業種別会計
電気事業

第2回:電気事業ビジネスの特徴と流れ

2017.12.20
新日本有限責任監査法人 電力・ガスセクター
公認会計士 秋野泰佑/髙松亮祐/平岡智広

1. 電気事業ビジネスの特徴

(1) 設備産業であること

電気事業は、電気を供給するために発電設備や流通設備といった膨大な固定資産を必要とする、典型的な設備産業です。ゆえに、その建設や更新には多額の設備投資が必要となり、同時に、当該設備投資のため巨額の資金調達が必要となります。

(2) 公益事業であること

電気事業は、電気という日常生活、産業活動に不可欠な生活インフラを供給する、公益事業の性格を有しています。ゆえに、一般送配電事業者の託送料金設定等に際して監督官庁への届出・認可が必要であったり、採算が取れない辺地に対しても法律によって電気の供給義務を負ったりするなど、事業活動に制約を受けます。

(3) 製品の貯蔵が困難であること

電気は物理的に貯蔵することができません。近年、燃料電池などの研究も進められていますが、基本的に電気事業者が販売する電気は生産されると即時に消費されます。ゆえに、需要が少ない時に作りためておいた電気を、需要が多い時の供給に充てることはできません。

2. 電気事業のビジネスの流れ

(1) 長期計画

電気の供給を安定的かつ経済的に行うために、電気事業者は次のような種々の計画を総合的な観点から立案します。

a. 電力需要想定

販売製品である電気の需要予測は、後述する諸計画の基礎となります。電気事業における需要予測は、他の一般事業会社における需要予測のように特定の産業、商製品を対象とするものではなく、GDPなど経済全体を対象としたマクロ予測の性格を有する点に特徴があります。

b. 電力供給計画

想定した電力需要に対応して、どのように電気を供給するかを計画します。具体的には、需要を満たす供給を確保できる範囲で最も経済的な供給ができるよう、水力、火力、原子力などの最適な電源の組み合わせを計画したり、設備の補修をいつ実施するかを計画したりします。電気事業者においては、事業法の定めにより、毎年度、当該年度以降経済産業省令で定める期間について計画を作成し、当該年度の開始前に電力広域的運営推進機関※を経由して経済産業大臣に届出をすることが義務付けられています(事業法第29条第1項)。

※電力広域的運営推進機関
電力システム改革の第1弾として、平成27年4月に発足した機関です。全国規模での平常時・緊急時の需給調整機能の強化、中長期的な安定供給の確保、電力系統の公平な利用環境の整備などの役割を担っています。

c. 電源開発計画

電力供給計画に基づいて、いつ・どこに・どのような形式の発電所を建設するかを計画します。電源は水力、火力、原子力など、おのおの特徴を有しています。

d. 送変配電設備計画

発電された電気は、送電・変電・配電というプロセスを経て需要家に到達します。電源から、どのように流通させるかを計画することも重要です。

e. 資金計画

多額の設備投資を行うためには、多額の資金を必要とするため、その資金調達計画も重要です。

(2) 燃料調達

a. 国内石炭から石油への移行

火力発電の黎明(れいめい)期においては、国内石炭による発電が、その中心的役割を果たしてきました。しかし、中東における石油産出量の増加や、運搬技術の発達により、昭和35年ごろを境に、その中心的役割は石炭から石油へと移行することとなりました。

b. 海外石炭の導入

昭和45年ごろから、石油危機による原油価格の高騰により、石油の経済優位性が失われました。これを機に海外石炭の導入が進められ、昭和55年ごろから、安価で埋蔵量も豊富な海外石炭が再び石油に取って代わることになりました。

c. 液化天然ガス(LNG)の導入と拡大

昭和45年ごろから、LNGの輸入が開始されました。LNGは他の化石燃料に比してクリーンなエネルギーであり、地球温暖化問題への対応としても重要なエネルギーです。アラスカ、インドネシア、マレーシア、オーストラリア、カタールなど供給国も多く、今では石油代替エネルギーの中心として位置付けられています。また近年、天然ガスの一種であり、泥岩に貯留されているシェールガスが注目を集めています。

d. 各エネルギーの課題

石油、石炭、LNGの各エネルギーには、それぞれ次のような課題があります。

石油は発電用に限らず、わが国の一次エネルギーとして重要な位置を占めていますが、中東依存度が高く、安定供給の面で課題があります。

石炭は埋蔵量が豊富で安定供給が見込めますが、他の化石燃料に比して環境負荷が高いという課題があります。

LNGは環境負荷が低く、クリーンエネルギーとして導入拡大が促進されていますが、世界的に需要が高まる見通しであり、安定供給をいかに確保していくかという課題があります。

(3) 発電

【図表2】

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【図表2】出典:資源エネルギー庁「長期エネルギー需給見通し」

