業種別会計
建設業

第1回:建設業の概要

2016.12.28
新日本有限責任監査法人 建設セクター
公認会計士 石川裕樹/橋之口 晋/藤井 陽/本多英樹
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4. 建設業における業務の流れ

建設業における大まかな業務の流れは、以下のようになります。

建設業における業務の流れ

(1)提案・入札

営業活動において、営業担当の人件費や、営業部門での諸経費が発生するのは建設業に限りませんが、建設業では、工事の見積書作成のために設計、測量、工事原価の積算などの業務が必要となり、受注前費用が多額に発生することがあります。

(2)受注・契約

営業活動の成果として受注に至った場合には、発注者から注文書等の書面による通知がなされるのが一般的です。通常は、この後、速やかに契約が締結されますが、工事の特性や工期等の事情により、発注から契約締結まで期間が空いてしまう場合もあります。

(3)設計

設計業務は、建設業における各業務に横断的に機能する一連の業務です。具体的な例としては、提案・入札の企画時点で作成される企画設計、完成物の骨子を定めて発注者への見積額提示に利用される基本設計、正式受注後の詳細な仕様に基づいて作成される実施設計があります。

(4)実行予算作成・承認

実行予算とは、工事原価総額の精緻な見積りをいいます。営業活動・受注の過程においても工事原価の見積りは行われますが、工事の詳細はまだ決まっておらず、また、見積り作業に費用が発生することや時間的制約から、見積精度はそれほど高くないことが通常です。これに対して、実行予算は、工事の詳細が決まった後、必要な資材の数量を詳細に見積もり、協力会社と発注金額の交渉を行うなどして作成され、工事を完成させるために必要な施工の初期段階における実現可能性が高い工事原価総額の見通しになります。

第2回で述べるように、建設業の収益認識基準に工事進行基準がありますが、その適用は信頼性のある工事原価総額の見積りが前提となっており、実行予算は、その基礎となります。

(5)施工

工事の施工は一般製造業における生産に相当しますが、前述のように、建設工事では各種工事を組み合わせて行われるため、工種ごとに専門の協力会社に外注することになります。通常は、事前に協力会社の作業遂行能力等について調査が行われた上で選定され、購買部門が作業所長の発注依頼に基づき、複数の協力会社から見積書を入手します。見積書の入手後、見積価格や工期、施工能力、技術力及び提案力等を総合的に勘案し、発注先を選定します。

施工に先立ち、工事現場の立地条件や地質条件、制約事項等を勘案し、材料仕様計画、労務計画、仮設資材使用計画等を含めた工程計画(工程表)を策定します。作業所長は、工程計画(工程表)と実績を比較することで、工事の進捗(しんちょく)状況を管理します。また、作業所長による工程管理とは別に、工事の品質管理を目的として工事監理も行われます。工事監理とは、設計事務所等が工事を設計図書と照合し、工事が設計図書のとおりに実施されているか確認すること、と定義されています。

建設工事では、工種ごとに専門の協力会社に外注する特徴から、協力会社との間では自社が発注者と工事請負契約を締結する場合と同じように、工事の内容について請負契約を締結し、発注金額を事前に取り決めることが通常です。工事現場では、協力会社の作業の進捗状況を随時把握し、毎月、出来高(一定期間に実施した工事の作業量)の査定を行い、出来高に応じて業者への支払い(原価の計上)を行います。

発注者からの請負金の支払条件は工事請負契約書に明記されており、請負金(取下金)受領のタイミングは、①着工時、②工事の途中、③完成引渡時あるいは引渡後一定の期間後、の3回に分けられることが一般的です。

一方、協力会社に対しては出来高に応じて一定の期間後に支払いを行います。そのため、一般的な工事の場合、工事原価の支払いが先行することから、元請業者に資金負担が生じます。さらに取下金は、金融機関への振込みによる現金の受領のみならず、手形や、近年では電子記録債権の利用も増えていることから、このような条件の場合には実際の現金の受領は、さらに遅くなります。従って、手持工事の件数や金額が大きくなるほどキャッシュ・フローがタイトになる傾向があります。

(6)完成・引渡し

工事が完成すると発注者による検査が行われ、検査完了後に建造物の引渡しが行われます。一年の中で最も多い工事の完成時期は3月付近であり、3月決算会社の場合には年度末に工事の完成が集中する傾向が見られます。

物件引渡時には、発注者と建設業者の間で、工事引渡書や物件受領書が取り交わされます。これによって、建設業者が請負人としての責任を履行したことを、発注者に対して正式な書面をもって主張できることになります。

(7)竣工後

引渡後においても、建設業者としての適正な施工を行い、品質が確保された物件を完成させ引き渡す責任の担保手段として、請負人たる建設業者が施主に対して、必要十分な期間、瑕疵(かし)担保責任を負うことが求められています。

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