企業会計ナビ
金融商品

第3回:金融商品の評価

2020.03.31
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 山岸聡
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 湯本純久
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 中村崇
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 水野貴允
|1|23次のページ

7. 金融商品の評価基準の基本的考え方

金融資産については市場が存在すること等により客観的な価額として時価を把握でき、当該価額により換金・決済等が可能であるため、投資家に対する情報提供の観点、企業のリスク管理、財務活動の的確な把握の観点、さらに国際的調和化の観点から、原則として時価評価し、財務諸表に反映することが必要であるとしています(金融商品会計基準第64項、65項)。
しかし、金融資産の属性及び保有目的に鑑み、実質的に価格変動リスクを認める必要のない場合や直ちに売買・換金を行うことに事業遂行上等の制約がある場合があることから、時価評価を基本としつつ保有目的に応じた評価方法を採用しています(金融商品会計基準第66項)。

一方、金融負債は、借入金のように一般的には市場がないか、社債のように市場があっても、自己の発行した社債を時価により自由に清算するには事業遂行等の制約があると考えられることから、デリバティブ取引により生じる正味の債務を除き、時価評価の対象としないことが適当と考えられています(金融商品会計基準第67項)。

<金融商品の評価基準の基本的考え方>

種類 評価基準 評価差額の処理方法
金銭債権(金融商品会計基準第14項) 取得価額又は償却原価※1(貸倒引当金を控除)



売買目的有価証券
(金融商品会計基準第15項)
時価 損益に計上
満期保有目的の債券
(金融商品会計基準第16項)
取得原価又は償却原価※1
子会社及び関連会社株式
(金融商品会計基準第17項)
取得原価
その他有価証券
(金融商品会計基準第18項)
時価 純資産の部
(部分純資産直入法を採用している場合には、時価の下落部分は損益に計上)
金銭債務
(金融商品会計基準第26項)
債務額又は償却原価※2
デリバティブ
(金融商品会計基準第25項)
時価 原則として損益に計上

※1額面金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と額面金額の差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としなければならないとされています(金融商品会計基準第14項、16項)。

※2社債を社債金額よりも低い価額又は高い価額で発行した場合など、収入に基づく金額と債務額とが異なる場合には、償却原価法に基づいて算定された価額をもって、貸借対照表価額としなければならないとされています(金融商品会計基準第26項)。


8. 時価の定義

時価とは公正な評価額をいい、市場において形成されている取引価格、気配又は指標その他相場(市場価格)に基づく価額と定義されています。また、市場価格がない場合には、合理的に算定された価額を公正な評価額として適用します(金融商品会計基準第6項)。
ここで市場価格に基づく価額とは、売買が行われている市場において金融資産の売却により入手できる現金の額又は取得のために支払う現金の額をいい、以下の取引価格とされています(実務指針第48項)。

  • (1)取引所に上場されている金融資産
  • (2)店頭において取引されている金融資産
  • (3)上記(1)又は(2)に準じて随時、売買・換金等が可能なシステムにより取引されている金融資産

また、合理的に算定された価額とは、以下の方法で算定された価額とされています。いずれを利用する場合にも、恣意(しい)性を排除し、合理的に算定する必要があります(実務指針第54項)。

  • (1)取引所等から公表されている類似の金融資産の市場価格に、利子率、満期日、信用リスク及びその他の変動要因を調整する方法
  • (2)金融資産から発生する将来キャッシュ・フローを割り引いて現在価値を算定する方法
  • (3)一般に広く普及している理論値モデル又はプライシング・モデル(例えば、ブラック・ショールズ・モデル、二項モデル等のオプション価格モデル)を使用する方法
【時価の算定に関する会計基準の適用に伴う改正】

2021年4月1日以降開始する連結会計年度及び事業年度の期首より時価算定会計基準が適用となり、「時価」は、算定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格と定義されています(時価算定会計基準第5項)。市場価格に基づく価額や合理的に算定された価額の定義(実務指針第48項、54項)は、金融商品会計基準から削除されることとなりました。


9. 金融資産取得時の付随費用の取扱い

金融資産(デリバティブを除く)の取得時における付随費用は、取得した金融資産の取得価額に含めます。ただし、経常的に発生する費用で、個々の金融資産との対応関係が明確でない場合は、取得価額に含めないことができます(実務指針第56項)。


|1|23次のページ