業種別会計
化粧品・トイレタリー業界

第2回:収益認識に関連する取引慣行及び会計処理の特徴

2016.06.08
新日本有限責任監査法人 消費財セクター
公認会計士 大和田慎介

1.はじめに

第1回では、化粧品・トイレタリー業界の範囲と各種流通システムについて解説しました。第2回では、化粧品・トイレタリー業界の特徴的な論点について、以下の順番で解説します。

第2回:収益認識に関連する取引慣行及び会計処理の特徴
  • リベート等に係る取引慣行及び会計処理
  • 返品に係る取引慣行及び会計処理
  • ポイント制度に係る取引慣行及び会計処理

なお、文中の意見に関する部分は、私見であることをお断り申し上げます。

2.リベート等に係る取引慣行及び会計処理

(1)リベート等に係る取引慣行

リベートは売上割戻とも呼ばれ、一定期間に多額又は多量な取引をした小売業者や卸売業者に対してメーカー側が売上代金の返戻を行うことを指します。化粧品・トイレタリー業界ではよく見られる取引慣行です。

リベート金額の算定は、売上高又は売掛金の回収高に一定の料率を積算するなど、事前に契約等で定められた算式に基づいて行われます。また、その決済方法としては、直接金銭を支払う方法や売掛金と相殺する方法などが一般的です。

上記の他、得意先に対して自社の製品の販売促進を図るために、 販売奨励金や拡販費、販売促進費等として金銭を交付するケースもあります。この場合は、売上高又は売掛金の回収高といった基準によらず、営業政策上の観点から、得意先の営業地域の特殊事情や現在までの得意先の貢献度合い等を勘案して交付金額が算定されます。本稿では、これらの交付金も「リベート等」の範囲とします。

(2)リベート等に係る会計処理

各メーカーによってリベート等の支払目的についての多様な理解の仕方があり、リベート等に係る会計処理の現行実務においては、売上高から控除する処理と販売費及び一般管理費として処理する場合の両方が行われています。

現在日本にはリベート等に係る個別の会計基準が存在しないため、個々のリベート等に係る会計処理は、取引条件等からその支出の実態に応じて、売上高から控除するか販売費及び一般管理費として処理するかを個別に判断します。

① 売上高から控除する処理
リベート等が販売価額の一部減額や売上代金の一部返金という性格を有しているのであれば、売上高から控除すべきと考えられます。

(リベート確定時)

(借) 売上高 ○○ (貸) 売掛金 ○○

なお、リベート等の条件には様々なケースが存在するため、期末時点で最終的なリベート金額が確定していない場合もあります。この場合、金額を合理的に見積ることが可能であれば、引当金として計上することになると考えられます。この際に、当該引当金については、対価である売掛金等の売上債権から控除して表示されることが一般的ですが、売買契約上の金額をもって売掛金等の売上債権を表示し、当該引当金は売上割戻引当金等として、負債性引当金に表示されている場合もあります。

② 販売費及び一般管理費とする処理
リベート等が販売価額の一部減額や売上代金の一部返金などではなく、得意先における販売促進費等の経費の補填としての性格を有している場合は、販売費及び一般管理費として処理すべきと考えられますが、金額未確定で、合理的な見積りが可能であれば、やはり引当金として計上することになります。

(リベート確定時)

(借) 販売費及び一般管理費 ○○ (貸) 未払金 ○○

3.返品に係る取引慣行及び会計処理

(1)返品に係る取引慣行

化粧品・トイレタリー業界では新製品と既存製品との入れ替えが頻繁なため、メーカーが卸売業者や小売業者から自社製品の返品を受け入れる取引慣行があります。

また、訪問販売流通や通信販売流通においても、返品慣行は存在します。訪問販売流通では、消費者が製品を購入した後、一定の期間内であれば申し込みの撤回や契約の解除ができるクーリングオフ制度が「特定商取引に関する法律」で認められており、その適用に伴う返品が発生します。また、通信販売流通では原則として同制度の適用はありませんが、業界団体のガイドラインなどに基づいてメーカーが「商品到着後○○日以内の返品は可能」といった決まりを自主的に設けているケースも多くあります。

(2)返品に係る会計処理

化粧品・トイレタリー業界には返品慣行があるため、将来発生する返品金額を過去の実績等から合理的に見積ることが可能な場合が多いと考えられます。また、化粧品及び医薬部外品の製造業・卸売業は、一定の条件の下で、翌期の返品に係る損失の見込額を返品調整引当金として計上することが法人税法上認められています。

以上のことから、化粧品・トイレタリー業界においては返品調整引当金を計上している実務が多く見られます。返品調整引当金の一般的な会計仕訳及び算定式は以下のとおりです。

(引当金計上時)

(借) 返品調整引当金繰入額 ○○ (貸) 返品調整引当金 ○○

(一般的な算定式)

