業種別会計
不動産業

第4回:保有目的の変更・不動産の時価

2016.12.19
新日本有限責任監査法人 不動産セクター
公認会計士 阿部徳仁/大場健司/村上和典
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3. 不動産の時価

(1) 棚卸資産の評価における時価

棚卸資産の評価に関する会計基準においては、期末における正味売却価額が取得価額よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とすることとなっています(棚卸資産の評価に関する会計基準7項)。この場合の正味売却価額は、売価(売却市場の時価)から見積追加製造原価および見積販売直接経費を控除したものをいうとされています(同5項)。販売用不動産等の正味売却価額は、次のように計算されます。

販売用不動産の正味売却価額=販売見込額-販売経費等見込額
開発事業等支出金の正味売却価額=
完成後販売見込額-(造成・建築工事原価今後発生見込額+販売経費等見込額)

また、販売見込額については期末において見込まれる将来販売時点の売価となると考えられますが、売却市場において市場価格が観察できないときには、合理的に算定された価額を販売見込額とします。これには、期末前後での販売実績に基づく価額を用いる場合や、契約により取り決められた一定の売価を用いる場合を含むことになります。また、販売公表価格または販売予定価格を販売見込額とすることも考えられますが、販売公表価格または販売予定価格で販売できる見込みが乏しい場合も多いと考えられるため、その場合には次の評価額を基礎として販売可能見込額を見積もることになります。

販売見込額の基礎となる土地の評価額としては、例えば次のようなものが考えられます。
  • 「不動産鑑定評価基準」に基づいて算定した価額
  • 公示価格
  • 都道府県基準値価格
  • 路線価による相続税評価額
  • 固定資産税評価額を基にした倍率方式による相続税評価額
  • 近隣の取引事例から比準した価格
  • 収益還元価額

(2) 減損会計における時価

固定資産の減損に係る会計基準においては、減損の測定時に正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額により評価することとされており、正味売却価額は時価から処分費用見込額を控除して算定されます(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針28項)。正味売却価額と使用価値では通常、使用価値の方が高いと考えられるので、正味売却価額が使用されるケースは比較的少ないと考えられます。正味売却価額の算定においては、時価とは観察可能な市場価格をいうとしていますが、市場価格が観察できない場合には合理的に算定された価額が時価となるとされており、不動産については「不動産鑑定評価基準」に基づいて算定するとされています。

(3) 賃貸等不動産の時価

賃貸等不動産の時価については「賃貸等不動産の当期末における時価とは、通常、観察可能な市場価格に基づく価額をいい、市場価額が観察できない場合には合理的に算定された価額をいう」とされています。賃貸等不動産に関する合理的に算定された価額は「不動産鑑定評価基準(国土交通省)による方法又は類似の方法に基づいて算定する。なお、契約により取り決められた一定の売却予定価額がある場合は、合理的に算定された価額として当該売却予定価額を用いることとする(賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用指針11項)」とされています。

(4) 不動産鑑定評価基準と一般に公表されている地価

「不動産鑑定評価基準」は、不動産鑑定士等が不動産の鑑定評価を行うに当たって準拠すべき基準であり、国土交通省が定めるものです。「不動産鑑定評価基準」において算定される価格には、正常価格、限定価格、特定価格、特殊価格の4種類がありますが、減損処理および時価の開示を行うに当たっての時価に対応するのは正常価格であるとされています。正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる市場での適正な価格とされています(不動産鑑定評価基準5章3節 I 1)。

不動産の鑑定評価の方式には、原価方式、比較方式および収益方式の三方式があります。原価方式は不動産の再調達(建築、造成等による新規の調達をいう)に要する原価に着目して、比較方式は不動産の取引事例または賃貸借等の事例に着目して、収益方式は不動産から生み出される収益に着目して、それぞれの不動産の価格または賃料を求めようとするものです(不動産鑑定評価基準7章)。

「不動産鑑定評価基準」では、鑑定評価方式の適用に当たっては、鑑定評価方式を当該案件に即して適切に適用すべきであるとしています。また、原則として三方式を併用すべきとされています。

なお、不動産の価格については、公表されている地価として次のものがあります。

【一般に公表されている地価の概要】
種類 公示価格 都道府県基準値価格 路線価 固定資産税
評価額
準拠法 地価公示法 国土利用計画法 相続税法 地方税法
評価の
目的
①一般の土地取引の指標
②公共用地の取得価格算定の規準
①国土利用計画法による規制価格基準
②公共用地の取得価格算定の規準
③公示価格を補うもの
①相続税課税
②贈与税課税
固定資産税課税
価格決定機関 国土交通省土地鑑定委員会 都道府県知事 国税局長 市町村長
価格
時点
毎年1月1日 毎年7月1日 毎年1月1日 3年ごとに基準年を置き、その年の1月1日
公表
時期
毎年3月下旬頃 毎年9月下旬頃 毎年7月上旬頃 基準年の4月頃(縦覧毎年4月頃)
備考 (都市計画区域のみ) ほぼ公示価格と同一価格水準(都市計画区域外を含む) 公示価格の80%程度 公示価格の70%程度

一般に公表されている地価の概要

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