業種別会計
VC&ファンド業

第1回:VC及びVCファンドの事業の概要

2016.09.21
新日本有限責任監査法人 VC&ファンドセクター
公認会計士 飯室圭介/松下洋

1.はじめに

わが国の産業のイノベーションを促進し、経済全体の成長と活性化を図るためには、ベンチャー企業(Venture Business:以下、VBと略す)の創出・成長が不可欠です。

これまでVBを取り巻く制度的・社会的枠組みが急速に整備されてきましたが、その中でベンチャーキャピタル(Venture Capital:以下、VCと略す)及びVCファンドは重要な役割を担っています。

本シリーズでは、VC及びVCファンドの事業の概要、業種における特徴的な会計処理、内部統制、開示について3回に分けて解説することとします。

なお、文中意見にわたる部分は筆者の私見であることをお断りしておきます。

2.VC・VCファンドとは

(1) プライベートエクイティ投資

プライベートエクイティ投資(PE投資)とは、広義では、未上場企業の株式の取得・引受を行う投資行為をいいます。その存在意義の一つとして、銀行による資金の提供が与信審査に基づく融資であるのに対し、リスクマネーの提供があげられるといえます。

PE投資は、投資対象の企業のライフサイクルに応じて以下の様に大別されます。

① VC投資・・・企業の初期段階や、成長期に必要なマネーを提供する手法で、最終的には株式の新規公開によって投資資金の回収を行うのが一般的です。すなわち、公開によって流動性が生じた株式を、その後の適切なタイミングを見計らって市場で売却することで投資資金を回収します。また、その他に株式新規公開(IPO)以外にも、M&Aなど戦略的売却により投資資金を回収する場合もあります。VC投資においては、投資手法としては、リスク分散のために少額で出資割合も一定程度に抑えることが一般的です。

② バイアウト投資・・・企業ライフサイクルの中盤以降に位置する企業を投資対象として既存企業を買収し、部門や資産を売却することによって買収先企業の価値を高めるような投資や、事業再編等により企業が手放す事業部門のみを買収し価値を高めるような投資をいいます。この場合、成熟期にある事業を対象とすることが多いため、IPOによる投資回収は相対的に少なく、戦略的売却が中心となります。その企業の経営に深く関与して企業価値を高めた後に、売却することで高い利回りを獲得することを目的としますので、経営権を獲得するべく出資割合を高くすることが一般的です。

③ 企業再生投資・・・業績が悪化した企業に対して再生可能な事業を切り出して、会社再建の専門経営者を派遣し事業を立て直して投資収益を上げる手法であり、事業の経営権を取得し、経営者を派遣して企業価値を創造しようという意味では、バイアウト投資の一類型であり、同様に債権、株式への投資を通じ再生、再上場、転売等の手法により投資額を回収することを目的することが一般的です。

以上のように、投資対象の企業のライフサイクルにより、投資手法、投資回収手法等も異なっており、このような点も踏まえて投資期間中の評価を検討する必要があります。

(2) VC

VCとは、本来、①成長性がある株式非公開の中小企業であるVBに、②株式、転換社債、ワラント債など、エクイティあるいはそれに準ずる形態で供給される資金そのものを意味しますが、わが国においては、一般的にVC投資を行う企業、すなわちベンチャーキャピタルカンパニー(Venture Capital Company)がVCと呼ばれています。

わが国においては、金融機関である親会社をバックにした資金調達力・信用力を有する金融機関系VCを中心に発展してきましたが、近年、大手VCから独立したキャピタリストや過去VBをEXITさせた経歴を持つアントレプレナー等が設立した独立系VC、事業会社がオープン・イノベーションを促進するためにVBへの投資を行うCVC(Corporate Venture Capital)、学内の技術や研究成果の事業化を目指す大学発VBへの支援・投資を目的とする大学VCが存在感を増しています。

(3) VCファンド

VCファンドとは、典型的には、高成長が見込まれるVBの未公開株式を取得し、創業期に営業支援、経営管理に関する助言などのハンズオン支援を通じて企業価値を高め、IPO時に保有株式を売却し売却益を得ることを目的としたファンドです。金融システムにおいては、ハイリスクでありながら、将来大きく成長し、ハイリターンを産む可能性のあるVBに対してエクイティ資金を供給する役割を担っています。

ファンドのスキームは、主に税制上のメリット(二重課税の回避)、投資家の保護(責任の限定)、コスト等を考慮して選択されますが、VCファンドに関しては、1998年に「中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律」(現「投資事業有限責任組合契約に関する法律」)が施行されてからは、投資家の責任が出資額の範囲に限定された同法に基づく投資事業有限責任組合(以下、有責法組合と略す)が多く用いられています。

VCファンドの構成員は、ゼネラル・パートナー(以下、GPと略す)とリミテッド・パートナー(以下、LPと略す)から成ります。

GPとLPの権限、責任は根拠法、両者の契約内容により決まりますが、VCファンドにおいては、一般的に、VCがGPとして、ファンドの組成から、投資実行、回収・分配、清算までファンドの管理運営に関わる業務を執り行い、その対価として管理報酬・成功報酬をファンドから受領します。

一方、LPは、VBへの投資の成果としてキャピタルゲインを得ることを目的としてGPに資金の運用を委託する投資家ですが、GPとともに投資先VBの育成・支援に関与するケースもあります。