返品調整引当金=売上高又は売上債権残高×予想される返品率×売上総利益率

なお、昨今は返品された製品を再販売に回さず、そのまま廃棄を行う企業が増加しています。そういったケースにおいては、売上総利益相当額だけでなく廃棄損失相当額も含めた金額で返品調整引当金を計上する実務も見受けられます。

(3)訪問販売流通における留意点

継続的に販売している製品に関して過去の実績等に基づき返品の金額を合理的に見積もることができる場合、売上高のうち返品が予想される部分以外について、財貨は買手に実質的に移転していると考えられます(「財貨の移転の完了」)。また、予想される返品の額を控除した対価を、信頼性をもって測定することも可能です(「対価の成立」)。よって、我が国の実現主義に照らして考えると、返品調整引当金を計上した上で売上高を出荷基準で計上するという現行会計実務は適切と考えられます。

この点、クーリングオフ制度の対象となる訪問販売流通においては、製品の納入時点では法律上売買契約の成立は認められないため、会計上も「財貨の移転の完了」及び「対価の成立」が満たされていないと考えられます。よって、この場合、納入時に売上高及び返品調整引当金を計上するのではなく、買手による購入意思が示された時点又はクーリングオフ期間が終了した時点で初めて売上高の計上を行うという会計処理が適切と考えられています。

4.ポイント制度に係る取引慣行及び会計処理

(1)ポイント制度に係る取引慣行

ポイント制度は、企業の販売促進の手段の一つとして百貨店、家電量販店、スーパーなどの小売業者が広く採用している制度です。化粧品・トイレタリー業界では、化粧品のカウンセリング販売、訪問販売及び通信販売などの消費者とメーカーが直接取引する流通システムにおいて導入しているケースが見られます。例えば、インターネットの通信販売などでは、購入金額の一定割合を顧客にポイントとして付与し、顧客は次回購入時に蓄積したポイントを利用できるシステムを採用しています。

(2)ポイント制度に係る会計処理

現在、日本にはポイントに係る個別の会計基準等が存在しません。よって、ポイント発行企業は、企業会計原則等に則った会計処理を行っています。具体的な会計処理としては、以下のようなものが考えられます。

  • ① ポイント付与時に、消費者に提供する予定の商品原価を費用処理
  • ② ポイント使用時に、消費者に提供した商品原価を費用処理
  • ③ ポイント使用時に、消費者に提供した商品原価を費用処理するとともに、期末に未使用ポイントに対して過去のポイント使用実績を勘案し引当金計上

商品やサービスと交換可能なポイントの付与が、約款や広く周知された撤回不可能な方針等に基づいて行われており、将来の商品又はサービスとの交換時に通常の取引価格を下回る価格での提供又は一定の支出が見込まれている場合には、通常、引当金を認識することになると考えられます。最近はポイント制度が定着し、システムの発達により過去の使用実績データや未使用ポイント残高の把握が可能となったため、上記③の会計処理を採用するケースが増えています。

また、ポイント引当金を繰り入れる際の会計処理としては、売上高の控除処理とする考え方も存在しますが、販売費及び一般管理費に区分している事例が多いようです。これは、付与したポイントと商品やサービスとの将来の交換を、そのポイントを付与する元となった当初売上取引の構成要素として取り扱わず、むしろ顧客への商品又はサービスの販売促進に資する別個の取引として取り扱う考え方を前提としています。

ポイント引当金は、一般的に以下のような計算式で算定されます。

ポイント引当金=期末ポイント残高×見積使用実績割合×1ポイントあたりの製品等交換対価

(3)設例による解説

ポイント引当金の設例による解説は、以下のとおりです。
(前提)

  • X1年度末のポイント残高は100であった。
  • 経営者は、付与したポイントのうち引き換えられるポイントは80、それと引き換えられる商品の原価は60であると見積もった。
  • 1ポイントあたりの対価は1である。
  • ポイント引当金繰入額は、販売費及び一般管理費として処理している。

(X1年度末の仕訳)

(借) ポイント引当金繰入額 60 (貸) ポイント引当金 60 (*1)

  1. (*1)ポイント引当金残高=100×(80/100) (*2)×(60/80) (*3)=60
  2. (*2)見積使用実績割合
  3. (*3)1ポイントあたりの交換対価=1ポイントあたりの対価×製品原価率

<参考文献>

  • 交際費・リベート等の税務と会計 森田政夫 株式会社清文社
  • 業界の最新常識 よくわかる化粧品業界 中島美佐子 日本実業出版社
  • ポイント及びプリペイドカードに関する会計処理について 金融庁
  • 会計制度委員会研究報告第13号 我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)―IAS第18号「収益」に照らした考察―
  • 会計制度委員会研究資料第3号 我が国の引当金に関する研究資料

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