業種別会計
外食産業

第3回:外食産業における営業業務

2016.04.12
新日本有限責任監査法人 外食セクター
公認会計士 戸田 哲生 山﨑 祐史

第3回:外食産業における営業業務

外食産業における営業業務とは、顧客が来店し、注文を受け、仕入れた食材等を調理した飲食サービスを提供し、レジにて精算を行うといった一連の業務をいいます。店舗形態には、路面店や商業施設のテナント店もあります。本項では店舗における売上、売上代金の回収とその管理の流れ、さらにコスト面で特徴的な労務費について解説します。

1. 売上取引

(1) 取引の概要及び会計処理

① 売上時における業務の概要

一般的には、全店舗に共通のPOSシステムやOESが導入されており、顧客からの注文をハンディターミナルという携帯端末に入力すると、システムに商品名(メニュー)と数量が登録され、自動で売上金額が計算されます。会計の際には、座席No等からシステム情報を読み込み、精算処理を行います。一般的にはこの精算時点、すなわち対価の受取り時点が収益の認識時点となります。なお、取引件数が膨大であるため、通常、一日の営業終了後POSシステムに蓄積された当日の売上金額データを確定処理し、会計上、店舗における販売金額を一括して売上計上します。

(売上計上時の仕訳例)
(借)現金 100 (貸)売上高 100

② 売上金の回収

顧客より受け取った売上金は、最終的に本社が管理する預金口座に入金されます。本社管理の預金口座への集金は次の三つの方法に大別されます。

a. ATMなどを利用した送金方法

一つ目は銀行やコンビニ等のATMを利用して店舗内の売上金を定期的に預金口座へ直接入金する方法です。 会計処理は預金口座へ現金を送金した際に、店舗の現金勘定から預金勘定へ振り替えます。

(現金送金時の仕訳例)
(借)預金 100 (貸)現金 100

b. 集金業者に依頼する方法

二つ目は定期的に外部の集金業者(主に警備会社等)が店舗の売上金を回収し、本社預金口座へ送金する方法です。外部業者へ現金を渡したと判断される時点で、店舗の現金勘定から預け金勘定等へ振り替えます。

(現金引渡し時の仕訳例)
(借)預け金 100 (貸)現金 100

c. テナントオーナー預けとする方法

三つ目は主に商業施設に入居している店舗において、日次等で売上金をテナントオーナーへ預け、テナントオーナーから家賃や光熱費等の経費を差し引かれた金額が本社預金口座へ一定期間ごとに送金される方法です。この方法では、入金がなされるまでの間、債権が生じていることになるため、店舗の現金勘定から預け金勘定等へ振り替えます。

(テナントオーナー引渡し時の仕訳例)
(借)預け金 100 (貸)現金 100

この他、クレジットカードや各種電子マネー等、現金以外も利用されます。ただし、これらは外食産業固有の取引ではないため、今回は割愛します。

(2) 関連する業務管理と内部統制

① 共通して行われる内部統制

売上金は盗難、流用、紛失といったリスクが高く、厳重に管理される必要があります。従って、内部統制上、POSシステムで計算される理論上の現金残高と店舗内に存在する実際の現金残高とを照合する仕組みを整える必要があります。また、店舗責任者がPOSレジにおける売上取消処理の金額をレビューし、返品等の処理が正しく実行されたかを確認することも、POSデータの金額の妥当性を検討する重要な内部統制となります。さらに、売上取消処理が多い店舗は、本社が個別に原因を調査することも重要といえます。

② 売上金の回収方法ごとに一般的に行われる内部統制

a. ATMなどを利用した送金方法

本社では店舗から本社預金口座への入金が、決められた方法・タイミングで実施されているか確認する必要があります。これは、店舗で多額の現金を長期に保管することは盗難、流用、紛失のリスクが高く、このような不正を防止する必要があるためです。金額の正確性はもちろん、入金の遅れをチェックすることでこうしたリスクを防止します。

b. 集金業者に依頼する方法

本社では現金授受の検証のため、業者の各店舗からの集金データと本社が把握する各店舗の引渡し金額とを照合し、差異が生じている店舗はその原因を調査します。業者から入金がなされた際も、入金額を検証するため実際の入金額と本社把握の金額を照合する必要があります。

c. テナントオーナー預けとする方法

本社では売上金を適切に入金したことを確認するため、テナントオーナーより受け取る「預り証」の金額と預けた金額に相違がないか確認します。また、金額認識の相違がないか確認するため、テナントオーナーから通知される「精算書」や「入金明細書」等の売上金の金額をPOSデータと照合することや実際の入金額と照合することも必要となります。

2. 人件費

(1) 外食産業における人件費の特徴

外食産業では、製造業等の他業種と比べて、人件費率が相対的に高い傾向にあります。製造業等では、機械による大量生産を行うことで売上に対する人件費率は低下しますが、外食産業では、店舗での調理や接客等に人員を割く必要があり、提供しているサービス(売上)に対する人件費率が高くなります。国内の上場外食企業について、有価証券報告書等から各社の売上高人件費率をみると25~35%程度となっており、一般的な他業種のそれが10%程度となっていることからも、その比率が高いといえます。このように、外食産業では人件費がコストの大きな比重を占めており、時間当たり単価の低いパートやアルバイトを多く採用することで、人件費率をコントロールしている企業が多数あります。一方、近年ではパートやアルバイトの人員確保が難しくなっており、時間当たりの人件費は上昇傾向にあるといえます。

(2) ITによる管理

外食産業において、人件費は質的にも金額的にも重要性が高く、人の入れ替わりが頻繁にあるため、その管理についてシステム対応を行っている企業が多いことも、業種の特徴といえます。多くの企業では、各従業員にIDカード等を付与し、出退勤や休憩時間についてシステム管理を行っています。これにより、多数のパートやアルバイトの勤務時間の集計を可能にし、給与計算を円滑に行うとともに、店舗別の損益管理を行うことも可能となります。また、金額の大きい人件費の管理は、内部統制上も重要なプロセスと考えられ、多くの企業でITによる管理が行われています。

(3) 損益計算書上での取扱い

人件費については、各社でその計上区分に違いが出ていることも特徴です。外食産業における人件費は、店舗やセントラルキッチン等で業務に従事する従業員に係るものと、本社等で業務に従事する従業員に係るものに大別されます。外食企業の有価証券報告書等によれば、製造原価明細書に人件費が表示される企業とされない企業が存在しています。これは、店舗で発生する人件費を、売上高と直接対応させて売上原価(製造原価)として捉えるか、売上高と直接対応しない費用として販売費及び一般管理費として捉えるかといった違いによるものと考えられます。すなわち、店舗でサービスを提供するにあたり、従業員の業務は必要不可欠ではあるものの、その業務が顧客の飲食に重要な影響を与えているか否かの判断が、計上区分の違いとして現れると考えられます。例えば、店舗やセントラルキッチンで料理人が調理を行う場合と、食材加工のほぼ全てを納入業者が行い、店舗ではアルバイトがそれを温めるのみといった場合では、店舗での調理を主要業務と捉えるか販売のための付随的な業務と捉えるかによって、人件費の捉え方に違いが生じることになります。


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