出典:資源エネルギー庁「長期エネルギー需給見通し」7ページ

a. 電源の種類

平成26年に閣議決定された「エネルギー基本計画」では、電源は次の三つに位置付けられています。また、将来における電源構成の在り方として、図表2が示されています。

  • ベースロード電源
    発電(運転)コストが低廉で、安定的に発電でき、昼夜を問わず継続的に稼働できる電源をいい、地熱、水力、原子力、火力が、これに該当します。
  • ミドル電源
    発電(運転)コストがベースロード電源の次に安価で、電力需要の動向に応じて、出力を機動的に調整できる電源をいい、天然ガスが、これに該当します。
  • ピーク電源
    発電(運転)コストは高いが、電力需要の動向に応じて、出力を機動的に調整できる電源をいい、石油、揚水式水力が、これに該当します。

b. 水力発電

水が高い所から低い所へ落ちるエネルギーによって水車を回して発電する方法です。水の利用面・構造面から図表3のように分類されます。

【図表3:水力発電の方法】

(a)利用面による分類
  • 貯水池式
  • 調整池式
  • 流れ込み式
  • 揚水式
(b)構造面による分類
  • ダム式
  • 水路式
  • ダム水路式

c. 火力発電

石炭、石油、ガスなどの燃料を燃焼させて得られる熱エネルギーを利用する発電方法であり、次の三つに大別されます。

  • 汽力発電
    燃料を燃焼させて発生する熱を利用して、ボイラーで発生させた蒸気でタービンを回すことで、発電機を回転させて発電する方式をいいます。この方式が火力発電の主流であり、通常、火力発電というと、この汽力発電を指します。
  • 内燃力発電
    燃料を燃焼させて発生するガスの膨張力を利用して、直接、発電機を回転させて発電する方式をいいます。ガスエンジン、ディーゼルエンジンが該当し、離島などの小規模発電所においては、この仕組みが用いられています。
  • コンバインドサイクル
    前述の二つの方式を複合させた発電方式であり、一つのエネルギーから二重、三重に発電できる効率的な仕組みです。現在の火力発電所では、このコンバインドサイクルに基づく発電方式が主に採用されています。

d. 原子力発電

燃料ウランなどの核燃料が核分裂する時に発生する熱を利用して、ボイラーで発生させた蒸気でタービンを回すことで、発電機を回転させて発電する方式です。

(4) 流通

電気が流通する仕組みは図表4のとおりです。

【図表4】

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出典:資源エネルギー庁ウェブサイト「電力供給の仕組み」

出典:資源エネルギー庁ウェブサイト「電力供給の仕組み」

a. 送電

発電所で発電された電気は、変電所へ運ばれます。この発電所と変電所、または変電所同士を結ぶ電線路を送電線といいます。送電線には、地上の鉄塔などを利用する送電容量が大きい架空送電線と、地中の共同溝などを利用して風雪の影響を受けない地中送電線があります。

b. 変電

発電所で発電された電気は高圧であるため、工場や一般家庭で使用できる電圧に変換する必要があります。この電圧変換のことを一般的に変電といい、これを行うところを変電所といいます。

c. 配電

一般的に変電所から需要家へ電気を供給することを配電といい、変電所と需要家を結ぶ電線を配電線といいます。

(5) 料金計算の特徴

平成28年4月から、低圧電力、電灯も含めた電気の小売全面自由化が開始され、全面的に電気料金について、各事業者が自由に設定できることとなりました。ただし、旧一般電気事業者の小売部門(みなし小売電気事業者)から特定需要部門(低圧電力、電灯の需要家)への電気料金については、環境激変を緩和し、需要家保護を図る観点から、経過措置として、少なくとも平成32年までは自由化前と同様の規制料金メニューの提供が義務付けられています。また、一般送配電事業者が行う託送供給等は、電力の安定供給および公共インフラとしての公平性の維持のため、引き続き料金規制がなされています。

a. 自由化料金

自由化料金は、需要家と事業者との交渉により自由に決められる仕組みとなっています。現在は、例えば携帯電話とのセット割引がある料金メニューなど、さまざまな電気料金メニューを設定しており、需要家の選択肢が広がっています。

b. 規制料金

規制料金(みなし小売電気事業者の特定需要部門に対する電気料金、および一般送配電事業者が設定する託送料金等)は、事業法によって規制されており、その特徴は次のとおりです。

  • 認可または届出制
    規制料金については、電気事業者が自由に決めることはできず、経済産業大臣の認可(値下げの場合は届出で足りる)が必要です。
    これは、独占的な地位を利用した高い料金が設定されることを避けるとともに、需要者相互の公平な取扱いを損ねないよう、電気料金の透明性および公平性を確保するために規定されたものです。
  • 総括原価方式
    電気料金は、電気の提供に必要と見積もられる原価に、一定の利潤を加えて算定されます。これを総括原価方式といいます。
  • ヤードスティック査定
    他の電気事業者の電気料金と比較した結果、事業の効率化が不十分であると経済産業省に査定された場合には、総括原価方式において見積もられた原価が減額され、結果として電気料金も減額されます。これをヤードスティック査定といいます。

c. 再生可能エネルギー発電促進賦課金

平成24年7月から、再生可能エネルギーの普及促進を目的に「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」(FIT制度)が開始されました。当該制度は、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスといった再生可能エネルギーで発電した電気を、電気事業者が一定価格で買い取ることを国が約束する制度です。買取費用については再生可能エネルギー発電促進賦課金(以下、賦課金)として、電力料金を通して全ての需要家に負担してもらう仕組みです。賦課金は、賦課金単価に使用電力量を乗じて算定され、毎月の電気料金に加算して徴収されます。なお、賦課金単価は、年度の再生可能エネルギー買取費用の見込額を基に毎年、見直されます。

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