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2021年6月第1四半期 決算上の留意事項

2021.07.09
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士
平川 浩光、宮崎 徹、廣瀬 由美子、大竹 勇輝、石川 仁

収益認識会計基準編

Q4
20年収益認識会計基準適用時の留意事項

20年収益認識会計基準を適用する場合の留意事項を教えてください。

A4

(1)会計処理に関する経過措置

① 適用初年度の取扱い

収益認識会計基準の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、原則として、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用することとされています(以下「原則的な取扱い」という。)(20年収益認識会計基準84項本文)。ただし、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することができるとする経過措置が定められています(20年収益認識会計基準84項ただし書き)。この適用初年度の取扱いをまとめたものが、以下の<図表4>です。

<図表4> 収益認識会計基準の適用初年度の取扱い(クリックすると拡大します)

図表4 収益認識会計基準の適用初年度の取扱い

② 原則的な取扱いに従って遡及適用する場合

原則的な取扱いに従って遡及適用する場合であっても、以下のⅰからⅳの方法の1つ又は複数を適用することができるとされています(20年収益認識会計基準85項)。

  • 適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期首より前までに従前の取扱いに従ってほとんどすべての収益の額を認識した契約(※1)について、適用初年度の比較情報を遡及的に修正しないこと
  • 適用初年度の期首より前までに従前の取扱いに従ってほとんどすべての収益の額を認識した契約に変動対価が含まれる場合、当該契約に含まれる変動対価の額について、変動対価の額に関する不確実性が解消された時の金額を用いて適用初年度の比較情報を遡及的に修正すること
  • 適用初年度の前連結会計年度内及び前事業年度内に開始して終了した契約について、適用初年度の前連結会計年度の四半期連結財務諸表及び適用初年度の前事業年度の四半期個別財務諸表を遡及的に修正しないこと
  • 適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期首より前までに行われた契約変更について、すべての契約変更を反映した後の契約条件に基づき、次の処理を行い、適用初年度の比較情報を遡及的に修正すること
    • 履行義務の充足分及び未充足分の区分
    • 取引価格の算定
    • 履行義務の充足分及び未充足分への取引価格の配分
※1 「従前の取扱いに従ってほとんどすべての収益の額を認識した契約」に該当すると判断されるすべての契約に首尾一貫して経過措置を適用しなければならない(個々の契約単位で経過措置の選択を判断することはできない)点に留意する。

③ 適用初年度に84項ただし書きを選択する場合

適用初年度に20年収益認識会計基準84項ただし書きを選択する場合、適用初年度の期首より前までに従前の取扱いに従ってほとんどすべての収益の額を認識した契約(※2)に、新たな会計方針を遡及適用しないことができるとされています(20年収益認識会計基準86項本文)。

また、84項ただし書きを選択する場合、契約変更について、次のいずれかを適用し、その累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減することができることとされています(20年収益認識会計基準86項また書き)。

  • 適用初年度の期首より前までに行われた契約変更について、すべての契約変更を反映した後の契約条件に基づき、上記②ⅳの3つの項目の処理を行うこと
  • 適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期首より前までに行われた契約変更について、すべての契約変更を反映した後の契約条件に基づき、上記②ⅳの3つの項目の処理を行うこと
※2 上記②の※1と同様に、「従前の取扱いに従ってほとんどすべての収益の額を認識した契約」に該当すると判断されるすべての契約に首尾一貫して経過措置を適用しなければならない点に留意する。

④ IFRS又は米国会計基準を連結財務諸表に適用している企業の適用初年度の取扱い

IFRS又は米国会計基準を連結財務諸表に適用している企業(又はその連結子会社)が当該企業の個別財務諸表に20年収益認識会計基準を適用する場合には、適用初年度において、IFRS第15号又はTopic 606「顧客との契約から生じる収益」のいずれかの経過措置の定めを適用することができることとされています(20年収益認識会計基準87項本文)。

また、IFRSを連結財務諸表に初めて適用する企業(又はその連結子会社)が当該企業の個別財務諸表に20年収益認識会計基準を適用する場合には、その適用初年度において、IFRS第1号における経過措置に関する定めを適用することができるとされています(20年収益認識会計基準87項また書き)。

⑤ 消費税等の会計処理に関する経過措置

20年収益認識会計基準等は、消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の会計処理として税込方式を認めていないため、税抜方式のみとなります(20年収益認識会計基準47項、212項)。

適用初年度において、消費税等の会計処理を税込方式から税抜方式に変更する場合には、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うこととされています。したがって、消費税等の会計処理も遡及適用することが原則となりますが、適用初年度の期首より前までに税込方式に従って消費税等が算入された固定資産等の取得原価から消費税等相当額を控除しないことができるとする経過措置が定められています(20年収益認識会計基準89項)。

(2)表示及び注記

表示科目については、20年収益認識会計基準の適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行わないことができるとされています(20年収益認識会計基準89-2項)。

