業種別会計
小売業

第3回:各種データから見える小売業を取り巻く環境の変化

2017.03.27
新日本有限責任監査法人 小売セクター
公認会計士 荒川みどり/津田昌典/長沼徳宏/吉田一則

小売業において、売上は通常「顧客数×単価」であり、景気の変動も単価変動による売上変動要因であるものの、売上を増減させる要素として、顧客となる一般消費者の数が、さらに重要な要素となります。日本国内の一般顧客は人口の増減に比例すると考えられるため、日本国内のマクロ環境、顧客志向の変化について統計結果等を確認することにより、現在及び今後の小売業における売上の動向を読み取っていきたいと思います。

1. 人口推計

(参考:総務省統計局ウェブサイト)

以下の人口推計からも理解できるように、日本在住の総人口は、ここ数年減少傾向にあり、小売業が需要対象としている総人口も減少していることが読み取れます(各年の人口は、当該年の10月1日現在の人口。ただし、平成28年のみ5月1日現在の人口)。

    人口増減
人口 純増減
    増減数 増減率
  千人 千人
平成22年 128,057    
平成23年 127,799 -259 -2.02
平成24年 127,515 -284 -2.22
平成25年 127,298 -217 -1.71
平成26年 127,083 -215 -1.69
平成27年 127,110 27 0.02
平成28年 126,940 -170 -0.13

また、次の年齢別の人口推計から、ここ数年、14歳以下の総人口に占める割合が減少しており、65歳以上の総人口に占める割合が増加してきています。

年齢階級 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年
人口(単位 千人)
総数 128,057 127,799 127,515 127,298 127,083
0~14歳 16,839 16,705 16,547 16,390 16,233
15~64歳 81,735 81,342 80,175 79,010 77,850
65歳以上 29,484 29,752 30,793 31,898 33,000
割合(%)
総数 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00
0~14歳 13.15 13.07 12.98 12.88 12.77
15~64歳 68.83 63.65 62.87 62.07 61.26
65歳以上 23.02 23.28 24.15 25.06 25.97

これら統計から、今後、総人口は緩やかに減少していくことが想定され、総人口減少に伴い、国内消費は景気変動が一定であることを前提とすると、今後、大きく増加することは見込めないと考えられます。

2. 小売市場規模の推移

(参考:経産省「平成26年商業動態統計年報」)

以下の業種別商業販売額のうち、小売業の販売額を昭和55年から平成27年まで見てみると、景気の影響により販売額に多少、上下変動の傾向は見られるものの、平成に入って以降、継続的な増加も見られず、販売額に関して頭打ちの状況が見て取れます。

小売市場規模の推移

3. IT化率

(参考:総務省「通信利用動向調査‐インターネットの利用動向/情報通信機器の普及状況/ソーシャルメディアの利用動向」)

総務省が発表している通信利用動向調査によると、インターネットの利用者(6歳以上のインターネット利用率)は平成22年で78.2%程度であったものの、平成27年には83.0%まで増加しており、13歳から59歳までのインターネット利用率は9割を上回っている状況にあります。60歳から79歳までのインターネット利用率に関しても、ここ数年、上昇傾向にあり、平成23年から平成27年の間で1割程度の利用率増加が見られます。

また、個人におけるICT(情報・通信に関する技術の総称)利用の現状で、インターネットの利用目的・用途として、電子メールの送受信(74.5%)が一番多いものの、商品・サービスの購入・取引(金融取引及びデジタルコンテンツ購入を除く)も、44.2%のインターネット利用者が利用していることが分かります。さらに、インターネットにより購入・取引した商品・サービスに関しても、日用雑貨や趣味関連品まで多様な商品・サービスを購入・取引していることが見て取れます。

4. 物流網の整備

近年、物流網の整備がインフラ面及びIT面で進み、物販の消費者向け電子商取引(BtoC-EC)が、より便利さを増してきています。

例えば、アマゾンジャパンでは利用者がサイト上の購入ボタンをクリックすると、瞬時に物流拠点に発注データが届き、商品が個々にバーコードで管理されているため、スタッフが商品をピックアップし、東京都内であれば最短で購入後1時間以内に、利用者に商品を届けることが可能となってきており、配送スピードが改善しています。また、楽天、アマゾンジャパン等のEC業者、日本郵便、ヤマト運輸、佐川急便といった宅配業者、コンビニエンスストアの3業態がおのおの、戦略的に提携することにより、商品自体の受取方法が多様化してきています。従来の自宅で受け取る方法以外に、自宅もしくは勤務地近くのコンビニエンスストア、宅配業者の営業所、EC業者専用のロッカー等の展開を実施しており、商品の受取方法の多様化も進行しています。 この結果、実際に店舗で商品を購入せず、インターネットを利用した場合でも、すぐに商品を入手することが可能となってきています。

5. BtoC-EC市場規模の伸び

(参考:経産省「平成26年度電子商取引に関する市場調査」、総務省「通信利用動向調査‐端末別のインターネット利用状況」)

前述3及び4の結果として、BtoC-EC市場規模が年々増加しており、EC市場規模は平成22年に7兆7,880億円であったものが、平成27年には13兆7,746億円まで増加しています。実店舗での取引も含めた物販分野の商取引市場規模に占めるEC取引の比率、すなわちEC化率は、2.84%から4.75%まで増加しています。

6. 総論

総人口の減少傾向、及び総人口全体の高年齢化に伴い、小売業にとって一番の売上先である一般消費者の増加は今後、大きく望むことができない状況にあります。また、ITが身近になり、かつ物流技術が発達するに伴い、全ての消費者にとって、いつでもどこでも買い物ができる環境が整備されつつあり、近年オムニチャネル、ショールーミングといった用語も一般的となってきています。

小売業各社において、顧客のニーズをいかに取り込むか、新たな顧客をどのように開拓するかが、今後、生き残りの重要な課題となっていると考えられます。

そこで、次回から、新たなビジネスを模索していく中で留意すべきポイントを述べます。

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