業種別会計
電気事業

第4回:特殊な会計処理

2017.12.20
新日本有限責任監査法人 電力・ガスセクター
公認会計士 秋野泰佑/髙松亮祐/平岡智広

1. 減価償却

(1) 減価償却の種類

電気事業における減価償却費は、規則別表第1において、普通償却費、特別償却費、試運転償却費に区分して整理することが定められています。

(2) 普通償却費

電気事業固定資産の減価償却は現状、多くの場合、定率法が採用されています。ただし、送電・配電・業務設備の一部の資産については、取替法が採用されています。

(3) 特別償却費

特別償却とは、租税特別措置法に規定される特別償却(一時償却及び割増償却)のことであり、法人税法上、一定の要件を満たす企業が通常の減価償却とは別枠で償却することを認める制度です。特別償却は産業の振興など政策的な見地から設けられたものであり、その趣旨から非常に多くの種類があります。

特別償却費の会計上の取扱いについては「減価償却に関する当面の監査上の取扱い(監査・保証実務委員会報告第81号)」において、「租税特別措置法に規定する特別償却(一時償却及び割増償却)については、一般に正規の減価償却に該当しないものと考えられる」と定められています。よって、一般事業会社においては通常、特別償却費は減価償却費として費用処理されるのではなく、剰余金処分方式による会計処理がなされるものと考えられます。

一方、電気事業者においては、前述のとおり、規則において特別償却費も減価償却費に含まれると定められていることから、会計上も減価償却費として費用処理がなされます。

【図表9:特別償却の仕訳例】

一般事業会社の仕訳例

(借) 減価償却費 300
(普通償却分)
(貸) 減価償却累計額 300
(普通償却分)
(借) 繰越利益剰余金 100
(特別償却分)
(貸) 特別償却積立金 100
(特別償却分)

電気事業者の仕訳例

(借) 減価償却費 400
(普通+特別)
(貸) 減価償却累計額 400
(普通+特別)

2. 資本的支出と収益的支出

固定資産に関する支出を通常、新設・増設の場合には資本的支出として、改修・修繕の場合には収益的支出として処理すべき点は、一般事業会社と電気事業者において同様の取扱いとなります。電気事業者においては、資本的支出に関連して、次の点で一般事業会社と異なります。

一般事業会社においては、付加・取替の場合に資本的支出と収益的支出のいずれに分類するかについて、固定資産の価値を高めたり、耐久性を増したりするかどうかという実態判断に照らして分類されます。

電気事業者においては、この点さらに資産単位物品表に挙げられている物品か否かという明確な水準に照らして分類されます。これは、固定資産に関する支出の実態判断に当たって、恣意(しい)性を排除するためです。これを逆の観点から捉えると、資本的支出として処理すべき一定単位の物品を取りまとめたものが、資産単位物品表ということになります。

電気事業者における資本的支出と収益的支出の判断について、まとめると図表10のようになります。

【図表10:電気事業者における資本的支出と収益的支出の判断】

支出の例 資産単位物品 非資産単位物品
新設・増設 資本的支出
付加・取替 資本的支出(例外:収益的支出) 収益的支出(例外:資本的支出)
改修・修繕 収益的支出

3. 固定資産仮勘定

(1) 固定資産仮勘定の種類

固定資産仮勘定として整理されるものには、建設仮勘定、除却仮勘定、原子力廃止関連仮勘定などがあります。建設仮勘定には、一般事業会社同様、使用開始前の設備に係る支出が整理されます(規則第5条)。除却仮勘定には、設備が停止してから除却完了するまでの間、当該設備の帳簿価額が整理されます(規則第20条)。

設備の建設だけでなく除却においても、稼動停止から設備の除却完了までに長期間を要し、仮勘定の整理を要するという点に、電気事業の特徴があります。

(2) 建設仮勘定

  • 建設仮勘定の種類
    建設仮勘定は、建設準備口と建設工事口に細分されます(規則別表第1)。建設準備口には、工事の実施が決定する前における支出(調査費用など)が整理されます。建設工事口には、工事の実施が決定した後の、当該工事に係る支出が整理されます。
    すなわち、工事計画など着手段階においては、建設準備口に支出を整理し、監督官庁(経済産業省)の認可を受けるなど工事の実施が確定した段階で、建設準備口から建設工事口への振替が行われることとなります。
  • 建設仮勘定から設備勘定への振替
    建設仮勘定から設備勘定への振替方法については、事業法第5条に規定されています。基本的に、設備の使用を開始したときに振替が行われますが、使用開始時点における状況によって、図表11のように処理方法が区分されます。

【図表11:建設仮勘定の振替】

【図表11:建設仮勘定の振替】

図表11において、落成とは建設工事が完了することをいい、精算とは前述した総係費の集計・配賦など関連費用の計算まで完了することをいいます。

設備勘定に振り替えるタイミングとは、言い換えれば、減価償却計算を開始するタイミングであり、適正な損益計算のために重要です。

(3) 除却仮勘定

固定資産の除却に係る費用を固定資産除却費といい、除却損と除却費用に区分されます(規則別表第1)。除却損には、固定資産の帳簿価額から、庫入価額(別の用途に転用されるため貯蔵品等に振り替えられる部分)を控除した額が整理されます。除却費には、除却のための工事に要した額が整理されます。