また、20年収益認識会計基準の適用初年度においては、20年収益認識会計基準において定める以下の注記事項を適用初年度の比較情報に注記しないことができるとされています(20年収益認識会計基準89-3項)。

  • 顧客との契約から生じる収益とそれ以外の収益とを区分して損益計算書に表示しない場合における顧客との契約から生じる収益の額の注記(20年収益認識会計基準78-2項)
  • 契約資産と顧客との契約から生じた債権とを区分して貸借対照表に表示しない場合における、それぞれの残高の注記(また、契約負債と他の負債とを区分して貸借対照表に表示しない場合における、契約負債の残高の注記)(20年収益認識会計基準79項なお書き)
  • 重要な会計方針の注記と収益認識に関する注記(20年収益認識会計基準80-2項から80-27項)

四半期においては、収益の分解情報に関する注記(Q10参照)のみが求められていますが(四半期財規22条の4、四半期連結財規27条の3)、適用初年度の比較情報について記載することを要しないとされています(令和2年内閣府令第46号附則3条6項及び11項)。

Q5
18年収益認識会計基準を早期適用済の場合

18年収益認識会計基準等を早期適用済の会社が、20年収益認識会計基準を適用する場合の留意事項を教えてください

A5

(1)会計処理

18年収益認識会計基準等を早期適用済の会社が、2022年3月期の期首から20年収益認識会計基準を適用する場合には、原則として、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用することになります。ただし、20年収益認識会計基準等では、主に表示及び開示に関する定めが追加されていることから、18年収益認識会計基準を早期適用している場合には、20年収益認識会計基準の適用による会計処理への影響は、契約資産の性質の見直しや適用範囲の見直しに限られており、限定的であるものと考えられます。

さらに、経過措置として、将来にわたり新たな会計方針を適用することができるとされています(20年収益認識会計基準89-4項)。

(2)表示及び注記

20年収益認識会計基準の適用初年度においては、20年収益認識会計基準の適用により表示方法(注記による開示も含む。)の変更が生じる場合には、過年度遡及会計基準14項の定めにかかわらず、適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行わないことができるとされています。

また、以下に記載した内容を適用初年度の比較情報に注記しないことができるとされています。

  • 顧客との契約から生じる収益とそれ以外の収益とを区分して損益計算書に表示しない場合における顧客との契約から生じる収益の額の注記(20年収益認識会計基準78-2項)
  • 契約資産と顧客との契約から生じた債権とを区分して貸借対照表に表示しない場合における、それぞれの残高の注記(また、契約負債と他の負債とを区分して貸借対照表に表示しない場合における、契約負債の残高の注記)(20年収益認識会計基準79項なお書き)
  • 重要な会計方針の注記と収益認識に関する注記(20年収益認識会計基準80-2項から80-27項)

なお、会計処理の変更は生じておらず、表示方法の変更のみが生じる場合には、会計方針の変更の注記は不要であると考えられます。また、四半期においては、表示方法の変更の注記は求められていないことから、必要に応じて追加情報として注記することになると考えられます。

Q6
損益計算書の表示

20年収益認識会計基準適用後には、四半期財務諸表において損益計算書の表示科目はどのように変わるのでしょうか。

A6

20年収益認識会計基準等では、四半期損益計算書(四半期連結損益計算書も含む。以下同じ。)においても、顧客との契約から生じる収益を、適切な科目(例えば、売上高、売上収益、営業収益等)をもって四半期損益計算書に表示します(四半期財ガ58、財規ガ72-1、四半期連ガ66)。

これまでの実務慣行等を踏まえると、財の販売から生じる収益を「売上高」、サービスの提供から生じる収益を「役務収益」、代理人として獲得する収益を「手数料収益」などとすることが考えられますが、表示科目を決定するための具体的な指針は示さないこととされています(20年収益認識会計基準155項)。このため、実務上は、各企業において、実態に応じた適切な表示科目を検討しておくことが必要になると考えられます。

損益計算書の表示及び関連する注記については、<図表5>のとおり、顧客との契約から生じる収益の区分表示の取扱いが、年度と四半期とで異なります。

<図表5> 損益計算書の表示方法の年度と四半期の相違

  年度 四半期
表示 各企業の実態に応じ、売上高、売上収益、営業収益等適切な名称を付す(財規ガ72-1、連財ガ51)。
顧客との契約から生じる収益及びそれ以外の収益に区分して記載する(財規72条2項、連結財規51条2項)。
各企業の実態に応じ、売上高、売上収益、営業収益等適切な名称を付す(四半期財ガ58、四半期連ガ66、財規ガ72-1条)。
注記 顧客との契約から生じる収益及びそれ以外の収益に区分して記載しない場合には顧客との契約から生じる収益の金額の注記する(財規72条2項、連結財規51条2項)。 左記は求められていない。

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