証券業 第3回:有価証券関連業の事業内容の特徴

2011年4月15日
カテゴリー 業種別会計

証券業研究会
木村嘉浩/本間正彦

3. 有価証券関連業の事業内容の特徴

有価証券関連業の発行市場1 および流通市場2 における具体的な事業内容は、以下のとおりです。

① 委託売買(ブローカー)業務

証券会社における中心的な業務であり、投資家から株式や債券等の有価証券売買の注文を流通市場に取り次ぐ業務です。有価証券は、金融商品取引所で売買されますが、参加することができるのは一定の資格を備えた証券会社に限られているため、投資家は銘柄・数量・時期等を指定して売買を証券会社に委託します。取引を成立させることによって、証券会社は投資家から委託手数料を受け取ります。また、証券会社は顧客に信用を供与して株式の売買取引を行う「信用取引業務」を行っています。

委託売買業務の流れ

委託売買業務の流れ

② 自己売買(ディーリィング)業務

一般投資家と同じように、証券会社が自らの資金を用いて、自らの利益のために有価証券を売買する業務です。証券会社自らのトレーディング収益確保のほか、流通市場における市場の流動性を確保するためにも行われますが、多額の自己資金を用いる売買は相場に影響を与えることもあるため、売買できる有価証券の種類等について一定の基準が設けられています。また、証券会社は「有価証券等貸借取引(レポ・現先取引等)」により、さまざまな方法で有価証券を調達し、また、貸し出しています。

③ 引受け・売出し(アンダーライティング)業務および募集・売出しの取扱い(セリング)業務

引受け業務とは、株式会社や国といった有価証券の発行者が株式や債券等を新たに発行する場合に、証券会社が投資家に売り出す目的で、その全部または一部を買い取る業務のことです。業務を行うことによって、証券会社は発行者から引受手数料相当を受け取りますが、売れ残った場合には証券会社が引き取ることになります。なお、売出し業務は、既に発行され、例えば発行者自らが保有している株式等を対象にして、同様の業務を行うことです。

また、募集・売出しの取扱い業務とは、新たに発行されるまたは既に発行された有価証券について、多くの投資家に向けて買い入れるように勧誘する業務です。引受価格と販売価格との差額または発行者からの手数料収入が証券会社の収益となります。なお、引受け業務と異なり、売れ残った有価証券を引き取る必要はありません。

引受け・売出し業務および募集・売出しの取扱い業務の流れ

こうした伝統的な証券業務のほか、M&Aや財務等に関するアドバイザリー業務および証券化業務等といったその他の業務も重要な業務と位置付けられています。こうした業務は、前述の引受け業務と併せて、「投資銀行業務」とも呼ばれ、その業務内容は、資金調達関連業務を中心に多岐に渡ります。なお、証券会社は、このほか、金商法第35条において多様な関連業務を行うことができるとされています。

  1. 発行市場:資金調達の目的で新規に発行される有価証券が、発行者から直接あるいは仲介者である証券会社等を介して投資家に取得される市場のことであり、プライマリーマーケットとも呼ばれます。
  2. 流通市場:既に発行された有価証券が投資家から投資家に移転される市場のことであり、セカンダリーマーケットとも呼ばれます。

(週刊 経営財務 平成22年11月1日 No.2989 掲載)