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収益認識

第6回:履行義務の充足による収益の認識

2019.09.13
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 山岸 正典
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 内川 裕介

1. 概要

収益認識に関する会計基準等では、第5のステップとして履行義務の充足によって収益を認識します。

収益認識の5ステップ

最後のステップであるステップ5では、ステップ2で識別した各履行義務における収益の認識時点を決定します。企業は約束した財又はサービスを顧客に移転することによって、履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識します。そして、財又はサービスは、顧客がその財又はサービスに対する支配を獲得した時点又は獲得するにつれて移転します(基準第35項)。そのため、財又はサービスに対する支配の顧客への移転時点が、ステップ5において重要となります。

履行義務の充足による収益の認識

2. 一時点か一定期間かの判断

履行義務の充足パターンに従って収益を一時点又は一定期間にわたって認識することになるため、識別されたそれぞれの履行義務が、一定の期間にわたり充足されるものか、一時点で充足されるものかを判定します。

次の表の①から③の要件のいずれかを満たす場合、財又はサービスに対する支配が顧客に一定の期間にわたり移転すると認められるため、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識します。いずれも満たさない場合は、資産に対する支配が顧客に移転した一時点で履行義務を充足し収益を認識します。

履行義務の充足による収益の認識

3. 一定期間にわたり充足される履行義務

2. 一時点か一定期間かの判断に記載した履行義務の要件のいずれかを満たす場合、財又はサービスに対する支配が顧客に一定の期間にわたり移転することとされ、一定の期間にわたって履行義務を充足し収益を認識します。

一定期間にわたり充足される履行義務の場合、履行義務の充足に係る進捗(しんちょく)度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識することになります(基準第41項)。進捗度の見積りは、アウトプット法とインプット法があり、財又はサービスの性質を考慮して決定します(適用指針第15項)。

一定期間にわたり充足される履行義務

このアウトプット法又はインプット法は、類似の履行義務及び状況について首尾一貫した方法を適用します(基準第42項)。また、進捗度は各決算日に見直しを行い、進捗度の見積方法を変更する場合には会計上の見積りの変更に該当することになります(基準第43項)。

なお、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができる場合にのみ、一定の期間にわたり充足される履行義務について収益を認識します(基準第44項)。すなわち、進捗度を合理的に見積れない場合には収益を認識することはできません。ただし、進捗度を合理的に見積れなくても発生費用の回収が見込まれる場合には、進捗度の合理的な見積りが可能になるまで回収が見込まれる費用の額で収益を認識するという、原価回収基準によることになります(基準第45項)。

4. 一時点で充足される履行義務

2. 一時点か一定期間かの判断に記載の通り、一定期間にわたり充足する履行義務の要件のいずれも満たさない場合は、財又はサービスに対する支配が顧客に移転し、履行義務が充足された一時点で収益を認識します(基準第39項)。支配が移転したことを示す指標の例示としては以下が挙げられます(基準第40項)。

企業が顧客に提供した資産の対価を収受する現在の権利を有している
顧客が資産の法的所有権を有している
企業が顧客に物理的占有を移転している
顧客が資産の所有に伴う重大なリスクと経済価値を享受している
顧客が資産を検収している

5. 代替的な取扱い

(1) 出荷基準の取扱い

上記が原則的な取扱いですが、出荷基準等に関しては、重要性に基づく代替的な取扱いが認められています(適用指針第98項)。つまり、国内販売であることを条件として、商品又は製品の販売において出荷時から支配移転時までの間が通常の期間である場合には、出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時までの間の一時点(例えば、出荷時や着荷時)に収益を認識することが認められます。この通常の期間か否かは、取引慣行に照らして出荷から支配移転までに要する日数が合理的であるかを判断します。

出荷基準の取扱い

これは、国内の販売であれば出荷及び配送に要する日数は通常数日程度であることが多い点に鑑みて、出荷時から顧客への支配移転時までの期間が通常の期間である場合には、出荷時点で収益を認識しても金額的な重要性が乏しいと考えられるためです(適用指針第171項)。

(2) 契約の初期段階における原価回収基準の取扱い

3. 一定期間にわたり充足される履行義務に記載の通り、一定の期間にわたり充足される履行義務について、進捗度を合理的に見積れなくても発生費用の回収が見込まれる場合には原価回収基準により、収益を認識することになります。

この原価回収基準について、重要性に基づく代替的な取扱いとして、契約の初期段階では収益を認識せずに、合理的に見積もれるようになった時点から収益を認識することも容認されています(適用指針第99項)。契約の初期段階では、費用の発生金額に重要性が乏しいと考えられるためです(適用指針第172項)。

契約の初期段階における原価回収基準の取扱い

(3) 期間がごく短い工事契約及び受注制作のソフトウェアの取扱い

工事契約について、取引開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い場合、一定の期間にわたり収益を認識するための要件を満たす場合であっても、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識することができます(適用指針第95項、第96項)。期間がごく短い工事契約等は、金額の重要性が乏しいと考えられるためです(適用指針第168項)。

(4) 船舶による運送サービス

一定の期間にわたり収益を認識する船舶による運送サービスについて、一航海の船舶が発港地を出発してから帰港地に到着するまでの期間が通常の期間である場合には、履行義務の識別や進捗度の見積りを行わず、複数の顧客の貨物を積載する船舶の一航海を単一の履行義務としたうえで当該期間にわたり収益を認識することができます(適用指針第97項)。

6. これまでの日本基準又は日本基準における実務と収益認識に関する会計基準等の比較

ステップ5「履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する」における、これまでの日本基準又は日本基準における実務と収益認識に関する会計基準等の比較は以下の通りです。

  これまでの日本基準又は
日本基準における実務
収益認識に関する会計基準等
一定期間にわたり充足される履行義務
  • 企業会計原則においては、一定の契約に従って継続して役務の提供を行う場合には、時間の経過を基礎として収益を認識する。
  • 工事契約に関しては、工事の進捗部分について成果の確実性が認められる場合には、工事進行基準が適用される。
  • 所定の要件のいずれかに該当する場合には、履行義務の充足に応じて、一定の期間にわたり収益を認識する。
  • なお、期間がごく短い工事契約及び受注制作のソフトウェア、船舶による運送サービス、契約の初期段階における原価回収基準の適用について、重要性に基づく代替的な取扱いが認められている。
一時点で充足される履行義務
  • 企業会計原則においては、物品の販売に関して、実現主義の原則に従い、商品等の販売によって実現したものに限り収益を認識することとされている。実務上は、出荷基準、引渡基準又は検収基準等が採用されている。
  • 割賦販売については、割賦金の回収期限の到来の日又は入金の日に収益を認識することも認められている(割賦基準)。
  • 一定の期間にわたり収益を認識する要件に該当しない場合、財又はサービスを顧客に移転し当該履行義務が充足された一時点で収益を認識する。出荷基準について重要性に基づく代替的な取扱いが認められている。
  • 割賦販売における割賦基準に基づく収益認識は認められない。

これまでの会計基準のもとで進行基準を適用しているサービスの提供や工事契約について、収益認識に関する会計基準等のもとで、一定期間にわたり充足する履行義務といえるための要件を満たすか否かを確認する必要があります。

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