業種別会計
食品・飲料メーカー

第4回:販売取引・購買取引・棚卸資産

2016.06.13
新日本有限責任監査法人 消費財セクター
公認会計士 中込佑介

1.販売取引と売上の会計処理

(1) 販売取引の特徴

食品メーカーにおいては、消費者へ直接販売を行う直売方式はまれであり、大体の場合が、卸店、特約店、代理店、販売子会社など、複雑な経路を通じて、小売業者に販売することが一般的です。複雑な流通経路を採用している点、直接の販売先(卸店、代理店等)と最終の販売者(小売業者等)が異なっている点が、この業界の大きな特徴です(図1)。また、信用力補完、与信リスク分散を目的として、大手商社が流通経路に介在する場合もあります。このような商流があることから、以下の点にも留意が必要です。

【図1 販売取引の例】

(※画像をクリックすると拡大します)

① 販売先と納入先の相違(物流と商流の相違)
複雑な流通経路をとるため、販売先と納入先が異なることが少なくありません。すなわち、販売先は卸店等になっているものの、物流は、メーカーの営業倉庫から二次卸店や小売業者等に直送される場合が多く見られます。
このように、物流と商流が異なっている場合の売上計上に際しては、物品受領書の回収確認等、製品が確実に直送先である二次卸店や小売業者等に受領されているかについて注意が払われます。

② 流通在庫
流通在庫とは、メーカーから出荷は行われたものの最終の販売者に製品が届いておらず、流通過程に存在している製品のことをいいますが、一般的には、卸店等が保有している在庫のことを意味することが多いと思われます。流通在庫に関しては、卸店や小売店などから販売実績データを入手し、自社の販売実績との比較により、流通在庫数量の把握・管理を行っていることが一般的です。
流通在庫は、メーカーからの出荷が完了しているため、卸店や代理店に所有権が移転しているのが一般的であり、在庫リスク(返品、破損リスクなど)については、基本的にメーカー側は負担しません。しかしながら、在庫リスクの負担関係については、契約等で別途取り決めがなされている場合もありますので、そのような場合には、売上高の計上や在庫の評価を慎重に行う必要があると考えられます。

③ リベートの発生
リベートは、ボリュームディスカウント、販売促進費、販売助成費、協賛金などの名目で支払われることが多く、さまざまな契約条件や算定根拠に基づいて支払われますが、主に以下のタイプがあります。

(a)基本リベート
あらかじめ契約で率を決めておき、一定期間の販売量や売上げに対して、契約に応じた金額を比例的に支払うものです。企業によって、量販リベート、CVS(コンビニエンスストア)リベートなど、さまざまな呼び方があります。

(b)達成リベート
ボリュームインセンティブとして、あらかじめ設定した売上目標を達成した場合に支払われるものです。

(c)その他
期間や商品等を限定した条件で支払われる拡売協力金、卸を通して小売業に販売する納入単価が低い場合等に卸の損失を補てんするための値差補償、物流センターを持っている量販等の仕分作業の費用であるセンターフィー、消費者が購入しやすい棚位置に製品を置くことを目的とした棚代など、名目や目的がそれぞれ異なる多様なリベートがあります。

(2) 販売取引の流れと会計処理

① 受注
卸店等からの受注形態は、オンラインシステム、Eメール、FAX、電話などさまざまですが、最近ではオンラインシステムによる受注が、取引金額の大半を占めるようになってきています。
得意先から受注をした場合、品名・納期などを確認し、営業倉庫に対する在庫確認、工場に対する生産スケジュール確認を行います。これらの確認により、受注品について出荷可能と判断されれば、受注が確定し販売システムで受注確定処理がなされます。同時に、営業倉庫に対して出荷指示を行います。売上高計上の会計処理はなされないものの、受注確定データが生成された段階で、売上高のデータがほぼ確定するのが一般的です。

② 出荷
出荷指示は販売システムで行われることが多く、営業倉庫では出荷指示を販売システムで確認し、卸店ごとに製品の積込を行っていきます。出荷準備が整えば、出荷確定処理がなされると同時に、出荷関係書類(出荷指示書、送り状、物品受領書など)を販売システムから出力し、製品出荷が行われることになります。

③ 売上計上
食品・飲料メーカーにおいても、売上計上基準は出荷基準の採用が多いようです。但し、業界慣行により検収基準や見なし着荷基準での売上計上を行っているケースもあります。出荷基準を前提とすると、出荷段階において、販売システム上で出荷データが生成され、この出荷データが会計データの基礎データとなります。従って、売上高計上は、販売システム上の出荷データが会計システムへ反映されることが一般的です。販売システムから会計システムへの反映は、日次で行われるケースや、月次で一括で行われるなど、会社によってさまざまです。

