業種別会計
映画ビジネス

第1回:映画ビジネスの概要

2011.05.10
新日本有限責任監査法人 コンテンツビジネス研究会

本シリーズでは、業種別に事業の特徴に注目し、事業の概要、業種における特徴的な会計処理や開示、関連する内部統制などについて分かりやすく解説したいと考えています。今回は 「映画ビジネス」 を採り上げます。なお、文中の意見は執筆者の私見であり、法人としての公式見解ではないことをお断りしておきます。


(1) 映画ビジネスの市場規模

映画館における入場者数は、1958年の11億2千万人をピークに、映画離れの進展とともに減少を続け、1996年に1億1千万人にまで落ち込みました。しかし、その後、日本におけるシネマコンプレックスの発展とともに増加に転じ、2001年以降は、1億6千万人~1億7千万人の間で安定して推移しており、市場規模も邦画、洋画併せて、おおよそ2,000億円前後で推移してきています。2001年以降の映画産業の市場規模は、以下の通りです。

各年度の邦画と洋画の興行収入は、メガヒット映画の有無と本数によって影響を受けています。例えば、洋画が邦画を上回っている2007年は、「パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド」(109億円)、「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」(94億円)等の公開による影響が大きかったと考えられます。一方、邦画が洋画を上回っている2008年においては、「崖の上のポニョ」(155億円)の公開がありました。2009年は、邦画、洋画ともにそれぞれ、「ROOKIES―卒業」(85.5億円)、「ハリー・ポッターと謎のプリンス」(80億円)等のメガヒットがありましたが、邦画において、興業収入10億円超の作品の本数が多かったため、トータルでは邦画が洋画を上回る結果となっています。

  興行収入 映画館スクリ
ーン数(うち
シネコン)
公開本数 入場
者数
平均
料金 
シェア








西暦 百万円 百万円 百万円 スクリーン 千人
2001 78,144 122,010 200,154 2,585(1,259) 281 349 630 163,280 1,226 39.0 61.0
2002 53,294 143,486 196,780 2,635(1,396) 293 347 640 160,767 1,224 27.1 72.9
2003 67,125 136,134 203,259 2,681(1,533) 287 335 622 162,347 1,252 33.0 67.0
2004 79,054 131,860 210,914 2,825(1,766) 310 339 649 170,092 1,240 37.5 62.5
2005 81,780 116,380 198,160 2,926(1,954) 356 375 731 160,453 1,235 41.3 58.7
2006 107,944 94,990 202,934 3,062(2,230) 417 404 821 164,585 1,233 53.2 46.8
2007 94,645 103,798 198,443 3,221(2,454) 407 403 810 163,193 1,216 47.7 52.3
2008 115,859 78,977 194,836 3,359(2,659) 418 388 806 160,491 1,214 59.5 40.5
2009 117,309 88,726 206,035 3,396(2,723) 448 314 762 169,297 1,217 56.9 43.1

(社) 日本映画製作者連盟ホームページより引用

(2) 映画・映像作品のマルチ・ユース

流通メディアの発達に伴い、映画・映像作品については、映画館で上映されるだけでなく、DVDやテレビ等の様々なメディアを通して二次利用されるのが通例になっています。このようにひとつの映画・映像作品を様々なメディアで流通させることを、一般的に、「マルチ・ユース」、「マルチ・ウィンドウ展開」等と呼んでいます。マルチ・ユースは、通常は、①映画館での上映→②DVD・ビデオでの展開(セルとレンタル)→③有料テレビ放送(BS、CS、CATV等)→④地上波テレビ放送の順で展開されることが多いと思われます。

二次利用市場の規模ですが、下記のデータに見られるように、現在では、二次利用による収入が、映画館等での興業による一時利用の収入を、大きく上回る状況となっています。そのため、映画・映像作品の利益計画の立案の際には、この二次利用部分の見積りが非常に重要となってきています。

(※下の図をクリックすると拡大します。)

二次利用市場の規模

「メディア・ソフトの制作及び流通の実態調査結果について」(総務省 情報通信政策研究所)より引用

(3) 共同制作による映画・映像作品の制作

昨今では、映画・映像作品の制作費の規模も大きくなってきており、それに伴い、映画・映像作品に関するリスクも単独の企業だけでは負担しきれないぐらい大きくなってきているといえます。そのため、複数社が集まり、共同制作の形で映画・映像作品が制作されることも多くなっています。

共同制作の形式としては、匿名組合方式、信託方式、SPC方式,商品ファンド方式等が考えられますが、我が国において最もポピュラーなのは、製作委員会の形式による共同制作です。製作委員会の法的性格は、民法上の任意組合(民法第667条)と解されており、通常、映画会社、ビデオソフト制作会社、放送局、出版社、広告会社等の出資により組成されます。その目的は、映画・映像作品の制作や流通に造詣の深い各社が、資金とノウハウを結集し、共同で映画・映像作品を制作・販売するという点にあります。

欧米等におけるような金融機関等を利用した資金調達と比較して、製作委員会の特徴としては、純粋な資金調達目的だけでなく、映画の制作・興業・二次利用に関する豊富なノウハウを有する各出資者の英知を結集することも重視されているということが挙げられると思われます。

(4) 映画ビジネスにおける主なプレーヤー

① 製作委員会方式の場合

製作委員会においては、各共同事業者は、出資者であるとともに、映画・映像作品ビジネスの事業者でもあります。共同事業者は、下記の表におけるように、それぞれの得意とする領域において、中心的な役割を担当するのが通例となっています。

領域 共同事業者
映画配給・興業業務 映画会社
DVD・ビデオ業務(セル・レンタル) ビデオ制作会社
テレビ放送業務 放送局
広告業務 広告会社
キャラクター商品等の販売 玩具会社等

② 買付等の場合

洋画等に見られるような買付契約の場合は、通常、配給会社が、海外の権利元からオール・ライツのライセンスを受け、それを関係する企業にサブ・ライセンスまたは委託するという形をとります。権利元からの権利の買付にあたっては、オール・ライツではなく、テレビ放送権やビデオ化権だけが契約の対象となる場合もあります。

ライセンスの契約のパターンとしては、一時金を支払って取引が完了するという、実質的には売切りの販売契約と同視できるような契約や、ライセンシーの売上の一定割合をライセンス料とする契約、また、売上の一定割合のライセンス料に加えて、返還不要のミニマム・ギャランティーを受取る契約等が挙げられます。

ライセンス
契約の
パターン
  • 実質売切り
  • ライセンシーが獲得した売上の一定割合を徴収
  • 売上の一定割合を徴収する他、ミニマム・ギャランティーを受取る

③ 単独制作の場合

単独制作の場合には、制作会社が、配給会社や興行会社等の関係する企業にライセンスまたは委託するという形になります。ライセンス料の形式のパターンは、先述の買付の場合と同様です。


(週刊 経営財務 平成22年12月13日 No.2995 一部修正)

映画ビジネス

情報量は適当ですか?

文章はわかりやすいですか?

参考になりましたか?