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「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い(案)」のポイント

2020.06.09
EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 大竹 勇輝

<ASBJから2020年6月3日に公表>

2020年6月3日に、企業会計基準委員会(ASBJ)より、実務対応報告公開草案第59号「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い(案)」(以下「本公開草案」という。)が公表されています。

現在、2014年7月の金融安定理事会(FSB)による提言に基づく金利指標改革(以下「金利指標改革」という。)が進められています。そうした中、ロンドン銀行間取引金利(London Interbank Offered Rate。以下「LIBOR」という。)の公表が2021年12月末をもって恒久的に停止され、LIBORを参照している契約においては参照する金利指標の置換が行われる可能性が高まっています。LIBORを参照する取引は広範に行われているため、金利指標改革により多くの取引に影響が生じる可能性があることから、ASBJより、LIBORを参照する金融商品について必要と考えられるヘッジ会計に関する会計処理及び開示上の取扱いを明らかにするために、今般、本公開草案が公表されたものです。

本公開草案に対しては、2020年8月3日(月)までコメントが募集されています。

Ⅰ. 本公開草案の概要

1. 範囲(本公開草案第3項)

本公開草案は、LIBORを参照する金融商品について金利指標を置き換える場合に、その契約の経済効果が金利指標置換の前後で概ね同等となることを意図した金融商品の契約上のキャッシュ・フローの基礎となる金利指標を変更する契約条件の変更のみが行われる金融商品を適用範囲とすることが提案されています。

また、こうした契約条件の変更と同様の経済効果をもたらす契約の切替に関する金融商品も適用範囲とし、本実務対応報告公表日後に新たにLIBORを参照する契約を締結する場合も適用範囲に含まれることが提案されています。

2. 「金利指標置換時」等の定義(本公開草案第4項)

「金利指標置換時」とは、金利指標改革に起因して公表が停止される見通しであるLIBORに関して、ヘッジ対象の金融商品及びヘッジ手段の金融商品の双方の契約において後継の金利指標を基礎として計算が開始される時点をいう、とすることが提案されています。

また、「金利指標置換前」とは、上記の金利指標置換時よりも前の期間をいい、「金利指標置換後」とは、上記の金利指標置換時よりも後の期間をいう、とすることが提案されています。

3. 会計処理

金利指標改革に起因するLIBORの置換は、企業からみると不可避的に生じる事象であり、ヘッジ会計を定める企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)等の開発時には想定していなかったと考えられ、このような事態を想定して開発されていない金融商品会計基準等に基づいてヘッジ会計を終了又は中止した場合、取引の実態を適切に表さず、財務諸表利用者に対する有用な財務情報の提供につながらない可能性があると考えられるため、特例的な取扱いを定めることが提案されています(本公開草案第28項)。

(1) 金利指標置換前の会計処理

① ヘッジ対象又はヘッジ手段の契約の切替(本公開草案第5項)

本実務対応報告の適用範囲に含まれる金融商品をヘッジ対象又はヘッジ手段としてヘッジ会計を適用している場合、金利指標置換前においては、金利指標改革に起因する契約の切替が行われたときであっても、ヘッジ会計の適用を継続することができることが提案されています。

なお、上記の取扱いは、金利指標置換時及び金利指標置換後においても同様であることが提案されています。

② ヘッジ会計の原則的処理方法(繰延ヘッジ)

ⅰ. ヘッジ対象となり得る予定取引の判断基準(本公開草案第6項)

本実務対応報告の適用範囲に含まれる金融商品がヘッジ対象である予定取引が実行されるかどうかを判断するにあたって、金利指標置換前においては、ヘッジ対象の金利指標が、金利指標改革の影響を受けずLIBORから変更されないとみなすことができることが提案されています。

ⅱ. ヘッジ有効性の評価(本公開草案第7項及び題8項)

  • (ⅰ)事前テスト
    事前テストに関して、本実務対応報告の適用範囲に含まれる金融商品をヘッジ対象又はヘッジ手段としてヘッジ会計を適用する場合、金利指標置換前においては、ヘッジ対象及びヘッジ手段の参照する金利指標は金利指標改革の影響を受けず既存の金利指標から変更されないとの仮定を置いて実施できることが提案されています。
  • (ⅱ)事後テスト
    事後テストに関して、本実務対応報告の適用範囲に含まれる金融商品をヘッジ対象又はヘッジ手段としてヘッジ会計を適用する場合、金利指標置換前においては、事後テストにおける有効性評価の結果、ヘッジ有効性が認められなかった場合であってもヘッジ会計の適用を継続することができることが提案されています。

