業種別会計
卸売業

第1回:卸売業の事業内容及び会計処理の特徴

2010.11.05
新日本有限責任監査法人 卸売業研究会
公認会計士 牧野幸享/森住曜二

1.はじめに

卸売業とは、他の者から購入した商品をその性質や形状を変えないで他の事業者に対して販売する事業(消費税法施行令第57条第6項)をいいますが、卸売業を取り巻く経済環境が大きく変化する中で、卸売業各社のビジネスモデルも多様化しています。本稿では、卸売業の分類・機能やビジネスの特徴を説明するとともに、業種の特性を反映した取引の発生から会計処理及び内部統制について、以下の3回に分けて解説します。

なお、文中の意見にわたる部分については、執筆担当者の私見であることをお断りしておきます。

2.卸売業の分類と機能

(1)卸売業の分類

卸売業は、「卸(おろし)」ともいわれ、メーカーや輸入業者(以下、メーカー等)と小売業者や他の卸売業者等(以下、小売業者等)との膨大な商取引を効率的に進めるために、両者の中間に位置し、商品の物流機能や需給バランスを図る重要な役割を果たしてきました。従来から様々な分野のメーカー等及び小売業者等を取引相手としているため、卸売業の分類方法も色々と考えられますが、取扱商品や会社規模等により、以下のように分類することができます。

分類 概要
一般卸 特定業種の商品を専門的に取扱い 医薬品、アパレル
専門卸 特定品目に特化した経営 お茶、コーヒー
系列販社 メーカー系列の販売会社 自動車、家電製品
購買代行 メーカーの生産部材の購買代行 生産部材
商社 幅広く取り扱う 鉄鋼製品、総合食品
卸売市場 仲買人経由の商品売買 生鮮食料品

なお、日本標準産業分類によると、卸売業は「50 各種商品卸売業」、「51 繊維・衣服等卸売業」、「52 飲食料品卸売業」、「53 建築材料、鉱物・金属材料等卸売業」、「54 機械器具卸売業」及び「55 その他の卸売業」の6つの中分類により定義されています。

(2)卸売業の機能

卸売業が有する機能として一般的に考えられるのは以下のとおりです。近年、メーカーや小売業者の大規模化等による卸売業者の中抜き及び電子商取引の普及によって、小売業者やメーカーが単なるコスト削減だけではなく、より高度なSCM(Supply Chain Management)の実現及び販売促進の強化を始めており、卸売業者は従来型の「商流機能」を中心としたビジネスモデルから「サービス事業者」として機能する適切なビジネスモデルの構築が必要になっています。

種類 説明
事務代行機能 メーカー、輸入業者及び小売業者等の事務を代行し、手数料を収受する機能を有しています。
商流機能 国内外メーカーから生産品を仕入れ、小売業者等に販売するほか、在庫リスクを抱えながら、商品の需要と供給を調整する役割を果たしています。
卸売業界を取り巻く経済環境の変化に伴い、商社を中心に、新規投資やプロジェクトを組成することにより主体的に商流を創造するビジネスモデルを構築しています。
物流機能 全世界に物流会社のネットワークを構築し、取引先のニーズに対応する形で国内外での商品の輸送、保管、ピッキング(集荷)、通関及び在庫管理業務等の物流サービスを提供しています。
金融機能 取引先に対して融資、保証、延べ払い取引及び手形取引等により信用を供与する機能を有しています。
情報提供機能 小売業者等に対しては仕入や販売に役立つ情報、メーカーや輸入業者に対しては市場開拓や商品開発に役立つ情報をそれぞれ提供するなど、商品を円滑に流通させる情報提供者としての役割を有しています。
市場開拓機能 商社の船舶ビジネス等、自らの機能と社内ネットワークにより需要情報を入手し、国内外の販売先と仕入先を結び付ける役割を有しています。
事業経営機能 事業投資をした上で、自らが有する商流機能、物流機能、金融機能、情報提供機能及び市場開拓機能を駆使するとともに、経営者としてのスキルを有する人材を派遣することで当該投資先の業績を拡大させる役割を有しています。成功すれば、結果的に自らの連結グループ収益を拡大することにつながります。