業種別会計
鉄道業

第2回:固定資産と資金調達

2015.12.21
新日本有限責任監査法人 旅客運輸セクター
公認会計士 忍頂寺 大
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1.鉄道事業の固定資産

鉄道や駅・車両などの設備を利用した運輸サービスという事業の性格から、鉄道事業固定資産は、総資産に占める割合が高く重要な資産項目として認識される場合が多いと考えられます。また、鉄道事業固定資産とその他の事業の固定資産は、財務諸表上区分して表示されます。

固定資産と資金調達については

  • 固定資産に関する取引の発生から財務報告までの流れと会計処理
  • 取替法の会計処理
  • 工事負担金等の受け入れと圧縮記帳の会計処理
  • 鉄道事業における固定資産の表示
  • 鉄道事業における特殊な資金調達・支援制度

を取り上げて解説します。

2.固定資産に関する取引の発生から財務報告までの流れと会計処理

鉄道業の有形固定資産には、鉄道事業を行うのに不可欠な線路や鉄道車両が計上されていますが、その取得や除却などの会計処理に大きな違いはありません。ただし、例年多くの安全対策工事が行われるため、固定資産の取得や除却がさかんに行われていると考えられます。

(1) 鉄道業における固定資産の財務報告の流れと会計処理

一般的な固定資産に係る業務活動を図示すると、図1のようなものが考えられます。

図1:固定資産に関する財務報告の流れの例

図1:固定資産に関する財務報告の流れの例

① 購入又は工事代金支払時(図1の①と対応)

取替法を適用するもの以外の鉄道事業固定資産の購入や工事に係る代金は、建設仮勘定に計上されます。

(借)建設仮勘定100 (貸)未払金あるいは現金預金100

② 建設仮勘定精算時(図1の②と対応)

工事の完了時に建設仮勘定が精算され、有形固定資産が計上されます。工事完了前に一部の資産を使用する場合は、使用を開始した部分に限り、固定資産に振り替えることもあります。

(借)鉄道事業固定資産100 (貸)建設仮勘定100

③ 減価償却時(図1の③と対応)

会計方針として採用している減価償却の方法に応じて、減価償却費が計上されます。

(借)減価償却費10 (貸)減価償却累計額10

④ 除却時(図1の④と対応)

鉄道事業固定資産を除却した場合に計上される固定資産除却費は、鉄道路線の廃止などによる臨時かつ巨額なものなどを除いて、鉄道事業営業費に計上されます。

(借)固定資産除却費5 (貸)鉄道事業固定資産100
減価償却累計額95  

(2) 鉄道業の固定資産に関連した財務報告に係るリスクと統制活動

最終的な固定資産の財務報告数値は、固定資産管理の業務活動の中で固定資産の取得、除却、修繕、償却などの情報が加工・変換又は転送されて、計算されることになります。ただ単に情報を保存しているときよりも、情報の加工や変換、転送や転記をするときの方が、情報に誤った判断を加えたり、データの消失や誤りが発生する可能性も高くなります。そのため情報が変換又は転送される時点は、重要な意味を持っています。

そこで、どのような情報又はデータの変換点でどのような誤りが起こるのかについて、情報等の変換時点と財務報告に係るリスクおよび統制活動の例を挙げると次のようになります。

図2:財務報告リスクと統制活動の例

  情報またはデータの変換時点の例 財務報告に係るリスクの例 統制活動の例
図1a. 工事代金の支払から建設仮勘定の計上(会計システムへの入力) 誤入力、入力漏れ、二重入力など
  • 見積書および請求書などの取引証憑と会計伝票との照合および承認
図1b. 建設仮勘定の精算処理を固定資産システムへ入力 誤入力、入力漏れ、二重入力のほか、
計上科目の誤り
償却開始時期の誤りなど
  • 工事代金支払時の資料と固定資産登録情報との照合および検証
  • 建設工事の工期予定日調査による精算処理漏れの有無の検証
  • 利用部門からの定期的な固定資産使用または除却の報告制度の確立
  • 建設仮勘定残高の実査(可能な場合)
  • 安全対策工事スケジュールなどと固定資産稼働状況との比較分析
図1c. 固定資産システムにおける減価償却計算 償却率の誤り、月割計算の誤りなど
  • 減価償却計算処理結果のサンプル計算チェック
  • 前年実績値および予算との対比分析
  • 固定資産システムに係るIT全般統制と業務処理統制
図1d. 固定資産システムから会計システムへの転送 誤情報の転送、転送漏れ、二重転送など
  • 固定資産システムから出力される残高と会計システムとの残高の照合
  • 固定資産システムに係るIT全般統制と業務処理統制

建設仮勘定として計上される資産は、通常は短期で固定資産へと振り替えられます。しかし、鉄道事業者の場合、路線延長工事や長期の安全対策工事などにより、長期間にわたり建設仮勘定に計上されている資産があります。また、電車を通常運行しながら工事を進める場合なども多く、その竣工時期を明確に把握することが困難なものもあります。そのため、固定資産を取得した場合、どの時点で事業用資産として使用を開始するかという期間帰属に関するリスクに留意する必要があります。

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