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2021年6月第1四半期 決算上の留意事項

2021.07.09
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士
平川 浩光、宮崎 徹、廣瀬 由美子、大竹 勇輝、石川 仁
Q7
貸借対照表の表示

20年収益認識会計基準適用後には、四半期財務諸表において貸借対照表の表示科目はどのように変わるのでしょうか。

A7

20年収益認識会計基準適用後の四半期貸借対照表の表示については、受取手形、売掛金及び契約資産の区分に表示するとされています(四半期財規30条1項、四半期連結財規35条1項)。

また、契約負債については、区分掲記は求められておらず、流動負債「その他」に含めて表示すると考えられます(四半期財規44条1項、四半期連結財規49条1項)。ただし、負債及び純資産の合計額の100分の10を超えるもの又は区分して表示することが適切であるものについては「契約負債」などの適切な科目で別掲することになります(四半期財規44条2項、4項、四半期連結財規49条2項、4項)。

年度の(連結)財務諸表で求められる契約負債の区分掲記や、区分掲記しない場合の注記は、<図表7>のとおり、四半期の規則上規定されていません。

なお、契約資産と契約負債は、契約単位で相殺表示することとされています。例えば、1つの契約に複数の履行義務がある場合には、それぞれの履行義務に関する契約資産と契約負債を総額表示するのではなく、契約におけるすべての履行義務に関する契約資産と契約負債を集約し、相殺表示することになります。

ただし、複数の契約から生じた契約資産と契約負債は、<図表6>のように相殺せずに総額で貸借対照表に表示することになる点には留意が必要です(20年収益認識会計基準150-2項)。

<図表6> 契約資産、契約負債の相殺イメージ(クリックすると拡大します)

図表6 契約資産、契約負債の相殺イメージ

<図表7> 貸借対照表の表示方法の年度と四半期の相違

  年度 四半期
表示 「受取手形」、「売掛金」、「契約資産」に区分して表示する(財規17条1項、連結財規23条1項)。
「契約負債」を区分して表示する(財規49条1項、連結財規37条1項)。
「受取手形、売掛金及び契約資産」として区分して表示する(四半期財規30条1項、四半期連結財規35条1項)。
契約負債の区分表示は求められていない(四半期財規44条1項、四半期連結財規49条1項)。
注記 「受取手形」、「売掛金」、「契約資産」のそれぞれについて他の項目に属する資産と一括して表示する場合には、「受取手形(顧客との契約から生じた債権に限る。)」、「売掛金(顧客との契約から生じた債権に限る。)」、「契約資産」に属する資産の科目及び金額をそれぞれ注記する(財規17条4項、連結財規23条5項)。
契約負債を他の項目に属する負債と一括して表示する場合には、契約負債に属する負債の科目及びその金額を注記する(財規49条5項、連結財規37条6項)。
左記は求められていない。
Q8
会計方針の変更

18年収益認識会計基準等及び20年収益認識会計基準等の適用に際し、四半期財務諸表においては、会計方針の変更について、どのような内容を注記する必要があるのでしょうか。

A8

18年収益認識会計基準等及び20年収益認識会計基準等の適用初年度においては、会計方針の変更として取り扱い、第1四半期の財務諸表に「会計基準等の改正等に伴う会計方針の変更に関する注記」として、以下の注記を行うことになります(四半期財規5条、四半期連結財規10条の2)。

  • ① 当該会計基準等の名称
  • ② 当該会計方針の変更の内容
  • ③ 税引前四半期純損益金額に対する前事業年度の対応する四半期累計期間における影響額(84項ただし書きの場合は、税引前四半期純損益金額に対する影響額)及びその他の重要な項目に対する影響額

③に記載の「その他の重要な項目に対する影響額」としては、例えば、売上高、売上原価、利益剰余金の前期首残高(84項ただし書きの方法を採用している場合には、当期首残高)への影響額を記載することが考えられます。

また、20年収益認識会計基準等ではQ4(1)③から⑤に記載のとおり、様々な経過措置が認められていますが、経過措置に従って会計処理を行った場合においては、上記に加え、以下を注記することになります。

  • ④ 経過的な取扱いに従って会計処理を行った旨及び当該経過的な取扱いの概要

なお、年度の(連結)財務諸表で求められる1株当たり情報に対する影響額の注記は、<図表8>のとおり、四半期の規則上規定されていません。

<図表8> 会計方針の変更に関する注記の年度と四半期との相違

(84項の原則的な取扱い)

年度
(財規8条の3、連結財規14条の2)
四半期
(四半期財規5条、四半期連結財規10条の2)
当該会計基準等の名称 当該会計基準等の名称
当該会計方針の変更の内容 当該会計方針の変更の内容
財務諸表の主な科目に対する前事業年度における影響額 税引前四半期純損益金額に対する前事業年度の対応する四半期累計期間における影響額及びその他の重要な項目に対する影響額
前事業年度の期首における純資産額に対する累積的影響額
前事業年度に係る1株当たり情報に対する影響額 -
(85項の経過措置に従って会計処理を行った場合)
当該経過措置に従って会計処理を行った旨及び当該経過措置の概要
(85項の経過措置に従って会計処理を行った場合)
当該経過措置に従って会計処理を行った旨及び当該経過措置の概要

(84項ただし書きの方法)

年度 四半期
当該会計基準等の名称 当該会計基準等の名称
当該会計方針の変更の内容 当該会計方針の変更の内容
当該経過措置に従って会計処理を行った旨及び当該経過措置の概要 当該経過措置に従って会計処理を行った旨及び当該経過措置の概要
当該経過措置が当事業年度の翌事業年度以降の財務諸表に影響を与える可能性がある場合には、その旨及びその影響額 -
財務諸表の主な科目に対する実務上算定可能な影響額 税引前四半期純損益金額に対する影響額及びその他の重要な項目に対する影響額
1株当たり情報に対する実務上算定可能な影響額 -
Q9
収益認識に関する注記

