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2021年6月第1四半期 決算上の留意事項

2021.07.09
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士
平川 浩光、宮崎 徹、廣瀬 由美子、大竹 勇輝、石川 仁
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コロナ留意事項編

Q11
会計上の見積り

新型コロナウイルス感染症が会計上の見積りに与える影響として、留意すべき基本的な考え方を教えてください。

A11

四半期財務諸表の作成のために採用する会計方針は、四半期特有の会計処理を除き、原則として年度の連結財務諸表の作成にあたって採用する会計方針に準拠しなければなりませんが、企業集団の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、簡便的な会計処理によることができます(四半期会計基準9項、20項)。これらの会計処理の多くは、開示の迅速性を踏まえ、財務諸表利用者の判断を誤らせない範囲で、前年度決算から経営環境等に著しい変化が生じていないことを前提に前年度決算の結果を利用した会計処理を行うことを容認しているものになります。

しかし、新型コロナウイルス感染症(以下「本感染症」という。)の変異株のまん延や2021年4月25日より東京及び大阪等の一部地域に3度目の緊急事態宣言が発令されるなど、本感染症の感染拡大の状況が続いています。また、それ続くと同時に、我が国における本感染症のワクチン接種も徐々に進展してきており、本感染症に起因する経営環境の変化は、日々刻々と企業に大きな影響を与えていると考えられることから、簡便的な会計処理を採用している場合においても、3月の本決算後の経営環境の変化を四半期決算に織り込んでいく点に留意が必要と考えられます。

また、財務諸表を作成する上では、様々な会計上の見積りを行うことが必要となりますが、過年度遡及会計基準4項(3)において、会計上の見積りは「資産及び負債や収益及び費用等の額に不確実性がある場合において、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて、その合理的な金額を算出すること」と定義されています。

これまでの本感染症が会計上の見積りに与える影響の基本的な考え方は、2022年3月期の第1四半期決算における会計上の見積りに関しても同様であると考えられます(「2021年3月期 決算上の留意事項」のQ3 「2021年3月期における会計上の見積りのポイント」参照)。したがって、第1四半期決算においても、外部の情報源に基づく客観性のある情報が入手できない場合には、新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等について、企業自ら一定の仮定を置くことが引き続き必要です。

なお、2020年6月30日に日本公認会計士協会よりJICPA(その6)が公表されており、新型コロナウイルス感染症に関連する四半期レビューにおける留意事項が示されています。2022年3月期の四半期決算において、企業が四半期財務諸表における見積りを行うにあたっても、引き続き参考になるものと考えられますのでご留意ください。

Q12
本感染症に伴う固定資産減損会計の留意事項

本感染症が固定資産減損会計に与える影響として、留意すべき事項を教えてください。

A12

四半期決算における減損の兆候の把握にあたっては、使用範囲又は方法について当該資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化を生じさせるような意思決定や経営環境の著しい悪化に該当する事象が発生したかどうかについて留意が必要です(四半期適用指針14項、JICPA(その6))。

この四半期決算においても、本感染症の感染拡大に伴い、緊急事態宣言の再発令又は延長及び東京五輪の開催状況の変化等による需要の減少などを原因として、既に一部店舗の閉鎖の意思決定が行われていたり、製・商品販売量の著しい減少が続くことが見込まれる場合など、将来の企業の経営環境にどのような影響を与えるかについて、慎重に検討する必要があります。

また、上記の事象が発生したかどうかの検討に加えて、四半期で資産グループに関連する営業損益等の管理資料が利用可能な会社においては、当該資料に基づき減損の兆候を検討することになると考えられます。

Q13
本感染症に伴う税金及び税効果会計の留意事項

本感染症が税金及び税効果会計に与える影響として、留意すべき事項を教えてください。

A13

(1)繰延税金資産の回収可能性

① 四半期における原則的な取扱いと簡便的な取扱い

親会社及び連結子会社の法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金については、四半期会計期間を含む年度の法人税等の計算に適用される税率に基づいて原則として年度決算と同様の方法により計算し、繰延税金資産については、回収可能性を検討した上で、四半期貸借対照表に計上することとされています(四半期会計基準14項)。

このため、この原則的な取扱いに従う場合、四半期決算日ごとに年度決算と同様に企業の分類の要件を検討した上で、四半期決算日時点における合理的な仮定に基づく業績予測によって四半期会計期間の末日を起点として将来の一時差異等加減算前課税所得を見積り、その見積りに基づいて繰延税金資産を計上することになります。

