業種別会計
鉄道業

第2回:固定資産と資金調達

2015.12.21
新日本有限責任監査法人 旅客運輸セクター
公認会計士 忍頂寺 大

3.取替法の会計処理

鉄道事業固定資産のうち、レールやまくら木など、種類および品質を同じくする多量の資産からなる固定資産で、毎年ほぼ同数量取り替えられるものは、取替資産として計上されます。当初に取得した取替資産を、取得時に固定資産に計上します。

① 1年目にレールを取得した時の処理

(借)鉄道事業固定資産100 (貸)未払金あるいは現金預金100

取替資産の一部を新しい資産と取り替えた場合は、取り替えにかかった費用を鉄道事業営業費に修繕費として計上します。取替法は同様の資産が多量にあり、個別の減価償却が実務上困難なものについて、取替時に取り替えにかかった金額を費用計上するものです。鉄道事業会計規則第13条において、取替法による会計処理が定められています。

② 2年目になり、レールが劣化した部分を新しいレールに取り替えた時の処理

(借)修繕費20 (貸)未払金あるいは現金預金20

取替法により、取り替えにかかった費用を計上していきますが、時間の経過とともに当初に取得した資産の価値は下落していくものと考えられることから、取得価額の50%までは減価償却を行うことが一般的です。法人税上の取扱いも取得価額の50%までは減価償却について認められています。

③ 当初計上した固定資産に係る減価償却処理

(借)減価償却費4 (貸)減価償却累計額4

IFRSにおいて取替法における費用処理は、IAS16(IFRSにおける有形固定資産の規定)にあてはめることが困難な可能性があります。取替法が認められず、取替資産を取り替えにかかった費用を通常の固定資産として計上して減価償却をする場合、現状の取替資産を扱っている固定資産システムの管理が煩雑になり、事務的負担が重くなる可能性があります。

4.工事負担金等の受け入れと圧縮記帳の会計処理

(1) 工事負担金等の会計処理と開示

鉄道業では、鉄道高架化や線路増設など、安全性確保のための大規模工事が行われます。これらの工事は公共の利益を図る目的で行われることから、その工事の負担を軽減するために地方公共団体等から工事負担金等を受け入れる場合があります。工事負担金の受け入れは、法人税法上益金として課税されるのが原則ですが、工事の資金負担を緩和するために受領した金銭を益金としてすぐに課税されたのでは、地方公共団体が工事負担金を支出した意味が薄れてしまいます。

このため、工事負担金等を受け入れ固定資産を取得した場合、その受入額に対する課税の繰延べを行うことができます。この場合、固定資産の貸借対照表価額から工事負担金等相当額を直接減額する方法と、圧縮積立金を計上する方法があります。

工事負担金等の受け入れは多額になることが多く、課税の繰延べを行うか否か、その場合に直接減額するか否かで、固定資産の貸借対照表計上額および特別損益金額に重要な影響を与えます。そのため、鉄道事業者は鉄道業における工事負担金等の会計処理を重要な会計方針として開示しています。

① 工事負担金等の受け入れ時

工事負担金等を受け入れた場合は、その受入額が収益計上されます。

(借)現金預金100 (貸)工事負担金等受入額100

② 直接減額する場合

受け入れた工事負担金等に対し、課税の繰延べを選択し直接減額する方法を採用する場合は、受入額と同額の圧縮損が計上されます。

(借)固定資産圧縮損100 (貸)鉄道事業固定資産100

なお、工事負担金等の受入処理について直接減額する場合は、会社は二つの方法から選択して開示することになっています。

  • 取得原価から工事負担金等に相当する金額を控除する形式で記載する方法
  • 取得原価から工事負担金等に相当する金額を控除した残高のみを記載し、当該工事負担金等の金額を注記する方法

③ 圧縮積立金を計上する方法

受け入れた工事負担金等に対し、課税の繰延べを選択し、決算において圧縮積立金を計上する方法を採用する場合は、工事負担金等受入額はそのまま収益となり、工事負担金等の額を含めて計上された固定資産に係る減価償却費が直接減額の場合に比べてより多く計上されます。

(借)繰越利益金100 (貸)圧縮積立金100

(2) 工事負担金等の受け入れに係る財務報告に係るリスクと統制活動

例えば直接減額する方法による場合、工事負担金等の受け入れに係る業務活動については次のような財務報告に係るリスクおよび統制活動が考えられます。

図3:工事負担金等の受け入れに係る財務報告に係るリスクと統制活動

情報又はデータの
変換時点の例
財務報告に係る
リスクの例
統制活動の例
工事負担金等を受け入れた金額の、会計システムへの入力 誤入力、入力漏れ、二重入力、期間帰属の誤りなど 見積書および請求書などの取引証憑と会計伝票との照合および承認
工事負担金等を減額した資産の、固定資産システムへの入力 減額対象資産の誤り、処理漏れなど
減額後の固定資産システムにおける減価償却計算 誤計算など
  • 工事代金支払時の資料と固定資産登録情報との照合および検証
  • 建設工事の工期予定日による精算状況の検証
  • 利用部門からの定期的な固定資産使用又は除却の報告制度の整備
有価証券報告書などの注記情報の作成 誤計算、誤集計など 工事負担金等の受け入れにより取得した固定資産の管理台帳の整備

工事負担金等の受け入れによる固定資産の取得が行われた場合は、必要とされる注記があるため、その会計処理上のリスクのほか、最終的な財務報告での開示にも注意する必要があります。

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