得した資産の取得価額を減額することにより、課税の繰延べを行うことを目的としているものです。

取得価額が減額されることによって、減価償却の計算の基礎となる金額、または譲渡原価・除却損失がそれだけ少額となり、課税所得が多くなります。要するに、圧縮記帳は課税の繰延べであって、将来において税金の取戻しが行われる制度であり、免税制度では決してないわけです。

固定資産の交換によって生じる交換差益に係る圧縮記帳の会計処理

圧縮記帳の会計処理としては、直接減額方式(損金経理により帳簿価額を直接減額する方法)と、積立金方式(剰余金の処分により圧縮積立金を積み立てる方法)の2つがあります。会計上は、取得原価主義ですので、積立金方式による会計処理が本来は望ましいと考えられますが、企業会計原則注解(注24)では国庫補助金、工事負担金等について、監査第一委員会報告第43号「圧縮記帳に関する監査上の取扱い」では交換、収用等について、それぞれ直接減額方式によることができる旨が示されています。

監査第一委員会報告第43号では、固定資産の圧縮記帳に関する税法の規定を適用して行う会計処理について、次の場合は、当面、監査上妥当なものとして取り扱うとされています。

  1. 交換により譲渡資産と同一種類、同一用途の固定資産を取得し、取得資産の取得価額として、譲渡資産の帳簿価額を付した場合
  2. 収用等により資産を譲渡し新たに取得した資産が、譲渡資産と同一種類、同一用途である等取得資産の価額として譲渡資産の帳簿価額を付すことが適当と認められるときに、譲渡益相当額をその取得価額から控除した場合

また、国庫補助金、工事負担金等により取得した固定資産について、国庫補助金、工事負担金等に相当する金額をその取得価額から控除した場合も、企業会計原則注解(注24)の趣旨に照らして、監査上、妥当なものとして取り扱うとされています。

交換差益の圧縮記帳については、税務上、直接減額方式しか認められないとされています。積立金方式では損金算入要件を満たさない点に留意する必要があります。会計上、監査第一委員会報告第43号の取扱いを適用し、交換取得資産の取得価額を、最初から交換譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額と取得のために要した費用の合計額とすることにより、圧縮損と交換差益の両建計上をしない処理を行うことが考えられます。この点、法人税基本通達では、交換取得資産につき、その帳簿価額を損金経理により減額しないで、譲渡直前の帳簿価額とその交換取得資産の取得のために要した費用との合計額に相当する金額を下らない金額をその取得価額としたときは、これを認める旨が示されていますので(法基通10-6-10)、税務上も問題ありません。

図

積立金方式を採用した場合の会計処理

積立金方式による場合は、圧縮積立金の積立てを当期の決算手続に含めて行います。すなわち、圧縮積立金の積立てを当期末の貸借対照表に反映し、かつ、当期の株主資本等変動計算書に圧縮積立金の積立額を表示すること(注記により表示する場合を含む)により、当期の税務計算に反映できる(法人税申告書の別表4で減算できる)取扱いとなります。

なお、剰余金の処分は株主総会の決議事項ですが、法令の規定に基づく剰余金の項目の増加または減少については、株主総会の決議は不要であると規定されているため(会社計算規則153条2項)、圧縮積立金などの税法上の積立金の積立てについては、税法の規定に基づいて積立て・取崩を行うことについて、株主総会の決議を省略することができます。実務上、当期の決算手続に含めて処理することになります。

設例 特定資産の買換えに係る圧縮記帳の会計処理

前提条件

所有する土地(帳簿価額1,500万円)を4,000万円で譲渡しました。税法上、特定資産の買換えに係る圧縮記帳の対象となる(代替)土地を6,000万円で取得しました。当期の決算手続により圧縮積立金を積み立てる経理をしたとします。また、圧縮限度額は2,500万円とします。なお、税効果会計を適用しますが、法定実効税率は30%とします。この場合の仕訳と申告調整はどのようになりますか。

解答

1. 圧縮記帳した事業年度の仕訳と申告調整

(1) 土地の譲渡

(1) 土地の譲渡

(2) 代替土地の取得

(2) 代替土地の取得

(3) 圧縮記帳

(3) 圧縮記帳

圧縮記帳により、税効果会計における将来加算一時差異が2,500万円発生し、それに対して法定実効税率を乗じた額である750万円について繰延税金負債を計上します。圧縮積立金の計上額は2,500万円から750万円を控除した1,750万円になります。

別表四  所得の金額の計算に関する明細書

区分 総額 処分
留保 社外流出
加算 法人税等調整額 750 750    
減算 圧縮積立金認定損 2,500 2,500    

別表五(一) 利益積立金額および資本金等の額の計算に関する明細書

Ⅰ. 利益積立金額の計算に関する明細書
区分 期首現在
利益積立金額
当期の増減 差引翌期首現在
利益積立金額
①-②+③
圧縮積立金     1,750 1,750
繰延税金負債     750 750
圧縮積立金
認定損
    △2,500 △2,500

なお、圧縮積立金の積立ては、税務上はあくまでも2,500万円として取り扱われますが、税効果会計を適用した場合の申告要件として、確定申告書に税務上の圧縮積立金を明らかにするために、明細書を添付する必要がある点に留意する必要があります。これについては、日本公認会計士協会・会計制度委員会報告第10号「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」に、別紙「積立金方式による諸準備金等の種類別の明細表」が参考例として掲載されています。

2. 圧縮した土地を譲渡した事業年度の仕訳と申告調整

(1) 土地の譲渡

上記の土地を翌事業年度以降に7,200万円で譲渡したものとします。会計上の帳簿価額は6,000万円ですが、税務上は帳簿価額3,500万円(取得価額6,000万円-圧縮額2,500万円)の土地を7,200万円で譲渡したものとして取り扱います。

(1) 土地の譲渡

(2) 圧縮積立金および繰延税金負債の取崩

(2) 圧縮積立金および繰延税金負債の取崩

譲渡した事業年度の別表5(1)に2,500万円の加算が入ります。会計上の譲渡益は1,200万円ですが、税務上の譲渡益は3,700万円(1,200万円+2,500万円)という意味になります。
併せて将来加算一時差異が解消しますので、圧縮積立金および繰延税金負債の取崩が生じます。次のような申告調整が必要になります。

別表四  所得の金額の計算に関する明細書

区分 総額 処分
留保 社外流出
加算 圧縮積立金認容額 2,500 2,500    
減算 法人税等調整額 750 750    

別表五(一) 利益積立金額および資本金等の額の計算に関する明細書

Ⅰ. 利益積立金額の計算に関する明細書
区分 期首現在
利益積立金額
当期の増減 差引翌期首現在
利益積立金額
①-②+③
圧縮積立金 1,750 1,750   0
繰延税金負債 750 750   0
圧縮積立金認定損 △2,500 △2,500   0

要するに、圧縮記帳の適用により繰り延べられていた譲渡益2,500万円は、圧縮記帳の対象土地の譲渡により実現することになります。

当コラムの意見にわたる部分は個人的な見解であり、新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことをお断り申し上げます。

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