業種別会計
映画ビジネス

第2回:映画ビジネスの会計上の論点

2011.05.10
新日本有限責任監査法人 コンテンツビジネス研究会
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(5) 映画配給に係る収益認識

映画配給には、映画興行会社、配給会社それぞれの役割があり、収益認識の考え方について整理すると以下のようになります。

① 映画興行会社

映画興行会社は劇場運営を行っており、劇場の入場料である興行収入が収益として計上されることとなります。興行収入は、当日券、前売券、優待券などのチケットが劇場に着券した時点で認識される仕組みになっており、それぞれのチケット単価に入場人数を乗じた金額で計算されます。

映画興行会社は、映画上映料として当該興行収入に一定割合を乗じた金額を映画料として配給会社に支払います。一定割合のことを映画料率といい、実務慣行として、週次で料率が変更されます。一般的には、映画公開日からはじまる第1週が最も高い料率が設定され、週を経過するごとに低下していく仕組みになっています。映画料率については、週次で段階的に確定するケースもありますが、興行締めといわれる1作品の映画上映が終了して精算処理する際に劇場と映画配給会社が交渉し、確定するケースが多いと考えられます。映画料率については、映画配給会社と映画興行会社が劇場ごとに取り決めているケースが一般的で、作品及び週によって料率の幅が大きく変更されると考えられます。

映画興行期間が決算日をまたぐ場合は、暫定的な映画料率で計算し、決算整理の過程で大幅に料率が変更になった場合は、数値の修正を行っていると考えられます。

②配給会社

配給会社は、興行会社から日次、週次及び月次で興行成績の報告を受け、当該報告に基づき配給収入として収益を認識します。先ほどの映画興行会社の視点でいえば、映画興行会社にとっての映画料が、映画配給会社にとっての配給収入となります。

映画の興行は、通常、土曜日からスタートし、翌金曜日までを1週とカウントしています。金曜日までに決算日が到来した場合は、日次で報告された興行成績をもとに配給収入を認識します。上記の映画興行収入に記載のように映画料率が興行締めまで確定しないケースがありますが、その際は暫定的に決定されている料率で計算し、配給収入を計上することになります。

配給会社は、配給収入からトップオフ経費といわれるP&A(Printing & Advertising)費等の必要経費の金額を控除し、一定割合を乗じた金額を配給手数料として自社の収益とし、残額を権利者に支払います。図に表わすと右のようになり、配給会社は損益計算書上、配給収入とトップオフ経費を総額で計上しているケースが多いと考えられます。

上記の歩合制ではなく、定額で劇場上映を許諾するような実務慣行も稀にあります。その際は、映画興行会社からの報告は不要で、映画公開日である許諾開始日に売上計上されることになります。

(6) ビデオグラム化権に係る収益認識

ビデオグラム化権は、オリジナルの映像作品をDVDやビデオなどのパッケージ商品にする権利のことをいいます。映画作品のDVD化、ビデオ化は、オリジナルの映画作品に対する権利を有している製作者または配給者が自ら行うケースも多いですが、製作者等が他のDVD制作会社や海外の映画会社にビデオグラム化権をライセンスするケースも見受けられます。ここでは、そのようにビデオグラム化権を第三者にライセンスする場合の収益の認識について検討します。

① 売切りと同視できる場合

権利元の製作者等が、ライセンシー(許諾を受けた者)に対して映像マスターを引渡した後は、ライセンシーに対して重要な履行義務を負っておらず、ライセンス料も歩合制の部分がなく、定額のみの場合は、実質的に売切りの取引と同視できるといえます。

このような場合には、ライセンシーに映像マスターが引渡され(あるいはライセンシーが映像マスターをいつでも使用可能な状態になっており)、かつ契約におけるライセンス開始日が到来した時点で収益を計上するのが適切と考えられます。

② 映像マスター引渡後も重要な追加的義務を負っている場合

権利元の製作者等が、ライセンシーに対して映像マスターを引渡した後においても、DVDソフトへの製作協力や協同プロモーション等を行う等、重要な履行義務を負っている場合は、映像マスターを引渡したのみでは、契約上の債務の履行が完了していないことになります。

このような場合には、残余の重要な履行義務の提供が完了した時点において、収益を認識するのが適切といえます。実務上は、ライセンス期間に亘って収益を計上する等の方法も考えられます。

③ 返還不要のライセンス料(ミニマム・ギャランティー)を受取る場合

ライセンス料について、返還不要の最低保証金額(ミニマム・ギャランティー)が設定され、ライセンシーがミニマム・ギャランティーを超過する収入を獲得した場合に、当該超過部分について一定の歩合に基づき、収益の分配を受けるというケースがあります。

この場合のミニマム・ギャランティー部分についての考え方は、上記の①及び②と同様です。すなわち、権利元の製作者等が、ライセンシーに対して映像マスターを引渡した後は、ライセンシーに対して重要な履行義務を負っていないような場合には、ライセンシーに映像マスターが引渡され(あるいはライセンシーが映像マスターをいつでも使用可能な状態になっており)、かつ契約におけるライセンス開始日が到来した時点で収益を計上するのが適切と考えられます。

一方、ライセンシーに対する重要な履行義務がまだ残っているような場合には、このような場合には、残余の重要な履行義務の提供が完了した時点において、収益を認識するのが適切であり、実務上は、ライセンス期間に亘って収益を計上する等の方法が考えられます。

また、歩合部分については、ライセンシーからの報告に基づいて発生時に売上を計上するのが適切と考えられます。


(週刊 経営財務 平成22年12月13日 No.2995 一部修正)

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