電気事業における除却処理の特徴的な点は、期中に資産を除却した場合の減価償却費の取扱いです。一般事業会社では、期首から除却時点までの減価償却費を計上しますが、電気事業者においては、月割りの減価償却費を計上せず、当該資産が除却された事業年度の直前の事業年度までの金額により除却処理することと定められており(規則第16条)、実質的に期首に除却が行われたものと見なし、会計処理をします。

ただし、電気事業者においては、除却損・除却費用は、ともに固定資産除却費として営業費用の区分に計上されるため()、前述の相違が営業損益に与える影響はありません。

(4) 原子力廃止関連仮勘定

この他、規則には、原子力廃止関連仮勘定という原子力発電事業特有の勘定があります。以下については、経済産業大臣への承認申請などを踏まえ、原子力廃止関連仮勘定として計上することが認められています。

  • 原子炉を廃止する場合、当該原子炉に係る原子力発電設備(廃止措置資産及び資産除去債務相当資産を除く)、当該原子力発電設備に係る建設仮勘定及び当該原子炉に係る核燃料の帳簿価額
  • 原子炉の廃止に伴って生ずる使用済燃料の再処理等の実施に要する費用及び核燃料の解体に要する費用

4. 地役権

地役権とは、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利をいいます(民法第280条以下)。例えば、電気事業者が有する地役権には、他人の土地の上に送電線を敷設することができる線下地役権があります。

会計上、このような地役権は法律上の権利として保全されていることから、償却計算される性格のものではないという考え方もあります。しかし、地役権は送電設備と一体として利用されるため、その使用期間に応じて減価償却を行うことが、適正な期間損益計算の観点から合理的であるとの考え方により、送電線と同じ耐用年数により減価償却計算がなされます。

5. 特別法上の引当金

渇水準備引当金

特別法上の引当金とは、公益性の観点から、その計上が特別の法令で強制される、いわゆる利益調整型の引当金であり、開示上、当該年度の残高及び変動額を独立区分表示します。また、その引当根拠条文を会計方針として記載します。

例えば、この引当金の一つに渇水準備引当金があります。渇水準備引当金とは、河川流量の増減によって生じる電気事業者の損益の変動を防止するため、電気事業法等の一部を改正する法律(平成26年法律第72号)附則16条3項の規定により、なおその効力を有するものとして読み替えて適用される同法1条の規定による改正前の事業法第36条により、渇水準備引当金に関する省令に基づき、計上が義務付けられている引当金です。

その会計処理は次のようになります。

【図表12:渇水準備引当金の積立てまたは取崩し】

渇水準備引当金

*事業法の規定により経済産業省令に基づき計上

雨量が多い(省令の定める発電量を超える) 雨量が少ない(省令の定める発電量を下る)
発電コスト低下 発電コスト上昇
利益が増える 利益が減る
引当金の積立て 引当金の取崩し

6. 原子力発電

(1) 使用済燃料に関する再処理等に関する会計処理の変遷

従来、原子力発電事業者は、将来の再処理等に係る費用として、使用済燃料再処理等引当金及び使用済燃料再処理等準備引当金として負債に見積計上してきました。また、使用済燃料再処理等引当金に計上されている費用相当分については外部積立てを行い、当該積立額は使用済燃料再処理等積立金として資産計上してきました。

その後、平成28年10月に、電力自由化後も使用済燃料の再処理等を着実に実行することなどを目的として、従来の積立金制度から新しく拠出金制度へと移行しました。

この制度の変更に伴い、従来の使用済燃料再処理等引当金及び使用済燃料再処理等積立金の残高は、すでに取り崩されています。従来の使用済燃料再処理等準備引当金についても、使用済燃料再処理機構に支払うことになり、引当金を取り崩す処理がなされました。

(2) 原子力発電施設解体引当金(資産除去債務)

原子力発電については、発電を開始することにより、運転終了後の廃止措置が義務として課されます。発電と廃炉は一体の事業とみることができるという理解の下、廃炉についても事業と捉えた上で、円滑な廃炉ができるように、電気事業会計特有の会計処理が規則等に定められています。

その会計処理の一つに、原子力発電施設解体引当金があります。原子炉等の原子力発電施設については、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律において、除去する際に講ずるべき措置が義務付けられています。当該義務は、除去に関しての法律上の義務に準ずるものとして、資産除去債務に関する会計基準の適用対象となります。そのため、原子力発電施設解体引当金は、資産除去債務の一部として処理されています。

従来、原子力発電施設解体引当金の引当方法については、総見積額を発電実績に応じて費用計上する方法(生産高比例法)で計上していました。ただし、東日本大震災以降、原子力発電の再稼働が長期化している影響により、廃炉会計制度上、平成25年10月から定額法にて算定しています。その期間については、運転期間40年から安全貯蔵期間10年を加えた50年としています。


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