2019年3月期 有報開示事例分析 第12回:会社法開示比較②

2020年2月14日
カテゴリー 解説シリーズ

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 高橋 朗

Question

過去の誤謬が発見された場合の誤謬の訂正に関する注記の開示状況を知りたい。

Answer 

【調査範囲】

  • 調査日:2019年8月
  • 調査対象期間:2019年3月31日
  • 調査対象書類:有価証券報告書
  • 調査対象会社:2019年3月31日に終了する連結会計年度又は事業年度の有報提出会社2,388社(2019年7月1日までに有報を提出)

【調査結果】

過去の誤謬が発見された会社について誤謬の訂正に関する注記の開示状況を調査した結果は、<図表1>のとおりである。調査にあたり誤謬の訂正に関する注記を開示する可能性のある会社を次の2つの観点から抽出した。

  • 条件1
    2019年3月期の連結計算書類(又は計算書類)の「連結株主資本等変動計算書(又は株主資本等変動計算書)」において、誤謬に関する累積的影響額の開示がある。
  • 条件2
    2018年6月以降2019年6月までに提出された2018年3月期有報の訂正報告書に、利益剰余金の金額訂正がある。

<図表1> 過去の誤謬が発見された会社の開示状況

パターン
条件1 合計
該当有り (※1) 該当なし (※2)
条件2 該当有り 16 2 18

(※1) このうち、全ての会社が誤謬の訂正に関する注記を行っていた。

(※2) 内訳は以下のとおりである。

区分
会社数
臨時株主総会が開催され、過年度の計算書類の訂正を行っている。 1
臨時株主総会の開催の事実は確認できなかったが、訂正報告書の訂正後の利益剰余金金額が、計算書類等の期首の利益剰余金金額に反映されている。

1

訂正報告書で利益剰余金に関する修正を行っている大半の会社が、会社法上、過去の誤謬に関する注記を行っていた。訂正後の利益剰余金の金額を計算書類に反映させていることなどから、誤謬に関する注記を行っていない会社は2社にとどまる結果となった。

(旬刊経理情報(中央経済社)2019年9月20日号 No.1556「2019年3月期 「有報」分析」を一部修正)