平成20年連結会計基準における連結財務諸表原則からの変更点 第1回:平成20年連結会計基準において、新たな取り扱いとなる事項

2009年11月17日
カテゴリー 解説シリーズ

公認会計士 井澤依子

平成20年連結基準において、新たな取り扱いとなる事項は以下のとおりです。

① 部分時価評価法の廃止(連結基準20、同52(2)、同61、連結実務指針17、同57)

時価により評価する子会社の資産及び負債の範囲については、部分時価評価法と全面時価評価法とがありますが、以下の理由から全面時価評価法に統一されることとされました。

  • 平成9年連結原則後、部分時価評価法の採用はわずかであること
  • 子会社株式を現金以外の対価(例えば、自社の株式)で取得する取引を対象としていた平成15年公表の企業結合基準では全面時価評価法が前提とされたこと

なお、持分法を適用する関連会社の資産及び負債のうち投資会社の持分に相当する部分については、部分時価評価法により、これまでと同様に、原則として投資日ごとに当該日における時価によって評価することとなる点にご注意ください(連結基準61、連結実務指針35)。

② 連結基準と企業結合基準との関係の明確化(連結基準19、同52(1)、同60、連結実務指針7-2)

連結貸借対照表の作成に関する会計処理における企業結合及び事業分離等に関する事項のうち、連結基準に定めのない事項については、企業結合基準や企業会計基準第7 号「事業分離等に関する会計基準」(以下、事業分離基準)の定めに従って会計処理するとし、連結基準と企業結合基準との関係が明確にされました。

このため、連結基準を適用する場合にも、例えば、条件付取得対価の会計処理(企業結合基準27)、取得原価の配分(資本連結手続上の子会社の資産及び負債の評価に相当する)における暫定的な会計処理(企業結合基準(注6))、企業結合に係る特定勘定への取得原価の配分(企業結合基準30)、所定の注記事項(取得とされた企業結合の注記事項(企業結合基準49)、共通支配下の取引等に係る注記事項(企業結合基準52)、子会社の企業結合により当該会社が子会社に該当しなくなった場合の株主に係る注記事項(事業分離基準54)など)に関する定めが適用されることとなります。

特に、連結基準と企業結合との関係が明確にされたことにより、従来では要請されなかった注記が必要となります。当期において、新たに子会社を連結に含めることとなった場合や子会社株式の追加取得及び一部売却等があった場合には、その連結会計年度において、重要性が乏しいときを除き、企業結合基準49から55及び事業分離基準54及び56に定める事項を注記することとなります。

注記に必要な情報の入手と内容の検討については、事前に十分に準備されることが望ましいと思われます。

③ 親会社の子会社に対する投資額の算定(連結基準23(1)、同52(3)、同62、連結実務指針8、同65、企業結合基準25)

平成9年連結原則では、親会社の子会社に対する投資の金額は支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額に基づいて算定されてきましたが、連結基準においては、支配獲得日の時価によることとされました。支配獲得までの取得原価と支配獲得日の時価との差額は、当期の段階取得にかかる損益として処理します(企業結合基準25)。なお、関連会社が株式の段階取得により連結子会社となった場合においても、支配権獲得時に時価評価し直します(連結実務指針35)。

④ 連結調整勘定がのれんとして整理された点(連結基準24、同52(4)、同64、連結実務指針22、企業結合基準76)

平成9年連結原則において連結調整勘定とされていたのれん(または負ののれん)については、企業結合基準に従い会計処理することとされます。具体的には、のれんについては図表1に示されるとおりです。

図表1:「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(以下、企業結合指針)76項

貸借対照表の表示区分 無形固定資産
償却期間 20年以内のその効果の及ぶ期間
償却方法
定額法その他の合理的な方法による規則的償却
償却開始時点 原則は「支配獲得日」。みなし取得日がある場合には、みなし取得日
償却費の表示区分 販売費及び一般管理費
重要性基準の適用 のれんの金額に重要性が乏しい場合には、当該のれんが生じた事業年度の費用として処理することができる。当該費用の表示区分は販売費及び一般管理費で表示。

負ののれんが生じることが見込まれる場合には、重要性が乏しい場合を除き、以下の処理を行うこととされています(企業結合基準33)。

(i) 取得企業は、全ての識別可能資産及び負債が把握されているか、また、それらに対する取得原価の配分が適切に行われているかどうかを見直す。
(ii) (i)の見直しを行っても、なお取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を下回り、負ののれんが生じる場合には、当該負ののれんが生じた事業年度の利益として処理する。

負ののれんが生じた場合には、原則として、特別利益に計上します(企業結合基準48)。また、関連会社と企業結合したことにより発生した負ののれんは、連結基準64なお書きにより、持分法による投資評価額に含まれていたのれん(持分法基準11)の未償却部分と相殺し、のれん(または負ののれん)が新たに計算されます。

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