一方、四半期決算における繰延税金資産の回収可能性の判断については、<図表11>の簡便的な取扱いが認められています(四半期適用指針16項、17項)。

<図表11> 繰延税金資産の回収可能性の判断における簡便的な取扱い

ケース 簡便的な取扱い
経営環境の著しい変化が生じておらず、かつ、一時差異等の発生状況について前年度末から大幅な変動がないと認められる場合 繰延税金資産の回収可能性の判断にあたり、前年度末の検討において使用した将来の業績予測やタックス・プランニングを利用することができる
経営環境に著しい変化が生じ、又は、一時差異等の発生状況について前年度末から大幅な変動があると認められる場合 繰延税金資産の回収可能性の判断にあたり、財務諸表利用者の判断を誤らせない範囲において、前年度末の検討において使用した将来の業績予測やタックス・プランニングに、当該著しい変化又は大幅な変動による影響を加味したものを使用することができる

簡便的な取扱いを適用する場合、本感染症の感染拡大の影響により業績の著しい好転又は悪化、その他経営環境の著しい変化が生じているか、一時差異等の発生状況について前年度末から大幅な変動がないと認められるか留意が必要です。

② 企業の分類の見直しの要否の検討

本感染症の影響により、企業の収益力が大幅に低下し、第1四半期決算において重要な税務上の欠損金が生じ、年度末においてもそのまま重要な税務上の欠損金となることが見込まれる場合には、第1四半期決算においても、分類の見直しを行う必要があるか慎重な検討が求められると考えられます。

③ 一時差異等加減算前課税所得の検討

ここで、繰延税金資産の回収可能性の検討にあたっては、本感染症の影響が企業の将来の収益力にどのような影響を及ぼすのかなど、事業計画等における仮定に生じる変化の可能性に留意し、翌四半期以降の事業計画等の見直しの要否について検討することが必要となります。

(2)四半期特有の会計処理を適用している場合

四半期決算において、税金費用については、四半期会計期間を含む年度の税引前当期純利益に対する税効果会計適用後の実効税率を合理的に見積り、税引前四半期純利益に当該見積実効税率を乗じて計算することができる(以下「四半期特有の会計処理」という。)とされています(四半期会計基準14項ただし書き)。

四半期特有の会計処理を適用している場合においても、前年度末に計上された繰延税金資産については、繰延税金資産の回収見込額を各四半期決算日時点で見直した上で四半期(連結)貸借対照表に計上することになる点に留意が必要です。

また、本感染症の影響等により、例えば以下の①から③のように見積実効税率を用いて税金費用を計算すると著しく合理性を欠く結果となる場合、法定実効税率を用いて税金費用を計算することになります(四半期適用指針19項、中間税効果適用指針14項)。

  • ① 予想年間税引前当期純利益がゼロ又は損失となる場合
  • ② 予想年間税金費用がゼロ又はマイナスとなる場合
  • ③ 上期と下期の損益が相殺されるため、一時差異等に該当しない項目に係る税金費用の影響が予想年間税引前当期純利益に対して著しく重要となる場合

なお、法定実効税率を用いて税金費用を計算する場合には、<図表12>のとおり計算することになります(四半期適用指針19項、中間税効果適用指針15項)。

<図表12> 法定実効税率を用いる場合の計算方法

ケース 計算方法
税引前四半期純利益が生じている場合
  • 税引前四半期純利益に法定実効税率を乗じて税金費用を計算する
  • 一時差異等に該当しない項目が重要な場合、当該項目の額を税引前四半期純利益に加減した上で法定実効税率を乗じる
税引前四半期純損失が生じている場合
  • 税引前四半期純損失に法定実効税率を乗じて税金費用を計算する
  • 一時差異等に該当しない項目が重要な場合、当該項目の額を税引前四半期純損失に加減した上で法定実効税率を乗じる
  • 税引前四半期純損失に法定実効税率を乗じて計算した税金費用に対応する四半期貸借対照表上の資産の額については、期首における繰延税金資産の額と合算して、税効果適用指針8項(1)に従って繰延税金資産の回収可能性を判断し、回収が見込まれる額を計上する
Q14
本感染症に伴う四半期における開示上の取扱い

見積開示会計基準が原則適用されて最初の四半期決算となる2021年6月第1四半期において、本感染症に関する会計上の見積りの仮定に関する影響をどのように開示することになるか教えてください。

A14

2020年6月第1四半期においては、2020年6月26日に公表された「ASBJ議事概要(更新)」の内容に基づき、追加情報に本感染症の見積りに関する内容を注記していたケースが多いと考えられます。

ここで、2021年6月第1四半期では見積開示会計基準が適用されていますが、見積開示会計基準の適用により、会計上の見積りの変更に関する現行の実務を変更することは想定されていないと考えられ、見積開示会計基準の適用前において会計上の見積りの変更として取り扱っていないものについては、見積開示会計基準の適用後も引き続き会計上の見積りの変更として取り扱わないことになると考えられます。