【図2 販売プロセスの例】

図2 販売プロセスの例

④ リベート計上
わが国のリベートについての会計処理は、財務諸表等規則ガイドライン72-1-2に、「一定期間に多額又は多量の取引をした得意先に対する売上代金の返戻額等の売上割戻は、売上値引きに準じて取扱いものとする」との定めがあるのみです。このため、わが国の実務上は、リベートの内容によって売上高から控除する処理と販売及び一般管理費とする処理の双方が行われています。決算時期においては、請求書等の到着によりすでに確定し把握されているリベートについては未払計上され、期末時点でリベートを請求書等で把握できない場合には、リベート条件に基づき決算までに発生しているリベートの合理的な見積りを行い、引当金等の負債計上が必要となります。

2.購買取引と売上原価の会計処理

(1) 購買取引の特徴

大量生産・販売を行う食品・飲料メーカーにおいては、原材料等の調達に際して、大量発注によるコストダウンと高品質品の安定的調達が重要な課題となります。

① 組織構造
販売-生産-発注に密接な連携を持たすことで、適正在庫量を確保し、販売機会の逸失、過剰在庫による不良在庫の発生等を防止するような組織構造が採用されることが一般的です。

【図3 組織構造の例】

図3 組織構造の例

② 購買方法

A)集中購買方式の採用
この方式は、各工場で共通して使用する原材料を本社で一括して購入する、また関係会社間で共通する原材料を親会社で一括して購入することにより、購入先から有利な条件を引き出すことを目的として行われます。

B)大量発注・分割納入方式の採用
この方式は発注先の製造能力、品質等を勘案し、1~2社に発注先をしぼり、納入先とのパイプを太くするなど、取引関係を密接にし、価格、納期、サービス面で有利な扱いを受けるために大量に発注しますが、納品は保管能力、資金の問題などから分散して行う方式です。

C)購買先の系列化
この方式は、購買のための子会社、関連会社の設立、あるいは購買先に対する資本参加、役員の派遣、資金援助などにより行われます。

③ 特殊な仕入方式

A)使用高検収
この方式は、あらかじめ購買先から原材料等について積送を受け、預かっておき、現場での使用の都度、使用高について検収と見なして仕入計上を行う方式です。使用高検収による仕入計上に際しては、以下の点に注意が払われます。

  • 未使用物品の管理(在庫リスト、保管場所等)
  • 実地棚卸の取り扱い

B)預け品
この方式は、原材料等を預け先に預けたまま仕入計上を行う方式です。預け在庫の仕入計上に際しては、以下の点に注意が払われます。

  • 預け品仕入を行うことの経済合理性
  • 証憑書類(注文書、売買契約書、預かり証等)の完備
  • 預け品仕入を行うことの経済合理性
  • 現物管理状況(在庫証明、棚卸立会による現品保管状況の把握等)

C)外注加工
この方式は、外注先に対して、原材料等を支給し、加工を行わせたものを仕入れる方式ですが、支給を有償で行うか、無償で行うかにより、注意が払われるポイントが異なります。

D)代価未確定仕入
代価未確定仕入とは、納品・検収段階で価格が未確定の仕入れのことをいいます。この方式は、新原材料等の採用時や、仕入価格の改定時に行われることが多いと思われます。代価が未確定の場合には、見積もりによる暫定価格を用いて仕入計上する方法が実務上多く見られます。暫定価格による仕入計上に際しては、以下の項目に注意が必要です。

  • 暫定価格の合理性(類似品の価格、期末の市場価格等を検討)
  • 購入代価確定時の差額の配賦処理(売上原価、棚卸資産)

(2) 購買取引の流れと会計処理

購入された原材料等は、工場で受入がなされます。受入の際には、発注書控、納品書等と原材料等の現物を照合し、受入日付を明らかにした検収報告書を作成することが一般的です。これにより、誤納品や数量過不足を防止し、生産スケジュール等に支障が生じないようにしています。同時に、検収漏れによる債務計上漏れ等を防止する効果もあります。一般的には図4に示すような形で表せます。

【図4 購買プロセスの例】

(※画像をクリックすると拡大します)

① 発注
通常であれば、発注が行われた原材料等については、すべて引き取りが行われて、検収-仕入計上が行われますが、製品仕様の変更などにより、発注を行ったすべての原材料等が検収されない場合があります。この場合、発注在庫の引取責任を会社が負っている場合が多く、会計上も手当てが必要になります。

