業種別会計
外食産業

第2回:外食産業における固定資産管理

2016.04.12
新日本有限責任監査法人 外食セクター
公認会計士 戸田 哲生 山﨑 祐史

第2回:外食産業における固定資産管理

外食産業において、店舗をどこに、どのような形態で、どの程度の規模で出店するかという出店時の投資意思決定は、同業他社との競争において非常に重要といえます。また、会計面においても、貸借対照表に占める固定資産の割合が大きく、会計上の論点が複数存在します。このため、本項では、固定資産及びその会計処理の特徴について解説します。

1. 外食産業の固定資産の特徴

外食産業は一般消費者を顧客としており、かつ、店舗で飲食サービスを提供するという特殊性から、固定資産には次のような特徴があります。

  • 主な固定資産は店舗及び店舗設備であり、店舗は直接所有するケース、テナントとして物件を賃借するケースがあります。
  • 多店舗展開を特徴としており、各地に点在します。店舗数は数店舗から数千店舗と多岐にわたります。

以上のような特徴から、管理面において次のような特徴が生じます。

  • 固定資産(店舗)のロケーションはそれぞれ離れており、相互依存関係が薄く、各店舗が投資意思決定の対象や資産管理の対象となります。
  • 新規出店や退店が頻繁に行われ、常にマーケットを意識した調査が求められます。
  • 既存店舗において、顧客ニーズに応じた頻繁な店舗内装のリニューアルが求められ、頻度の高い投資意思決定が求められます。
  • ②及び③の特徴から、店舗は居抜きでの購入や賃借が比較的多く、中古固定資産として適切な金額や単位による計上やその後の管理が必要となります。
  • テナント賃借による差入敷金・保証金が比較的多額となり、総資産の高い割合を占めます。

2. 外食産業の固定資産に関する会計処理の特徴

外食産業では、前述のような固定資産の特徴により、次のような会計処理の特徴が生じます。

(1) 減損会計

固定資産の減損会計基準に基づき、減損の兆候がある資産又は資産グループにつき、減損テストを実施し、減損損失の計上を検討します。検討の入り口である資産のグルーピングの決定につき、減損会計基準は他の資産又は資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位で行うとしています(減損会計基準二6.(1))。外食産業では、店舗ごとに継続的な収支管理がなされており、かつ、店舗間の相互補完性がない場合は、通常、各店舗がグルーピングの単位となります。また、複数店舗を一体として収支管理を行っている場合や複数店舗間に相互依存性がある場合は、一定のエリア(複数店舗)ごとをグルーピングの単位としているケースもあります。このように、外食産業では、他の業種に比べグルーピングの単位が非常に小さいといえます。従って、継続して赤字の店舗や閉店の意思決定をした店舗は減損の兆候ありとなり、減損損失計上の検討をする必要が生じるため、減損損失が発生しやすい業種であるといえます。

(2) 資産除去債務

資産除去債務の会計基準に基づき、テナントの賃貸借契約や定期借地契約において、当該テナントの内装(造作)や借地上に建設した自己の物件について契約により原状回復義務が要求される場合、資産除去債務の計上を検討する必要があります。資産除去債務を計上する場合、原則的には、当該資産除去債務を負債に計上し、これに対する除去費用の資産(固定資産)を計上します。ただし、賃貸借契約において敷金が計上されている場合には、当該敷金の回収が見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担分を費用化するという簡便的な方法も認められます(資産除去債務適用指針9)。

【設例】
×1年度期首より建物を賃貸借する契約を締結し、×1年度期首より賃借しています。当該建物にかかる5年後の原状回復費用を1,000円と見積っています。敷金は2,000円、割引率は3%、償却方法は定額法とします。

【原則的な処理の仕訳例】

×1年期首
(借)敷金 2,000 (貸)現金 2,000
(借)建物 863 (貸)資産除去債務 863※
※将来キャッシュ・フロー見積額1,000円÷(1.03)5

×1年期末
(借)減価償却費 173 (貸)減価償却累計額 173※
※863÷5年間

(借)利息費用 26 (貸)資産除去債務 26※
※863×3%

【簡便的な処理の仕訳例】

敷金2,000円のうち1,000円について原状回復費用に充てられるため返還が認められないと見積り、費用配分します。

×1年期首
(借)敷金 2,000 (貸)現金 2,000

×1年度期末
(借)敷金償却費 200 (貸)敷金 200※
※1,000÷5年間

外食産業では、店舗の内装につき大規模なリニューアルを実施した場合、退去時の原状回復費用の金額が変更されることがあるため、資産除去債務について、見積りの変更が必要となる可能性があります。また、投資意思決定の変更に伴い、賃借期間に変更が生じた場合、償却年数について、見積りの見直しが必要となる可能性があります。さらに、大手外食企業は、多店舗展開を図っていることから、多数の賃貸借契約を締結しており、かつ、頻繁に賃貸借契約の新規締結や更新を行うため、毎期、資産除去債務の網羅的な検討を行うことが望ましいと考えられます。

(3) 店舗閉鎖損失引当金

固定資産については、減損損失の認識の検討や資産除去債務の計上がなされますが、店舗閉鎖に伴い、引当金の計上対象となり得るその他の費用又は損失が見込まれる場合、具体的には店舗閉鎖に伴う賃貸借契約の中途解約違約金等の発生が見込まれる場合には、店舗閉鎖損失引当金を見積り、計上する実務が多く行われています。


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