このため、本感染症の見積りの内容に関する2021年6月第1四半期の開示上の取扱いは、<図表13>のとおりとなると考えられます。

<図表13> 四半期決算における本感染症に関する見積りの開示上の取扱い

ケース 記載内容
前年度の財務諸表の「会計上の見積りに関する注記」に記載した本感染症の今後の広がり方や収束時期等の一定の仮定について、四半期決算において重要な変更を行った場合 他の注記に含めて記載している場合を除き、四半期財務諸表に係る追加情報として、当該変更の内容を記載
前年度の財務諸表の「会計上の見積りに関する注記」において、本感染症に関する仮定の記載を行っていないが、四半期決算において重要性が増し新たに仮定を開示すべき状況になった場合 他の注記に含めて記載している場合を除き、四半期財務諸表に係る追加情報として、当該仮定を記載
前年度の財務諸表の「会計上の見積りに関する注記」に記載した本感染症の今後の広がり方や収束時期等の一定の仮定について、重要な変更を行っていないが、重要な変更を行っていないことが財務諸表の利用者にとって有用な情報となると判断される場合 四半期財務諸表に係る追加情報として、重要な変更を行っていない旨を記載することが望ましい

なお、第2四半期以降において「重要な変更」か否かについては、直前四半期末との比較ではなく、前年度末との比較である点に留意が必要です。

株式報酬等取扱い編

Q15
株式報酬等取扱いの概要

ASBJより2021年1月28日に公表された株式報酬等取扱いの概要及び適用範囲を教えてください。また、いわゆる現物出資構成により、金銭を取締役等の報酬等とした上で、取締役等に株式会社に対する報酬支払請求権を現物出資財産として給付させることによって株式を交付する取引など、現行の類似スキームにも適用されるのでしょうか。

A15

(1)株式報酬等取扱いの経緯

2019年12月4日に「会社法の一部を改正する法律」(以下「改正会社法」という。)が成立し、一部を除き、2021年3月1日に施行されました。この改正会社法において、取締役又は執行役(以下「取締役等」という。)の報酬等として株式を発行等をする場合には、金銭の払込み等を要しないこととされました。これを受けて、ASBJでは、これらの会計処理及び開示を明らかにすることを目的として、2021年1月28日に株式報酬等取扱いを公表しました。

(2)適用時期等

改正会社法の施行日である2021年3月1日以後に生じた取引から適用することとし、その適用については、会計方針の変更には該当しないとされています(株式報酬等取扱い23項)。

(3)適用範囲

会社法202条の2に基づいて、上場会社が取締役等の報酬等として株式を無償交付する取引を対象とすることとされています。

また、現行実務において行われているいわゆる現物出資構成により、金銭を取締役等の報酬等とした上で、取締役等に株式会社に対する報酬支払請求権を現物出資財産として給付させることによって株式を交付する取引(以下「現物出資構成による取引」という。)など、現行の類似スキームには適用されません。この点、株式報酬等取扱いが対象とする取引は、会社法上、株式の無償発行であるのに対して、いわゆる現物出資構成による取引は株式の有償発行であるなど、法的な性質が異なる点があるため、いわゆる現物出資構成による取引の会計処理のうち払込資本の認識時点など、法的な性質に起因する会計処理については異なる会計処理になるものと考えられるとされています(株式報酬等取扱い3項、26項)。したがって、現行の類似スキームには準用又は類推適用もできないと考えられます。

なお、仮に改正会社法の施行日後に導入する場合であっても、現行の類似スキームには適用されません。また、上場会社の取締役等に限定されているため、上場会社の従業員や子会社の取締役等を対象とした同様のスキームにも適用されませんので、ご留意ください。

(4)会計処理の基本的な考え方

株式報酬等取扱いの適用対象としている取締役等の報酬等として株式を無償交付する取引については、自社の株式を報酬として用いる点で、ストック・オプションと類似性があるものと考えられます。

両者は、インセンティブ効果を期待して自社の株式又は株式オプションが付与される点で同様であるため、費用の認識や測定については、ストック・オプション会計基準の定めに準じることとされています。

一方、株式報酬等取扱いの適用対象となる取引には、いわゆる事前交付型と事後交付型が想定されており、株式が交付されるタイミングが異なる点や、事前交付型において、株式の交付の後に株式を無償で取得する点について、取引の形態ごとに異なる取扱いが定められています(株式報酬等取扱い35項から38項)。

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情報量は適当ですか?

文章はわかりやすいですか?

参考になりましたか?