② 仕入計上
食品・飲料メーカーにおいては、実務上、仕入計上基準は検収基準の採用が一般的であると考えられます。図4でいえば、納品・検収段階において、購買システム上、購買データが生成されます。購買システムから会計システムへの反映は、日次で行われるケースや、月次で一括で行われるなど、会社によってさまざまです。

3.在庫管理と棚卸資産の会計処理

(1) 棚卸資産の特徴

食品・飲料メーカーにおける棚卸資産の大きな特徴は、賞味期限があることと、消費者ニーズの変化の影響を敏感に受けやすいことにあると考えられます。

(2) 在庫管理と会計処理

ここでは、在庫管理と密接に関係してくる会計処理である在庫評価について、特徴的なものについて取り上げます。

① 過剰在庫(製品)
消費者ニーズの変化を敏感に受けるために、結果として過剰在庫が発生する可能性があります。
回転の速い定番品であれば、生産調整等で対応するため、在庫評価について比較的問題が生じないことが多いと思われます。
他方、新製品の投入や製品の急な製品仕様の変更の場合には、生産調整で対応できず、従来品が過剰在庫となり、在庫評価の問題が生じてくる場合があります。
このような場合には、以下のような対応が行われることが一般的です。

A)販売可能性の検討
販売計画の再検討の結果、通常の価格での販売が困難と判断された場合、値引販売や販売リベート付与の検討が行われます。

B)処分計画の検討
値引販売等を検討しても販売可能性が低いと判断された場合には、廃棄処分が検討されることになります。

C)評価損計上(簿価切下)
販売可能性の検討や処分計画の検討により、収益性の低下が認められた場合、回収可能価額(正味売却価額、処分見込額)まで簿価切り下げが行われます。

② 流通在庫(製品)
流通過程に存在している在庫(流通在庫)については、一般的には所有権がメーカーから卸店等に移転している場合が多いと考えられます。しかしながら、メーカーと卸店等との契約内容によっては、メーカーが在庫リスクを負担する可能性もあるため、流通在庫が過剰となっている場合には、評価損計上(簿価切下)の検討が必要になる可能性があります。この場合、販売先との在庫リスクの負担関係について注意が払われることになります。

③ 発注残管理(原材料等)
発注が行われた原材料等についても、新製品の投入や製品仕様の変更などにより、従来品の通常の方法による販売可能性が低くなった場合には、いったん、仕入計上を行った後に、評価損計上(簿価切り下げ)など、状況に応じた適切な会計処理の検討が必要になる可能性があります。特に、包材(パッケージなど)に関しては、製品の仕様変更、終売などが発生すると、ほぼ利用可能性がなくなるので、注意が必要となります。

④ 見本品、自家使用による利用
食品メーカーの製造する商品は、卸売・小売を通じて消費者に供給されるほかに、見本品として小売店に提供したり、社内で消費することもあります。見本品、自家消費された製品は売上原価にはなりませんので、通常、売上原価の計算過程で他勘定振替がなされ、販売促進費や福利厚生費などとして処理されるものと考えられます。

(3) 棚卸資産の評価に関する会計基準との関係

食品・飲料メーカーにおいてもこの基準の適用による影響は生じてくると予想されますが、以下に示すような理由により、評価検討の対象となる在庫は、他業種と比較して少ないのではないかと予想されます。

(ア)食品業としての特性
食品を扱う特性上、食の安全性の観点から、通常在庫の回転期間が早いことが多いので、収益性の低下の検討が必要になる品目は、比較的少なくなると予想されます。

(イ)製品の違いによる影響の違い
前述のとおり定番品については、生産調整等により、収益性の低下を防止する施策が行われることが予想されます。他方、新製品の投入等により、従来品については、収益性の低下による評価損計上(簿価切り下げ)の検討が必要になる可能性があります。

(ウ)廃棄損と評価損との関係
賞味期限の存在により、食品・飲料メーカーでは、包材等を除き長期間保管できない棚卸資産が大半を占めます。このため収益性の低下の検討が必要な品目があったとしても、先立って廃棄検討が行われることが多いと考えられます。
廃棄検討がなされ、会計上廃棄損として処理された場合、従来は営業外費用として処理される実務が多く見られましたが、これは通常、収益性の低下から生じたものであると考えられるため、本会計基準の適用により、売上原価計上が必要になることに留意する必要があります。


食品・飲料メーカー

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