業種別会計
電気事業

第5回:電気事業における収益認識

2021.06.03
EY新日本有限責任監査法人 電力・ガスセクター
公認会計士 大槻昌寛

1. 電気事業における収益認識の論点

電気事業では、段階的に自由化が進められてきました。それに伴い、従前の電気事業者に加え、多くの新たな事業者が市場に参入しています。また、従来の事業領域を超えた財又はサービスの提供や、他産業との連携も行われています。

このような状況で企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下、「収益認識基準」という。)が適用され、既存の取引も含め、取引内容の再検討、基準の解釈と当てはめが、新たに要求されます。以下、収益認識基準が適用された状況を前提に、一般的な論点について解説します。

2. 履行義務への取引価格の配分

電気事業は、段階的に自由化が進められてきており、複数のエネルギー(例えば、電力とガス)を一体的に供給する場合があります。また、エネルギー供給と他のサービス(例えば、通信や機器保守サービス)を一体的に提供する場合もあります。さらに、複数のサービスを提供する場合には、それぞれのサービスを個別に提供する場合に比べ、割安な価格で提供することもあります。

上記のようなケースでは、一つの契約に複数の履行義務が含まれるため、当該履行義務への取引価格の配分が必要になります(収益認識基準第65項、第66項、第68項)。

なお、契約における財又はサービスの独立販売価格の合計額が当該契約のセット販売価格を超える場合には、契約における財又はサービスの束について値引きを行っているものとして、原則として、全ての履行義務に対して比例的に配分しなければなりません(収益認識基準第70項)。

設例

[前提条件]

  • A社は、電力供給と通信サービスを提供しており、両者は別個の履行義務である。それぞれを単独で提供する場合の価格は、電力供給は120であり、通信サービスは60である。これらは、独立販売価格とする。
  • A社は、電力供給と通信サービスを一括でも提供している。一括契約の場合には、通信サービスの提供価格を10%減額する。当該値引きは、特定の履行義務に配分すべきものではない。
  • 簡便化のため、電力供給と通信サービスの料金は固定金額とする。

[解説]

  • 電力供給と通信サービスは別個の履行義務であるため、両者に係る取引価格を、独立販売価格の比率に基づき配分する。
  • 通信サービスの提供価格に関する10%の値引きは、電力供給と通信サービスに比例的に配分される。
  契約価格 独立販売価格 配分結果
電力供給 120 120 116※2
通信サービス 54※1 60 58※3
174 180 174
  • ※1 54=60×(1-10%)
  • ※2 116=契約価格174×(120÷独立販売価格の合計180)
  • ※3 58=契約価格174×(60÷独立販売価格の合計180)

3. 検針日基準

電気事業は、契約期間にわたり、継続的に電力供給を行っています。顧客は、その需要に応じて電力を使用できますが、使用量を特定し料金を算定するためには、計量器の検針により使用状況を把握することが必要となります。

毎月の検針方法には、必ず月末に行う場合(月末検針)と、地域等の区分ごとに設定された月末以外の日程により行う場合(分散検針)があります。現行のわが国における実務では、分散検針であっても、検針日基準※4が、多く採用されてきました。

収益認識基準では、企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて顧客が便益を享受する場合など、一定の期間にわたり資産に対する支配が顧客に移転する取引については、一定の期間にわたり売手としての履行義務を充足し、収益を認識するとされています(収益認識基準第35項、第38項(1))。

収益認識基準第35項の定めに従って収益を認識するには、決算月に実施した検針の日から決算日までに生じた収益を見積る処理が必要となります。しかし、そのような処理を行うことは実務的に困難であるとして、電気事業連合会と一般社団法人日本ガス協会から、検針日基準を代替的な取扱いとして認めることが要望されていました。これに対して企業会計基準委員会は財務諸表間の比較可能性の観点から検針日基準による収益認識は認められないと判断し、代わりに2021年3月26日に見積り方法について代替的な取り扱いを定める企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下「収益認識適用指針」という。)の改正を公表しました。

改正後の収益認識適用指針では、使用量の見積りについて、決算月の月初から月末までの送配量を基礎として、その月の日数に対する未検針日数の割合に基づき日数按分により見積ることができるとされています。また、単価の見積りについては、使用量等に応じた単価ではなく、決算月の前年同月の平均単価を基礎とすることができるとされています(収益認識適用指針第103-2項)。

なお、旧一般電気事業者(みなし小売電気事業者)は、小売料金の規制が残る経過措置期間においては、電気事業会計規則の適用を受けます(電気事業会計規則附則(平成28年3月30日経済産業省令第50号)第3条)。同規則では、別表第1(16)営業収益において「調査決定の完了した金額を計上する」ことと規定されています。そのため、旧一般電気事業者は、経過措置期間においては、従前の検針日基準を適用するものと考えられます。

  • ※4 検針日基準:毎月、月末以外の日に実施する検針による顧客の使用量に基づき収益の計上が行われ、決算月に実施した検針の日から決算日までに生じた収益が翌月に計上される方法(収益認識適用指針第176-2項)

4. ポイントプログラム

電気事業でも、利用料に応じたポイントを提供するなど、ポイントプログラムを導入することがあります。特に、自由化に伴う競争環境の中では、ポイントの付与を通じて顧客を囲い込むことが考えられます。

当該ポイントが、将来の財又はサービスの提供に際して値引きを受けられるものであるなど、顧客に重要な権利を提供するものである場合、ポイントの付与時点では収益を認識せず、当該ポイントの利用に伴い財又はサービスが移転する時、あるいは当該ポイントが消滅する時に収益を認識します(収益認識適用指針第48項)。

なお、企業が代理人として他社のポイント制度を利用する場合、付与する他社のポイントに相当する金額は、当該他社のために回収する金額であるので、売上計上金額からは除外し、当該他社に対する債務を計上します(収益認識基準第8項)。

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