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ストック・オプション

第4回:権利確定日以後の会計処理について

2007.12.10
(2019.06.28更新)
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 山岸聡

1. 権利確定日前後における会計処理の違い

会計基準及び適用指針では、権利確定日前後で明確に会計処理を区別していますが、その理由は、権利確定日前後でストック・オプションの性格が異なることに起因しています。権利確定日前後におけるストック・オプションの性格と会計処理の違いを整理すると、下記表のようになります。

  ストック・オプションの性格 会計処理
権利確定日以前 従業員等がストック・オプションを行使する権利が確定しておらず、従業員等の労働サービスに対するインセンティブ効果が期待される期間である。付与されたストック・オプションは、勤務対象期間(付与日から権利確定日までの期間)において提供された労働サービスに対する報酬と考えられる。 ストック・オプションの公正な評価額を対象勤務期間にわたり費用計上する。
権利確定日 権利確定日に、ストック・オプションの権利不確定による失効数及び権利確定数が決定する。従って、権利確定日をもって従業員等に付与されたストック・オプションに対応する労働サービスが完了したと考えられる。 ストック・オプション数を権利確定数(権利の確定したストック・オプション数)に一致させる。また、修正後のストック・オプション数に基づいて計算された権利確定日までに費用計上すべき額と、すでに費用計上された累計額との差額は、権利確定日の属する期の損益に計上する。
権利確定日後 権利確定日後は、従業員等がストック・オプションを行使する権利は確定しており、従業員等は、現在及び将来の株価動向などを勘案して、権利行使及びその時期を判断する。従って、従業員等は権利確定日後、潜在的株主としての地位を有していると考えられる。 (ア) ストック・オプションが権利行使され、新株が発行された場合
払込金額と新株予約権のうち、権利行使に対応する部分の合計額を払込資本に振り替える。
(イ) 権利不確定により失効した場合
失効部分に対応する新株予約権を特別利益に振り替える。

2. 設例による解説

権利確定日前後の会計処理を以下の設例により解説します。

【設 例】

<前提条件>

A社(決算日 3月31日)はX1年6月末の株主総会において、以下のとおりストック・オプションの付与を決定した。

  • 付与日におけるストック・オプションの公正な評価単価:5,000円/個
  • 付与されたストック・オプションの数:600個(従業員60人に対し10個/人)
  • 付与日:X1年7月1日
  • 権利確定日:X3年6月30日
  • ストック・オプションの行使時の払込金額:7,500円/個
  • ストック・オプションの権利行使期間:X3年7月1日~X5年6月30日
  • ストック・オプションの付与時点における失効見込数はゼロであった。

■ X1年度末(X2年3月31日)の会計処理

株式報酬費用 1,125,000 / 新株予約権 1,125,000

(注) 5,000円/個×600個(60人×10個)×9カ月/24カ月=1,125,000円

■ X2年度末(X3年3月31日)の会計処理

株式報酬費用 1,500,000 / 新株予約権 1,500,000

(注) 5,000円/個×600個(60人×10個)×21カ月/24カ月-1,125,000円=1,500,000円

■ X3年6月30日(権利確定日)の会計処理

<追加条件>

・ X3年4月1日からX3年6月30日までに実際に退職した従業員は5名であった。

株式報酬費用 125,000 / 新株予約権 125,000

(注) 5,000円/個×550個((60人-5人)×10個)-(1,125,000円+1,500,000円)=125,000円

(1) 権利行使時の処理

<追加条件>

・ X3年12月31日に40人(行使数400個)のストック・オプション行使があった。

現金 3,000,000 / 資本金 5,000,000
新株予約権 2,000,000 /    

(注)
払込金額=7,500円×400個(40人×10個)=3,000,000円
行使されたストック・オプション金額=5,000円/個×400個(40人×10個)=2,000,000円

(2) 権利失効時の処理

<追加条件>

・ 権利行使期間終了に伴い、権利不行使として確定した失効数は150個(15人×10個)であった。

新株予約権 750,000 / 新株予約権戻入益 750,000

(注) 5,000円/個×150個(15人×10個)=750,000円

3. ストック・オプションの行使に伴い自己株式を処分した場合

ストック・オプション行使に伴い、自己株式を処分した場合には、自己株式の取得原価と権利行使に伴う払込金額の合計額の差額は、自己株式の処分差額であり、「自己株式及び準備金の減少等に関する会計基準」により会計処理を行います。具体的には、ストック・オプションの帳簿価額及び権利行使に伴う払込金額の合計額と処分した自己株式の取得原価との差額は、自己株式処分差損益として処理します。自己株式処分差益はその他資本剰余金に計上し、自己株式処分差損はその他資本剰余金から減額します。その他資本剰余金の残高が負の値となった場合は、会計期間末において、その他資本剰余金をゼロとし、当該負の値をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額します。

4. ストック・オプションに関する税効果会計

(1) 税効果の対象

ストック・オプションとして新株予約権を発行するケースを前提として解説を行います。原則として、ストック・オプションを付与された個人が権利行使した時点で、行使時の時価が権利行使価額を上回っている差額が給与所得として課税されます。その場合、付与した会社側の法人税法上、株式報酬費用を損金として算入することが認められています。このため会計上で株式報酬費用を計上した時点では将来減算一時差異となるため、税効果会計の対象となります。ただし、税制適格ストック・オプションに該当する場合、付与時のみではなく権利行使時にも所得税の給与所得課税がなく、株式譲渡時に譲渡所得として課税されるため、株式報酬費用をどの時点でも損金算入することはできないことから、株式報酬費用は永久差異となり、繰延税金資産を計上することができません。税制適格ストック・オプションについては第6回で解説しますが、税制適格ストック・オプション以外の(税効果の対象となる)ストック・オプションのことを税制非適格ストック・オプションと呼ぶこともあります。

(2) ストック・オプションに関する税効果の会計処理

税効果の対象となる税制非適格ストック・オプションにおいて株式報酬費用として計上した会計上の費用は、将来減算一時差異として法定実効税率を乗じ、回収可能性を考慮した上で繰延税金資産を計上することになります。ストック・オプションが権利行使され、株式報酬費用が損金算入される時点で繰延税金資産を取り崩します。また、ストック・オプションが権利行使期間の満了又は消滅事由の発生により失効し、会計上で権利失効に対応する部分を利益として計上した場合、税務上は当該戻入益が益金不算入となることから、権利行使時と同様に繰延税金資産を取り崩すことになります。

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