業種別会計
保険業

第3回:生命保険会社のビジネスと会計処理の概要

2010.11.09

3. 生命保険契約の会計処理

(1)保険料

契約者から収受した初回保険料は仮受金としていったん記帳され、医的診査等を経て、保険契約の引受が決定したのち、仮受金から保険料に全額振替えられます(引受けられなかった保険料は返金されます)。

① 保険料入金時

(借)現金預金 300   (貸)仮受金 300  

② 引受決定時

(借)仮受金 300   (貸)保険料 300  

2回目以降の保険料は、個別契約内容との一致が確認されたのち、仮受金から保険料に振替られます。

保険料はその対象期間に係らず上記のとおり処理されます。例えば、10年分の保険料を一括して収受した場合であっても前受金として計上せずに全額が当期の保険料として計上されます。

(2)保険金等

保険金や解約返戻金は支払時に全額費用処理されます。

(借)保険金等 200   (貸)現金預金 200  

したがって、10年分の保険料を一括して収受したのち、契約者からの解約請求に基づき解約返戻金を支払った場合でも全額が当期の保険金等として処理されます。

(3)支払備金

保険会社は契約者等から保険金等の支払請求を受けると支払の適否を判断したのち、支払処理を行います。請求を受けたものの、期末日時点においていまだ支払が行われていない保険金等は支払備金として負債に計上されます。期末に支払備金として計上された保険契約についても、翌期に支払われる場合には保険金等として処理されます。支払備金は翌期末に振戻処理され、翌期の支払備金繰入額と相殺処理されます。

① 期末日

(借)支払備金繰入額 200   (貸)支払備金 200  

② 翌期末日

(借)支払備金 200   (貸)支払備金繰入額 200  
       (支払備金戻入額)  

また、保険事故が発生しているものの、契約者等から保険金等の支払請求が行われていない契約に対しても支払備金が見積り計上されます。既発生未報告備金(IBNR備金:Incurred But Not Reported)と呼ばれ、大蔵省告示第234号(平成10年6月8日)に基づき、過年度の既発生未報告の実績と当年度の保険金等の支払状況に基づき算定されます。

(4)責任準備金

上記のとおり、保険料と保険金等は基本的に現金主義にて会計処理されますが、保険会社は期末日に責任準備金を計上することにより、損益を引受けた保険リスクの解放に応じて認識されるように修正します。責任準備金は翌期末日に振戻し処理され、翌期の繰入額と相殺されます。

① 期末日

(借)責任準備金繰入額 200   (貸)責任準備金 200  

② 翌期末日

(借)責任準備金 200   (貸)責任準備金繰入額 200  
       (責任準備金戻入額)  

責任準備金は、次の区分に応じて金融庁の認可を受けた方法に基づき計上することが法令で求められています(保険業法第113条、保険業法施行規則第69条)。

【図表3】 責任準備金の区分

区分 内容 金額(占率)※
保険料積立金 保険契約に基づく将来の債務の履行に備えるため、保険数理に基づき計算した金額。 104,294,195百万円
(96.1%)
未経過保険料 未経過期間に対応する責任に相当する額として計算した金額。 2,164,829百万円
(2.0%)
危険準備金 保険契約に基づく将来の債務を確実に履行するため、将来発生が見込まれる危険に備えて計算した金額。 2,028,861百万円
(1.9%)
  • 金額及び占率は生命保険大手4社(日本生命、第一生命、明治安田生命、住友生命)の平成21年3月末残高及び責任準備金合計に対する各区分の占率を記載(ディスクロージャー資料より筆者作成)

保険料積立金が「・・・将来の債務の履行に備えるため・・・」とされているのに対し、危険準備金が「・・・将来の債務を確実に履行するため・・・」となっているとおり、危険準備金は、保険料積立金の積立水準、すなわち、通常想定される保険金の支払水準を超えた支払に対して、健全性の見地から備えるものと一般に考えられています。そのため、繰入額は、単年度の最低繰入額と残高ベースでの繰入限度額が定められているのみで、最低繰入額と繰入限度額の範囲であれば経営者の自由裁量で積立額を決定することが法令上、認められています。

責任準備金及び責任準備金繰入額は、積立額に経営者の自由裁量の余地がある危険準備金を含めて一括して表示されるため留意が必要です。

一般的な保険料、保険金等及び責任準備金の業務の全体像を図示すれば次のようになります。

【図表4】 業務フローの全体像

図表4 業務フローの全体像

まとめ

上記で解説してきたように保険業は「保険契約」という極めて特殊な商品を取り扱う事業であり、保険業の会計を理解するためには、基本的な概念や用語、商品の仕組み等を理解することが不可欠となります。なお、保険業のビジネスと会計を理解するには、以下の参考文献も有益です。

保険業の業務の流れとBS・PLの関係(イメージ)

参考文献・Webサイト

  • 「解説 保険法」大串淳子・日本生命保険生命保険研究会(弘文堂)
  • 「新しい保険法」萩本修(財団法人金融財政事情研究会)
  • 「損害保険会計」萩野悦司、岡本真一、玉村勝彦(財団法人損害保険事業総合研究所)
  • 「損害保険会計と決算」 小笠原克彦 (財団法人損害保険事業総合研究所)
  • 「再保険その理論と実務」 トーア再保険株式会社編(財団法人損害保険事業総合研究所)
  • 「生命保険講座~生命保険総論/生命保険計理」(生命保険協会)
  • 「生命保険会計」吉野智市(財団法人生命保険文化センター)
  • 金融庁ホームページ
  • 日本地震再保険ホームページ
  • 損害保険料算出機構ホームページ
  • 日本損害保険協会ホームページ
  • 日本損害保険代理業協会ホームページ
  • 生命保険協会ホームページ

(週刊 経営財務 平成22年7月19日 No.2975 掲載)


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