業種別会計
リース業

第3回:リース業における流動化

2010.11.12
新日本有限責任監査法人 リース業研究会
大山太郎/宮﨑徹/小谷明子

1.流動化とは

資産の流動化とは、資産を保有する会社が資産を分離し、その分離された資産を裏付けとして資金調達を行うことです。ですから、資産を保有している会社の信用力ではなく、当該資産の信用力による調達を可能とするファイナンス手法を指します。ここでは、流動化の対象資産をリース料債権に限定し、リース業における流動化の資金調達手段としての位置付け、流動化の方法、流動化の会計処理を述べます。なお、リース料債権は、リース契約に基づき借手からリース料を受け取る権利であり、ファイナンス・リース取引に分類されるリース契約のほか、オペレーティング・リース取引に分類されるリース契約も含みます。

2.資金調達手段としての資産の流動化

リース料債権の流動化は、金融機関からの借入やコマーシャルペーパー、社債の発行など自社の信用力に依拠した資金調達手段と異なり、流動化するリース料債権の信用力に依拠した資金調達手段です。リース料債権については、将来キャッシュ・フロー予測がしやすいため、流動化しやすい債権と考えられています。

リース業に限らず、一般に流動化を行う目的としては以下の項目があげられます。

(1)資金調達手段の多様化

借入や社債等の自社の信用力に依拠した資金調達手段のみで資金調達した場合、調達額が多額になれば調達コストは増加します。さらに、社債の発行による資金調達においては、当該資金を貸付金に使用できないという制限があります。しかし、リース業においては、貸付業務を行っているケースも多く、その制限を解除するためには「金融業者の貸付業務のための社債発行等に関する法律」による「特定金融会社」の登録が必要です。そのため、当該登録を行っていない会社にとっては負担が大きくなると考えられます。そこで、流動化による資金調達を行うことで、自社の信用力に依拠した資金調達能力を温存し、これらの手段を使い分けることにより企業の資金調達能力を高めることが可能となります。

(2)資産の有効利用

資産を流動化することによって、資産から生じる将来キャッシュ・フローを早期に実現させることができ、得られた資金によって新たな投資が可能となります。

(3)流動化した資産への継続関与

資産を単純に売却した場合と比較して、譲渡人がサービシング業務を引き受けることにより、流動化後も原債務者である顧客との関係を継続することが可能となります。

(4)低利による資金調達

流動化は、流動化する資産の信用力に依拠した資金調達であるため、流動化資産の信用力が自社の信用力を上回る場合には、その信用力に見合った低利での資金調達が可能となります。

(5)その他

上記の他に、会計上、流動化した資産のオフバランス化が可能な場合には、貸借対照表のスリム化効果が生じます。このため、総資産利益率や自己資本比率等の財務指標の向上も、流動化を行う目的の一つと考えられます。

3.流動化のスキーム

リース料債権の流動化取引は、一般的にSPE(Special Purpose Entity:特定目的事業体)に対してリース料債権を譲渡し、その対価として資金を得るというスキームで行われます。SPEは、譲り受けたリース料債権を裏付けとして資金調達を行い、調達した資金は譲渡代金の支払いにあてられます。SPEは、「会社」、「信託」など様々な形態を選択することが可能であり、譲渡人や流動化関係者からの倒産隔離達成や流動化関係者に対して非連結の事業体とするなど、スキームごとの事情により決定されることになります。

ここでは、リース料債権を譲渡するSPEとして会社を利用した場合と、信託を利用した場合に分類し、それぞれについてスキームを説明します。

(1)SPEとして会社を利用したスキームの場合

流動化スキームにおけるSPEとして会社が選択された場合、当該会社はSPC(Special Purpose Company:特別目的会社)と呼ばれます。このケースにおいて実務上利用されることが多い形態として、「資産の流動化に関する法律」に従って設立された特定目的会社や、海外で設立されたSPCがあげられます。設立されたSPCでは、一般的に特定出資信託(資産の流動化に関する法律第33条)やチャリタブル・トラストの仕組みにより倒産隔離を実現しています。

SPEとして会社を利用したスキームの場合

  1. 譲渡人(リース会社)が、リース物件の借手とリース契約を締結します。
  2. 譲渡人はSPCに対して、リース料債権を譲渡します。
  3. SPCは、銀行等の投資家から、対象資産を裏付けとした資金調達を行います。SPCでの資金調達方法は、譲渡対象資産を担保とした証券・コマーシャルペーパーの発行やノンリコースローンによって行われます。
  4. SPCから譲渡人に対して、譲渡代金の支払いがなされます。
  5. 譲渡人はサービサーとしてリース料を借手より回収します。
  6. 譲渡人はSPCに対して、借手から回収したリース料を支払います。
  7. SPCは回収したリース料から投資家に対する利払い・収益分配・ローン償還等を行います。

(2)SPEとして信託を利用したスキームの場合

流動化スキームにおけるSPEとして信託を利用するケースは実務上多く見受けられており、その理由としては、信託法により倒産隔離が図られていることや、課税関係が透明であることがあげられます。

SPEとして信託を利用したスキームの場合

  1. 譲渡人(リース会社)が、リース物件の借手とリース契約を締結します。
  2. 譲渡人はリース料債権を信託財産とする信託契約を信託銀行と締結してリース料債権を信託設定し、信託受益権を取得します。
  3. 譲渡人は、投資家と当該信託受益権の売買契約を締結して、信託受益権を投資家へ譲渡します。
  4. 投資家は、信託受益権の購入対価を譲渡人に支払います。
  5. 譲渡人はサービサーとしてリース料を借手より回収します。
  6. 譲渡人は信託銀行に対して、回収したリース料を支払います。
  7. 信託銀行は回収されたリース料に応じて、信託受益権の保有者である投資家に対して、信託配当・元本償還を行います。