業種別会計
路線バス業

路線バス業界の概要

2015.12.21
新日本有限責任監査法人 旅客運輸セクター
公認会計士 今村 洋
前のページ1|2|

4. 路線バス業の会計処理と表示の特徴

(1) 固定資産の特徴

路線バス業における主な設備投資には、営業所やバス停、バス車両、バス関連機器(デジタルタコグラフ・ドライブレコーダー・衝突被害軽減ブレーキ・ICカード決済機器)などがあります。このうち、営業所やバス停は、ほぼ初期投資のみですが、バス車両の入れ替えは毎年、頻繁に発生します。バスの入れ替えにより、バリアフリー化・環境対策などに対応しますが、環境に関連して排ガス規制が強化された年度においては、特に集中的な入れ替えとなり、投資額が多額になります。固定資産への投資は減価償却を通じて費用化されますが、耐用年数の変更等が行われた場合、バス車両にかかわる減価償却費が会社の損益に大きな影響を与える可能性があります。

路線バス業では、バス車両やバス関連機器の購入、又はバス停の設置に当たっては、公共の利益が図られることをかんがみ、地方公共団体などから補助金が支給される場合があります。このような固定資産取得に関連した補助金は、課税の繰り延べを行うため、圧縮記帳の会計処理が行われます。この場合、固定資産の貸借対照表価額から補助金等相当額を直接控除する方法と、新たに圧縮積立金を計上する方法があります。

(2) 経費(燃料費・人件費)の特徴

バスを運行するに当たっての経費としては、減価償却費、燃料費と運転士の人件費などが主要科目です。

燃料費については、アイドリングストップ装置付バスによる1台あたりの燃料費の削減やハイブリッドバス及びCNG(圧縮天然ガス)バスの導入による燃料の多様化を図っているものの依然として原油価格の変動が会社の損益に大きな影響を与えています。人件費は、団塊世代の退職が進み低下する傾向にありましたが、運転士不足が深刻化しており、近年では増加の傾向にあります。また、減価償却費への影響については前述のとおりです。

これらの経費は基本的に期間費用として会計処理されます。

(3) 運賃収入の会計処理

バス業の主たる事業は、一般乗合旅客自動車運送事業である路線バス業ですが、その収入形態には、

a. 運賃・回数券の販売による収入
b. 定期券の販売及びバスカードの販売による収入
c. ICカード乗車券の利用による収入

などがあります。

これらの収入形態については、それぞれに異なる会計処理、財務報告に係るリスク、それにかかわる統制活動があります。それぞれの会計処理と内部統制におけるポイントは、以下のとおりです。

a. 運賃・回数券の販売による収入
  • 現金売上
    路線バスでは、乗車時又は降車時に、乗客が設定された運賃を運賃箱に入れます。一日の運行が終了すると営業所で運賃箱が回収され、その回収額をもとに収益を認識します。運行日に運賃箱はすべて回収してカウントされるため、売上計上日の期間帰属に関するリスクは低いものと考えられます。
    現金回収の場合、乗客が運賃箱に運賃を入れた後、現金のカウントは機械により行われ、営業所からの銀行への納金は金融機関が直接回収するなど、従業員が極力、現金に触れないような内部統制が整備されています。
  • 回数券の販売
    回数券は、営業所などで販売され、乗客がバスに乗車する都度、運賃箱に入れますが、短期間ですべて使用されることから、その販売時点において収益を認識するものと考えられます。
b. 定期券の販売及びバスカードの販売による収入
  • 定期券の販売
    定期券は駅前サービスセンターや営業所などで販売されており、1か月、3か月定期券といったものが一般的です。
    収益計上は、販売時に全額を収益とせずに、利用に応じて収益計上し、残額は前受収益とします。その按分方法は月数按分が一般的であると考えられます。具体的には、使用開始日は月の1日から末日まで考えられるため、使用開始月と期限到来月は半月分を収益計上します。
    3か月定期券の販売による収入の仕訳例は以下のとおりです。

【仕訳例】

  • 定期券発売時
(借)現金300 (貸)前受収益300

300全額をいったん前受収益に計上します。

  • 使用開始月末
(借)前受収益50 (貸)旅客運送収入50

300/3か月*1/2=50

  • 翌月末及び翌々月末
(借)前受収益100 (貸)旅客運送収入100

300/3か月=100

  • 期限到来月末
(借)前受収益50 (貸)旅客運送収入50

300/3か月*1/2=50

なお、会計処理は会社によって異なり、上記の仕訳例に関しても、例示であり、画一的処理が求められるものではありません。

  • バスカードの販売
    バス(共通)カードについては、平成22年7月31日をもって利用ができなくなりました。また、払い戻しについても平成27年7月31日をもって終了しています。そのため、現在発行されているバスカードは、路線バス業者各社が独自に発行しているものとなります。
    収益計上は、定期券と同様に販売時に全額を収益とせず、利用に応じて収益計上し、残額は前受収益とします。ただし、バスカードについては期間の定めがないことも多いため、実際の使用ごとに収益を認識します。

c. ICカード乗車券の利用による収入

路線バス業者は近年、非接触型ICカード方式の鉄道・バス共通乗車カード〔スイカ(JRグループ)、 パスモ、ピタパ(民鉄)など〕を導入しています。これには、以下のメリットがあります。

  • 一枚のカードを鉄道・バスの両方で利用することが可能となり、利便性が格段に向上しました。
  • ICカード化することにより偽造や変造の可能性が低くなりました。
  • ICカードには、運賃の決済に限らず、店舗での代金決済手段として利用したり、クレジットなどさまざまな機能を付加したりできるようになりました。

これは、長年行ってきた多角化経営にも大きなメリットを与えると考えられます。

収益計上は、ICカードへのチャージ額を預り金として計上し、実際の使用時に収益を認識します。その後、チャージ会社と使用会社が異なることもあるため、精算手続を実施します。この精算に当たっては、ICカードを利用する会社が加盟する管理会社で一元管理されています。

ICカード乗車券の仕訳例は以下のとおりです。

【仕訳例】
乗客がICカードに当社で10円を、それ以外を他社でチャージしたものとします。乗客は80円の区間に乗車したとします。

  • ICカードチャージ時
(借)現金10 (貸)預り金10

受領額をいったん預り金に計上します。

  • 使用時
(借)売掛金80 (貸)旅客運送収入80

運賃金額を収入と売掛金に計上します。

  • 精算(売掛金と預り金の差額を精算)
(借)預り金10 (貸)売掛金80
現金 70    

当社でチャージされた10円部分については、預り金と売掛金を相殺し、他社でチャージされた分70円については、他社からの入金により売掛金の回収として処理します。

(4) バス業者の営業損益の表示

バス業者の営業収益の表示は、鉄道事業者のように別記規定(鉄道事業会計規則)はありませんが、一般的に以下の表示区分・科目により記載されています。

(個別損益計算書における売上高および売上原価の表示例)
一般旅客自動車運送事業営業収益  
  旅客運送収入 ×××
  運送雑収 ×××
  合計 ×××
一般旅客自動車運送事業運送費 ×××
  営業利益 ×××

前のページ1|2|

路線バス業

情報量は適当ですか?

文章はわかりやすいですか?

参考になりましたか?