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「時価の算定に関する会計基準の適用指針」の改正案(投資信託等に関する取扱い)のポイント

2021.02.03
EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 高平 圭

2021年1月18日に、企業会計基準委員会(ASBJ)より、企業会計基準適用指針公開草案第71号(企業会計基準適用指針第31号の改正案)「時価の算定に関する会計基準の適用指針(案)」(以下「本公開草案」という。)が公表されています。

ASBJは、2019年7月4日に金融商品の時価に関するガイダンス及び開示に関して、国際的な会計基準との整合性を図る取組みとして、企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」(以下「時価算定会計基準」という。)及び企業会計基準適用指針第31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針」(以下「2019年適用指針」という。)等を公表しました。2019年適用指針においては、投資信託の時価の算定について、関係者との協議等に一定の期間が必要と考えられたため、時価算定会計基準公表後概ね1年をかけて検討することとされていました。また、貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資の時価の注記についても、投資信託に関する取扱いを改正する際に取扱いを明らかにするとされていました。ASBJはこれらの経緯を踏まえ、審議を行っていましたが、今般、本公開草案が公表されるに至ったものです。

本公開草案に対しては、2021年3月18日(木)までコメントが募集されています。

Ⅰ. 本公開草案の概要

1. 投資信託財産が金融商品である投資信託の取扱いについて、以下の内容が提案されています。

(1)時価の算定に関する取扱い(本公開草案第24-2項から第24-6項及び第49-2項から第49-6項)

  • 市場における取引価格が存在する場合、通常は当該価格が時価になると考えられる。
  • 市場における取引価格が存在せず、かつ、解約又は買戻請求(以下合わせて「解約等」という。)に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がない場合、基準価額を時価とする。ただし、時価算定会計基準における時価の定義を満たす、他の算定方法により算定された価格の利用を妨げるものではない。
  • 市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合、投資信託を構成する個々の投資信託財産の評価について、時価算定会計基準と整合する評価基準が用いられていると考えられる次のいずれかに該当するときは、基準価額を時価とみなすことができる。
    1. 当該投資信託の財務諸表がIFRS又は米国会計基準に従い作成されている場合
    2. 当該投資信託の財務諸表がIFRS及び米国会計基準以外の会計基準に従い作成され、当該会計基準における時価の算定に関する定めがIFRS第13号「公正価値測定」又はTopic820「公正価値測定」と概ね同等であると判断される場合
    3. 当該投資信託の投資信託財産について、一般社団法人投資信託協会が定める「投資信託財産の評価及び計理等に関する規則」に従い評価が行われている場合

なお、海外の法令に基づいて設定される投資信託に対して、上記の取扱いを適用する際、時価の算定日と基準価額の算定日との間の期間が短い(通常は1か月程度と考えられるが、投資信託財産の流動性などの特性も考慮する。)場合に限り、基準価額を時価とみなすことができる。

また、基準価額を時価とする取扱い又は基準価額とみなす取扱いを適用する場合、それを適用するための要件を満たすことをもって、第三者から入手した相場価格が時価算定会計基準に従って算定されたものであると判断することができる。

(2)時価のレベルの分類及び開示(本公開草案第24-7項及び第49-7項)

基準価額を時価とみなす取扱い(本公開草案第24-3項)を適用した投資信託については、時価のレベルごとの内訳等に関する事項を注記しないこととし、その場合、次の内容を注記する。

  • 基準価額を時価とみなす取扱いを適用しており、時価のレベルごとの内訳等に関する事項を注記していない旨
  • 基準価額を時価とみなす取扱いを適用した投資信託の貸借対照表計上額の合計額
  • ②の合計額に重要性がない場合を除き、②の期首残高から期末残高への調整表
  • ②の合計額に重要性がない場合を除き、②の時価算定日における解約等に関する制限の内容ごとの内訳

2. 投資信託財産が不動産である投資信託の取扱いについて、以下の内容が提案されています。

(1)貸借対照表価額(本公開草案第49-8項及び第49-9項)

金融商品会計基準に従い、時価をもって貸借対照表価額とする。

(2)時価の算定に関する取扱い(本公開草案第24-8項から第24-10項及び第49-10項から第49-12項)

  • 市場における取引価格が存在する場合、通常は当該価格が時価になると考えられる。
  • 市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がない場合は、基準価額を時価とする。
  • 市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合は基準価額を時価とみなすことができる。なお、投資信託財産である不動産については、時価の算定が時価算定会計基準の対象に含まれないことから、当該投資信託を構成する個々の投資信託財産の評価について時価算定会計基準と整合する評価基準が用いられている等の要件は設けない。

なお、基準価額を時価とする取扱いを適用する場合、投資信託財産が金融商品である投資信託と同様に、それを適用するための要件を満たすことをもって、第三者から入手した相場価格が時価算定会計基準に従って算定されたものであると判断することができる。

また、基準価額を時価とみなす取扱いを適用する場合、投資信託財産である不動産の時価の算定が時価算定会計基準の対象に含まれていないことから、基準価額が時価算定会計基準に従って算定されたものであるか否かを判断する手続までは求めない。

(3)時価のレベルの分類及び開示(本公開草案第24-11項及び第49-13項)

基準価額を時価とみなす取扱い(本公開草案第24-9項)を適用した投資信託については、時価のレベルごとの内訳等に関する事項を注記しないこととし、その場合、次の内容を注記する。

  • 基準価額を時価とみなす取扱いを適用しており、時価のレベルごとの内訳等に関する事項を注記していない旨
  • 基準価額を時価とみなす取扱いを適用した投資信託の貸借対照表計上額の合計額
  • ②の合計額に重要性がない場合を除き、②の期首残高から期末残高への調整表

(4)投資信託財産が金融商品である投資信託及び投資信託財産が不動産である投資信託の共通の取扱い(本公開草案第24-12項及び第49-14項)。

投資資産財産が金融商品と不動産の両方を含む場合、どちらの取扱いを適用するかは、投資信託財産に含まれる主要な資産等によって判断する。

3. 貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資の時価の注記に関する取扱いについて、以下の内容が提案されています(本公開草案第24-15項、第49-16項及び第49-17項)。

時価の注記を要しないこととし、その場合、次の内容を注記する。

  • (1)時価の注記を要しないとする取扱い(本公開草案第24-15項)を適用しており、時価の注記を行っていない旨
  • (2)時価の注記を要しないとする取扱い(本公開草案第24-15項)を適用した組合等への出資の貸借対諸表計上額の合計額

Ⅱ. 適用時期

2022年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度における年度末に係る連結財務諸表から適用すること提案されています。また、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用できることが提案されています。

なお、本公開草案が最終化された場合の本適用指針の適用初年度においては、本公開草案が定める新たな会計方針を将来にわたって適用し、その変更の内容について注記することが提案されています。

なお、本稿は本改正の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。

ASBJウェブサイト


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