資産除去債務の会計処理 第4回:開示

2021年1月29日
カテゴリー 解説シリーズ

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 井澤依子

6.開示

(1) 貸借対照表上の表示

資産除去債務は、貸借対照表日後1年以内にその履行が見込まれる場合を除き、固定負債の区分に資産除去債務等の適切な科目名で表示します。貸借対照表日後1年以内に資産除去債務の履行が見込まれる場合には、流動負債の区分に表示します(会計基準12)。

(2) 損益計算書上の表示

① 資産計上された資産除去債務に対応する除去費用に係る費用配分額(会計基準13)

資産計上された資産除去債務に対応する除去費用に係る費用配分額は、損益計算書上、当該資産除去債務に関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含めて計上します。

② 時の経過による資産除去債務の調整額(会計基準14)

時の経過による資産除去債務の調整額は、損益計算書上、当該資産除去債務に関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含めて計上します。国際財務報告基準では、時の経過による資産除去債務の調整額は、財務費用としての処理が求められていますが、以下の理由から、当該資産除去債務に関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含めて計上することとされました(会計基準55)。

  • 時の経過による資産除去債務の調整額は、実際の資金調達活動による費用ではないこと
  • 同種の計算により費用を認識している退職給付会計における利息費用が退職給付費用の一部を構成するものとして整理されていること

③ 資産除去債務の履行時に認識される資産除去債務残高と資産除去債務の決済のために実際に支払われた額との差額(会計基準15)

資産除去債務の履行時に認識される資産除去債務残高と資産除去債務の決済のために実際に支払われた額との差額は、損益計算書上、原則として、当該資産除去債務に対応する除去費用に係る費用配分額と同じ区分に含めて計上します。これは、除去費用の総額が固定資産の利用期間にわたって配分され、将来キャッシュ・フローに重要な見積もりの変更が生じた場合には資産除去債務の計上額が見直されることを前提とすれば、資産除去債務の履行時に認識される差額についても、固定資産の取得原価に含められて減価償却を通じて費用処理された除去費用と異なる性格を有するものではないという考え方を前提とするものであるので、当初の除去予定時期よりも著しく早期に除去することとなった場合等、当該差額が異常な原因により生じたものである場合には、特別損益として処理することになります(会計基準57)。

(3) キャッシュ・フロー計算書上の取り扱い

資産除去債務を実際に履行した場合、その支出額についてはキャッシュ・フロー計算書上「投資活動によるキャッシュ・フロー」の項目として取り扱うこととされます(適用指針12)。

(4) 注記事項

資産除去債務の会計処理に関連して、重要性が乏しい場合を除き、次の事項を注記します(会計基準16)。

(1) 資産除去債務の内容についての簡潔な説明

(2) 支出発生までの見込期間、適用した割引率等の前提条件

(3) 資産除去債務の総額の期中における増減内容

(4) 資産除去債務の見積りを変更したときは、その変更の概要及び影響額

(5) 資産除去債務は発生しているが、その債務を合理的に見積ることができないため、貸借対照表に資産除去債務を計上していない場合には、当該資産除去債務の概要、合理的に見積ることができない旨及びその理由

重要な資産除去債務を計上したときは、キャッシュ・フロー計算書に「重要な非資金取引」として注記を行うこととされます(適用指針13)。

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