はじめに
第2回では、小売業のうちスーパーマーケット業及び家電量販店業における業務、会計処理及び内部統制の特徴について、解説します。なお、文中の意見は筆者の私見であり、法人としての公式見解ではないことをお断りしておきます。
第Ⅲ章 スーパーマーケット業
1. スーパーマーケット業とは
スーパーマーケット業とは、一般的に食料品や医療品、住関品(日用雑貨品、医薬・化粧品、家具・インテリアなど)を取り扱う総合スーパーと、食料品の販売を主に行う食品スーパーに分かれています。中でも、①単一資本で②11店舗以上を直接経営、管理している小売業は、チェーンストアと定義されています(『スーパーマーケット業界用語集2000』より)。また、この要件に加えて日本チェーンストア協会では、年商10億円以上のスーパーマーケットも通常会員としています。
本稿では、チェーンストアを想定しスーパーマーケット(以下、スーパー)について解説します。
2. スーパーマーケット業の特徴
(1) 仕入形態
スーパーは、廉価・大量販売に基づく多品種・大量仕入を行っており、各所に点在する店舗に多種多様な商品を配送する必要があります。そのため物流センター等を利用し、商品を一箇所に集中させ、集中させた商品の仕分けを行う必要がありますが、これを外部業者に委託することがあります。この際に、仕入先が各店舗への配送及び商品仕分けを行う手間を省いた対価を、仕入先から受け取るケースもあります。
(2) 販売形態
スーパーマーケット業の特徴としては、多品種・大量販売及び日常雑貨、衣料品などの家庭用品の販売を行い、原則として現金販売を行うことが挙げられます。一般的には、POSレジにて現金販売を行い、店員が直接接客する業態です。またセルフレジの導入に伴い、顧客が自らレジに商品を通すこともあります。
3.スーパーマーケット業の業務の流れ
(1) 仕入(センター納品)
センター納品とは、物流センター等の決められた箇所に一度商品を集積し、配送業者が物流センター等から各店舗に配送する取引形態をいいます。共同物流センターにおける一般的な業務フローは図表1のようになります。なお、物流センターにおける商品の各店舗への仕分けを、前述のように専門業者に委託することもあります。
また物流センターに関しては一般的にDCセンター(在庫保管型物流センター)とTCセンター(在庫通過型物流センター)の2種類がありますが、商品の責任移転時点が変わらない契約内容であれば、会社側の業務内容及び統制に関して、両者に大きな差はないと考えられます。
【図表1】 共同物流センターの業務フローのイメージ
(2) 販売
顧客は自ら商品を手に取り、まとめてレジまで運び、レジにて現金同等物、クレジットカードで購入します。また近年は電子マネー等による購入もあります。商品の陳列場所に店員がいることは少なく、集合レジにおける対面販売がほとんどです。購入後は、顧客が自らレジ袋等に入れ商品を持ち帰ります。レジ現金及びPOSにて読み込まれたデータは、日々の業務終了後レジごとにまとめて納金・集計され、両データの照合が行われます。
(3) 納金
日々の売上金は、基本的に当日夜に各店舗の金庫又は納金機に保管し、翌日以降に警備会社等に引き渡し、警備会社等により会社の銀行口座へとまとめて入金されます。警備会社の納金機を利用する場合、納金機納入後から銀行口座へ入金されるまで当該現金は警備会社等に対する未収入金に振り替わり、所有権も会社から警備会社等へと移転します。
(4) 棚卸
棚卸は、売価還元法を採用しているスーパーマーケット業において、期末の在庫在高を把握し、売上原価を確定する最も重要な業務です。スーパーでは、多品種・大量の商品を搬入、搬出するに伴い、日々何回もの商品の移動(顧客及び従業員による)が行われているため、先入先出法等、一品ごとに棚卸資産を評価することは実務上困難といえます。従って簡便的な売価還元法を採用することが多く見受けられます。
棚卸は、期末日における在庫の実際在高に基づき棚卸資産の期末残高及び期間損益を確定させる重要な業務であり、原則として期末月に実施されます。そして棚卸による検数結果を集計した上で帳簿在高との突合が行われ、棚卸減耗損の算定、計上が行われます。なお、減耗損の発生する原因としては、盗難、紛失、検品の際の検数ミス、店舗における破損等が考えられます。
小売業
- 第1回:小売業の概要と百貨店業 (2016.04.05)
- 第2回:スーパーマーケット業、家電量販店業 (2016.04.05)
- 第3回:各種データから見える小売業を取り巻く環境の変化 (2017.03.27)
- 第4回:ECビジネスモデルの特徴と留意すべきポイント (2017.03.27)
- 第5回:ポイントサービスのビジネスモデルの特徴と留意すべきポイント (2017.03.27)