業種別会計
外食産業

第2回:外食産業における固定資産管理

2021.04.23
EY新日本有限責任監査法人 外食セクター
公認会計士 佐藤 衛/堀井秀樹

外食産業において、店舗をどこに、どのような形態で、どの程度の規模で出店するかという出店時の投資意思決定は、同業他社との競争において非常に重要といえます。また、会計面においても、貸借対照表に占める固定資産の割合が大きく、会計上の論点が複数存在します。このため、本稿では、固定資産及びその会計処理の特徴について解説します。

1. 外食産業の固定資産の特徴

外食産業は一般消費者を顧客としており、かつ、店舗で飲食サービスを提供するという特殊性から、固定資産には次のような特徴があります。

  • 主な固定資産は店舗及び店舗設備であり、店舗は直接所有するケース、テナントとして物件を賃借するケースがありますが、大手外食チェーンは、テナントとして店舗を増やしていきます。
  • 大手外食チェーンは、スクラップ・アンド・ビルドを繰り返して企業規模を拡大していきます。

以上のような特徴から、管理面において次のような特徴が生じます。

  • 固定資産(店舗)のロケーションはそれぞれ離れており、相互依存関係が薄く、各店舗が投資意思決定の対象や資産管理の対象となります。
  • 新規出店や退店が頻繁に行われ(スクラップ・アンド・ビルド)、常に立地等のマーケットを意識した調査を行っています。
  • 既存店舗において、顧客ニーズに応じた頻繁な店舗内装のリニューアルが求められ、頻度の高い投資意思決定が求められます。
  • テナント賃借店舗は居抜きや、前の借主所有の固定資産を購入することもあり、中古固定資産として適切な金額や単位による計上やその後の管理が必要となります。
  • テナント賃借による差入敷金・保証金が比較的多額となり、総資産の高い割合を占めます。

2. 外食産業の固定資産に関する会計処理の特徴

外食産業では、前述のような固定資産の特徴により、次のような会計処理の特徴が生じます。

(1)減損会計

固定資産の減損会計基準に基づき、減損の兆候がある資産又は資産グループにつき、減損テストを実施し、減損損失の計上を検討します。検討の入り口である資産のグルーピングの決定につき、減損会計基準は他の資産又は資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位で行うとしています(減損会計基準二6.(1))。外食産業では、店舗ごとに継続的な収支管理がなされており、かつ、店舗間の相互補完性がない場合は、通常、各店舗がグルーピングの単位となります。また、複数店舗を一体として収支管理を行っている場合や複数店舗間に相互依存性がある場合は、一定のエリア(複数店舗)ごとをグルーピングの単位としているケースもあります。このように、外食産業では、他の業種に比べグルーピングの単位が非常に小さいといえます。外食チェーンは、スクラップ・アンド・ビルドを繰り返し企業規模を拡大していくことから、継続して赤字の店舗(不採算店舗)や閉店の意思決定をした店舗は減損の兆候ありとなり、減損損失計上の検討をする必要が生じるため、減損損失が発生しやすい業種であるといえます。

(2)資産除去債務

資産除去債務の会計基準に基づき、テナントの賃貸借契約や定期借地契約において、当該テナントの内装(造作)や借地上に建設した自己の物件について契約により原状回復義務が要求される場合、資産除去債務の計上を検討する必要があります。資産除去債務を計上する場合、原則的には、当該資産除去債務を負債に計上し、これに対する除去費用の資産(固定資産)を計上します。ただし、賃貸借契約において敷金が計上されている場合で、資産除去債務の金額が敷金金額の範囲内であれば、当該敷金の回収が見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担分を費用化するという簡便的な方法も認められます(資産除去債務適用指針9)。

【設例】
×1年度期首より建物を賃貸借する契約を締結し、×1年度期首より賃借しています。当該建物にかかる5年後の原状回復費用を1,000円と見積っています。敷金は2,000円、割引率は3%、償却方法は定額法とします。

【原則的な処理の仕訳例】

×1年期首
(借)敷金 2,000 (貸)現金 2,000
(借)建物 863 (貸)資産除去債務 863※
※将来キャッシュ・フロー見積額1,000円÷(1.03)5
×1年期末
(借)減価償却費 173 (貸)減価償却累計額 173※
※863÷5年間
(借)利息費用 26 (貸)資産除去債務 26※
※863×3%

【簡便的な処理の仕訳例】

敷金2,000円のうち1,000円について原状回復費用に充てられるため返還が認められないと見積り、費用配分します。

×1年期首
(借)敷金 2,000 (貸)現金 2,000
×1年度期末
(借)敷金償却費 200 (貸)敷金 200※
※1,000÷5年間

資産除去債務は、毎期末見積りの妥当性を検討する必要があります。最近では、人件費の高騰による原状回復工事単価の上昇等により、履行差額が多額となるケース(工事費の実績が計上済みの資産除去債務を上回るケース)が散見されるため留意が必要です。

また、固定資産の減損に係る将来キャッシュ・フローの見積り年数と、資産除去債務に関連する有形固定資産の残存耐用年数との整合性に留意が必要です。

(3)店舗閉鎖損失引当金

固定資産については、減損損失の認識の検討や資産除去債務の計上がなされますが、店舗閉鎖に伴い、引当金の計上対象となり得るその他の費用又は損失が見込まれる場合、具体的には店舗閉鎖に伴う賃貸借契約の中途解約違約金等の発生が見込まれる場合には、店舗閉鎖損失引当金を見積り、計上する実務が多く行われています。

外食産業

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