役員報酬の開示分析 第8回:重要な後発事象の注記分析

2017年12月25日
カテゴリー 解説シリーズ

公認会計士 横井 貴徳

Question 

新たな役員向け株式交付信託、又は(事前交付型)譲渡制限付株式若しくは業績連動発行型パフォーマンス・シェア(以下、これらをあわせて「本報酬制度」という。)の導入や、本報酬制度導入に伴う「新株式の発行」又は「自己株式の処分」の決定が決算日後に行われた場合について、平成29年3月期に係る計算書類及び有報、並びに平成29年6月第1四半期に係る四半期報告書の重要な後発事象の開示状況を知りたい。

Answer 

【調査範囲】

  • 調査日:平成29年9月
  • 調査対象期間:平成29年3月31日
  • 調査対象書類:有価証券報告書
  • 調査対象会社:平成29年4月1日現在の日経株価指数300に採用されている会社及び東証マザーズに上場している会社のうち、以下の条件に該当する266社
    ① 3月31日決算
    ② 日本基準を採用

【調査結果】

分析対象会社266社のうち、平成29年4月1日から6月30日までの期間に本報酬制度の導入に関する適時開示を行った会社(25社)について、平成29年3月期に係る計算書類及び有報、並びに平成29年6月第1四半期に係る四半期報告書の重要な後発事象の開示状況を分析した結果は、<図表1>のとおりである。

計算書類又は有報において、取締役会決議等での本報酬制度の導入又は株主総会の議案に付議することの決定を重要な後発事象として開示した会社は、計算書類が2社、有報が5社であった。一方、その後の第1四半期の四半期報告書において、取締役会決議等での「新株式の発行」又は「自己株式の処分」の決定を重要な後発事象として開示している会社は6社と増加した。これは、監査・保証実務委員会報告第76号「後発事象に関する監査上の取扱い」において、「重要な新株の発行」や「重要な自己株式の処分」が開示後発事象の例示項目となっていることが要因と考えられる。

<図表1>役員向け株式交付信託および譲渡制限付株式等に係る後発事象の開示状況

区分
平成29年3月
計算書類
会社数
平成29年3月
有報会社数
平成29年6月
四半期報告書
会社数
役員向け株式交付信託(※1)
後発事象の開示あり 0 1
0
後発事象の開示なし 8 7 8
小計 8 8 8
譲渡制限付株式等(※2)
後発事象の開示あり 2 4
6
後発事象の開示なし 15 13
11
小計 17 17 17

(※1) 平成29年4月1日から6月30日までの期間に役員向け株式交付信託制度の導入に係る適時開示を行った会社(8社)を対象とした。
(※2) 平成29年4月1日から6月30日までの期間に(事前交付型)譲渡制限付株式又は業績連動発行型パフォーマンス・シェアの導入に係る適時開示を行った会社(17社)を対象とした。

(旬刊経理情報(中央経済社) 平成29年11月1日増大号 No.1494「役員報酬の開示分析」を一部修正)

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