平成30年3月期 有報開示事例分析 第4回:税効果会計一部改正の早期適用

2018年12月19日
カテゴリー 解説シリーズ

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 清宮 悠太

Question 

企業会計基準28号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(以下、「税効果会計基準一部改正」という)を早期適用している会社は?

Answer 

【調査範囲】

  • 調査日:平成30年8月
  • 調査対象期間:平成30年3月31日
  • 調査対象書類:有価証券報告書
  • 調査対象会社:平成30年3月31日に終了する連結会計年度又は事業年度の有報提出会社2,666社(平成30年7月2日までに有報を提出)

【調査結果】

税効果会計基準一部改正を早期適用している会社

調査対象会社のうち、表示方法の変更の注記に税効果会計基準一部改正を適用した旨を記載した会社を調査した結果、<図表1>のとおりであった。

<図表1> 表示方法の変更に税効果会計基準一部改正を適用した旨を記載した会社

  会社数
税効果会計基準一部改正を適用している会社数 (※) 27

(※) 連結財務諸表と個別財務諸表のそれぞれの表示方法の変更において、税効果会計基準一部改正を適用している旨を記載している会社は、1社としてカウントしている。

また、27社につき、税効果会計関係の注記における税効果会計基準一部改正に伴う注記内容の変更又は追加状況を調査したところ、<図表2>のとおりであった。
おおむね半数の14社が税効果会計基準一部改正3項から5項に定める税効果会計に係る会計基準(以下「税効果会計基準」という)注解(注8)及び(注9)などの内容を記載していた。

<図表2> 税効果会計関係の注記における税効果会計基準一部改正に伴う注記内容の変更又は追加状況

  会社数
連結財務諸表又は個別財務諸表の税効果会計関係の注記において、税効果会計基準一部改正3項から5項に定める税効果会計基準注解(注8)や(注9)の内容を変更又は追加している会社 (※1) (※2) 14
連結財務諸表又は個別財務諸表の税効果会計関係の注記において、税効果会計基準一部改正3項から5項に定める税効果会計基準注解(注8)や(注9)の内容の変更又は追加はない会社 13
合 計 27

(※1) 税効果会計基準注解(注8)(1)及び(2)、同(注9)(1)及び(2)のいずれかの変更又は追加内容が反映されている会社は、当該会社数に含めている。

(※2) いずれの会社においても、当該内容のうち前連結会計年度または前事業年度に係る内容については、税効果会計基準一部改正7項に定める経過的な取扱いに従って記載していないものとしていた。

さらに、当該14社について、税効果会計基準注解(注8)及び(注9)に関する記載状況を分析したところ、<図表3>のとおりであった。

<図表3> 税効果会計関係の注記における税効果会計基準注解(注8)や(注9)に関する記載状況 (※)

  会社数
税効果会計基準注解(注8)(1)に関する記載
(税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額と将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額に区分して記載)
区分して記載
14
税効果会計基準注解(注8)(2)に関する記載
(繰延税金資産から控除された額(評価性引当額)に重要な変動が生じている場合、当該変動の主な内容)
記載あり 7
重要な変動がない旨を記載 2
記載なし 5
小計 14
税効果会計基準注解(注9)(1)に関する記載
(繰越期限別の税務上の繰越欠損金に係る金額情報)
記載あり 10
記載なし 4
小計 14
税効果会計基準注解(注9)(2)に関する記載
(税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由)
回収可能と判断した理由を記載 5
回収不能と判断した旨を記載 2
記載なし 7
小計 14

(※) 連結財務諸表が作成されている場合には、連結財務諸表の税効果会計関係の注記において、税効果会計基準注解(注8)や(注9)に関する記載状況を判断している。

(旬刊経理情報(中央経済社) 平成30年9月20日号 NO.1523「平成30年3月期『有報』分析」を一部修正)

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