収益認識に関する注記の開示の内容や要否はどのように判断するのでしょうか。

A9

20年収益認識会計基準等では、企業の実態に応じて個々の注記事項の開示の要否を判断することが明確にされています。このため、収益認識に関する注記の開示の内容や要否については、開示目的(顧客との契約から生じる収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を企業が開示すること(20年収益認識会計基準80-4項))に照らして判断することになります。

また、当該開示目的を達成するため、四半期では、収益認識に関する注記として、次の項目を注記するとされています(四半期財規22条の4第1項、四半期連結財規27条の3)。

  • 収益の分解情報

ただし、重要性に乏しいと認められるものについては、記載しないことができます(20年収益認識会計基準80-5項ただし書き、四半期財規22条の4第1項ただし書き、四半期連結財規27条の3)。重要性の判断については、定量的な要因と定性的な要因の両方を考慮する必要がありますが、定量的な要因のみによる判断において重要性がないといえない場合であっても、開示目的に照らして重要性に乏しいと判断されることもあると考えられるとされています(20年収益認識会計基準168項)。

また、収益認識に関する注記として記載する内容について、例えば、セグメント情報の注記に含めて収益の分解情報を示す等、財務諸表における他の注記事項に含めて記載している場合には、その旨を記載し、記載を省略することができます(20年収益認識会計基準80-9項、172項、173項、四半期財規22条の4第2項、四半期連結財規27条の3)。

ここで、開示の重要性の判断については、金融庁の「令和2年度 有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項」の重点テーマ審査(IFRS第15号)審査結果が参考になると考えられます。当該審査結果では、重要性の判断は開示目的とともに考慮するべきであり、重要性がないとして要求されている開示を省略する際には、その省略によって開示目的の達成に必要な情報の理解も困難になっていないかどうか検討することが求められる、とされています。また、重要性が乏しい事項について、開示されている定量的情報等からその旨を読み取ることができない場合は、重要性が乏しいことが分かるように簡潔な説明を加えることも有用と考えられる、とされていることにご留意ください。

Q10
収益の分解情報の注記

四半期財務諸表で注記する、当期に認識した顧客との契約から生じる収益を、収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づく区分に分解した情報(以下「収益の分解情報」という。)では、どのような情報を開示するのでしょうか。

A10

当期に認識した顧客との契約から生じる収益を、収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づく区分(例えば、製品別や地域別等)に分解した情報を注記することとされています(20年収益認識会計基準80-10項、20年収益認識適用指針106-3項、四半期財規22条の4第1項、四半期連結財規27条の3)。

また、企業会計基準第17号「セグメント情報等の開示に関する会計基準」を適用している場合、当該会計基準に従って各報告セグメントについて開示する売上高との関係を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を注記することとされています(20年収益認識会計基準80-11項、四半期財ガ22の4の2、四半期連ガ27の3)。

上記の収益の分解情報を注記するにあたっては、例えば、決算発表資料やプレスリリース等で提供されているより詳細な収益の分解に関する情報を、それらが財務諸表外で開示された目的に照らしてどの程度開示すべきかを検討する必要がありますが(20年収益認識適用指針106-4項)、開示例の具体的なイメージについては<図表9>をご参照ください。

<図表9> 分解情報開示例(クリックすると拡大します)

図表9 分解情報開示例

上記の開示例では、顧客との契約から生じる収益の合計23,000百万円を、主たる地域市場、主要な財又はサービスのライン、収益認識の時期により分解した情報をセグメントごとに開示しています。これらの例示はチェックリスト又は網羅的なリストとして利用されることは意図されていないことから(20年収益認識適用指針190項)、企業の実態に即した事実及び状況に応じて各企業の判断において分解する区分を決定する必要がある点にご留意ください。

また、年度でも四半期と同様の内容が開示が求められていることから、四半期においてどのような開示を行うかについて十分に検討する必要があると考えられます(四半期連結財規27条の3、四半期財ガ22の4、四半期連ガ27の3、財規8条の32、連結財規15条の26、四半期財規22条の4)。

ここで、収益の分解情報については、金融庁の「令和2年度 有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項」の重点テーマ審査(IFRS第15号)の審査結果が参考になると考えられますが、IFRS第15号の開示に関する改善の余地がある事項が3点あり、<図表10>のように改善の方向性が提案されていますので、ご参考にしてください。

<図表10> IFRS第15号の開示に関する改善の余地がある事項

改善の余地がある事項 改善の方向性
収益の分解情報と収益の分解情報以外の情報(特に履行義務の内容)との関係について、十分に理解できるような説明がない
  • 履行義務に関する説明との関係性が明確になるように収益を分解する
    また、必要に応じ、複数の種類の区分を使用することを検討する
  • セグメント情報をもって収益の分解情報を開示する場合には、セグメント別収益の開示がIFRS第15号114項で定めている要求事項を満たすものか確認する
分解した収益とセグメント情報の関係について十分な説明がない 分解した収益の開示と、各報告セグメントについて開示される収益情報(IFRS第8号「事業セグメント」を適用している場合)との間の関係を理解できるようにするための十分な情報を開示する
顧客との契約から認識した収益とその他の収益が区分されていない(重要性がないと判断して区分していない) その他の収益の額を区分して開示する
その他の収益の額に重要性がない場合でも、その旨を示す開示又は当該収益の額を開示する

(参考:金融庁「令和2年度 有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項」)


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