わが国のVCファンドにおいては、銀行や一部事業会社等の国内投資家の資金が中心となっており、個人の出資も一部見受けられますが、海外投資家や年金基金からの出資は米国におけるVCファンドと比べ少額といわれています。

【図表1:スキーム図】
図表1:スキーム図

3.VC事業の特徴

(1) VBへの投資

一般的に、VC及びVCファンドは、事業基盤が確立しておらず、経営環境の変化の影響を受けやすいなどの理由により、相対的に事業リスクが高いVBが発行する株式を投資対象としており、複数のVBにリスク分散を図りながら投資し、そのうちの数社がIPOすることによってリターンを得ています。

ここで、投資対象の株式は、VBの成長性、上場可能性を見込み、超過収益力を加味した純資産価格以上の株価で取得することが多いため、IPOが見込めなくなった投資先すなわちリビングデッドはもちろん、その他の投資先についても保有期間中は評価にあたり超過収益力について検討しなければなりません。

未公開株式の評価については、第3回において詳しく説明いたします。

(2) エクイティ投資

起業段階や成長段階にあるVBの多くは、担保として十分な資産を有していないこと、元利金支払いの原資となる売上が立ち上がってきていないこと等から、間接金融による資金調達には限界があります。このため、直接金融によるリスクマネーの調達を必要としており、VCは株式、転換社債、ワラント債など、エクイティあるいはそれに準ずる形態でリスクマネーを供給します。

同時に、VCは、投資実行後、株主として株主総会において議決権を行使するだけでなく、投資先をモニタリングするため投資先に対し役員を派遣し、また、バリューアップを目的としてハンズオンを行うなど、投資先の経営に何らか関与することとなります。

このように、投資先の議決権を保有し、経営に関与している状況においては、連結又は持分法の適用が問題となりますが、従来、VCがキャピタルゲイン獲得を目的とする営業取引として投資している場合、「他の会社等の意思決定機関を支配していないことが明らかであると認められる場合」として連結又は持分法の適用対象外とされてきました(いわゆるVC条項)。

しかし、ファンド、買収受皿会社を利用したM&Aなどのスキームが多様化するなかで、従来のVC条項が拡大解釈、あるいは不適切に適用される事例が問題となりました。

このため、2008年3月、旧指針を改定した企業会計基準適用指針第22号「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」においてVC条項が明確化・厳格化(16項(4))されました。

(3) ファンド投資

VBへの投資は、前述のとおり二重課税回避、投資家の責任限定等を図るためファンド・スキームにより行われ、投資家はLPとしてファンドへ出資します。

一方、VCはGPとして業務執行を執り行うと同時に、LPと未公開株式投資に係るリスクをシェアすること、自己投資により生じるLPとのコンフリクトを回避すること等を目的として、自らファンドに出資します。

この結果、GPもLPもファンド出資者として、自己の決算において、出資持分を取り込むことになります(金融商品会計に関する実務指針132項)。

また、出資者は、出資先のVCファンドに関して、有責法組合、任意組合等、法形式はどうであれ、「会社に準ずる事業体」として子会社又は関連会社の範囲に該当するか否か判定しなければなりません(企業会計基準適用指針第22号「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」28項)。

うち、VCファンドを含む投資事業組合については、ファンドを利用した不適切な会計処理が行われた事件を契機として、2006年9月、企業会計基準委員会から実務対応報告第20号「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」が公表され、「業務執行の権限」により支配力又は影響力を判断する等、連結上の取扱いが明確になりました。

ファンド出資者の出資持分に係る会計処理及び投資事業組合の連結については、第2回において詳しく説明いたします。

【図表2:会計主体と論点】
図表2:会計主体と論点

GP・LP→VB FUND→VB GP・LP→FUND
有価証券関連勘定の表示(営業投資有価証券、営業投資有価証券売上高等) 有責組合・任意組合間での時価概念、会計処理の相違 出資持分の取込
未公開株式の評価
投資損失引当金
未公開株式の評価
投資損失引当金
自己の決算日とファンド決算日の差異に係る調整(有価証券の評価替等)
VC条項に基づく投資先の連結 有責組合と任意組合及び任意組合間の決算書不統一 実務対応報告20号に基づくファンド連結

(4) 金融商品取引法

ファンドを用いた投資スキームにおいては、悪質な業者により一般投資家が被害を被る事例が少なくなく、金融商品取引法では、「集団投資スキーム」上の持分(金融商品取引法2条2項5号)を包括的に「みなし有価証券」として業規制及び開示規制を課しています。

ファンドの中でも、いわゆるプロ向けファンドに関しては、特定機関投資家等特例業務として例外的に業者登録を不要とし、届出制を採用してきましたが、平成27年金融商品取引法改正により、①欠格事由の導入、②届出書の記載事項の拡充・公表、③適格機関投資家の範囲・要件の設定、④一般投資家の範囲の限定、⑤ベンチャー・ファンドの特例、⑥行為規制の拡充など規制が強化されています。

参考文献等

  • 「日本のベンチャーキャピタル」 浜田康行 (日本経済新聞社)
  • 「ベンチャーファイナンスの多様化」 秦信行・上條正夫 (日本経済新聞社)
  • 「ベンチャー企業の創出・成長に関する研究会 最終報告書」 ベンチャー企業の創出・成長に関する研究会 経済産業省
  • 「経済成長に向けたファンドの役割と発展に関する研究会 報告書」 経済成長に向けたファンドの役割と発展に関する研究会 経済産業省

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