ⅲ. 包括ヘッジ(本公開草案第9項)

金利指標置換前においては、本実務対応報告の適用範囲に含まれる金融商品を含むグループをヘッジ対象として包括ヘッジを適用する場合、個々の資産又は負債のリスクに対する反応とグループ全体のリスクに対する反応が、ほぼ一様であると認められなかった場合であっても、包括ヘッジを適用できることが提案されています。

なお、上記の取扱いは、金利指標置換時及び金利指標置換後においても同様であることが提案されています。

③ 金利スワップの特例処理等(本公開草案第10項)

本実務対応報告の適用範囲に含まれる金融商品をヘッジ対象又はヘッジ手段として金利スワップの特例処理を適用する場合、会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」第178項③から⑤の条件を満たしているかどうかの判断にあたって、金利指標置換前においては、ヘッジ対象又はヘッジ手段の参照する金利指標は金利指標改革の影響を受けず既存の金利指標から変更されないとみなすことができることが提案されています。

④ 外貨建会計処理基準等における振当処理(本公開草案第11項)

本実務対応報告の適用範囲に含まれる金融商品をヘッジ対象又はヘッジ手段として振当処理を適用する場合、金利指標置換前においては、円貨でのキャッシュ・フローが固定されているかどうかの判断にあたって、ヘッジ対象及びヘッジ手段の参照する金利指標は金利指標改革の影響を受けず既存の金利指標から変更されないとみなすことができることが提案されています。

(2) 金利指標置換時の会計処理(本公開草案第12項)

ヘッジ会計の原則的処理方法(繰延ヘッジ)について、金利指標置換前において本実務対応報告の適用範囲に含まれる金融商品をヘッジ対象又はヘッジ手段としてヘッジ会計を適用していた場合、金利指標置換時において、当初のヘッジ会計開始時にヘッジ文書で記載したヘッジ取引日(開始日)、識別したヘッジ対象、選択したヘッジ手段等を変更したとしても、ヘッジ会計の適用を継続することができることが提案されています。

(3) 金利指標置換後の会計処理

① ヘッジ会計の原則的処理方法(繰延ヘッジ)(本公開草案第13項及び第14項)

金利指標置換前において本実務対応報告の適用範囲に含まれる金融商品をヘッジ対象又はヘッジ手段としてヘッジ会計を適用していた場合、事後テストに関する3(1)②ⅱ(ⅱ)の取扱いを適用していたか否かにかかわらず、金利指標置換時以後、当該取扱いを適用し、2023年3月31日以前に終了する事業年度までヘッジ会計を継続することができることが提案されています。

② 金利スワップの特例処理等(本公開草案第15項)

金利指標置換前において本実務対応報告の適用範囲に含まれる金融商品をヘッジ対象又はヘッジ手段としてヘッジ会計を適用していた場合、金利スワップの特例処理に関する3(1)③の取扱い及び振当処理に関する3(1)④の取扱いを適用していたか否かにかかわらず、金利指標置換時以後、当該取扱いを適用し、2023年以前に終了する事業年度まで金利スワップの特例処理及び振当処理の適用を継続することができることが提案されています。
また、これらの特例的な取扱いを継続している間、再度金利指標を置き換え、ヘッジ文書の記載を変更したとしても、金利スワップの特例処理又は振当処理の適用を継続することができることが提案されています。

なお、本公開草案最終化時には、金利指標の選択に関する実務や企業のヘッジ行動について不確実な点が多いため、本公開草案の最終化から約1年後に、金利指標置換後の取扱いについて再度確認する予定であることが提案されています(本公開草案第48項)。

4. 注記事項(本公開草案第16項)

報告日時点において本実務対応報告を適用することを選択した企業は、本実務対応報告を適用しているヘッジ関係の内容(ヘッジ会計の方法、ヘッジ手段、ヘッジ対象、ヘッジ取引の種類等)を注記することが提案されています。

また、本実務対応報告を一部のヘッジ関係にのみ適用する場合には、その理由を注記することが提案されています。

ただし、連結財務諸表において、上記の内容を注記している場合には、個別財務諸表において記載を要しないことが提案されています。

5. 適用時期等(本公開草案第17項及び第18項)

本実務対応報告は、公表日以後適用することができることが提案されています。

また、本実務対応報告を適用するにあたっては、ヘッジ関係ごとにその適用を選択できることが提案されています。

Ⅱ. 本公開草案に対するコメント

本公開草案に対するコメント募集に際し、以下の個別の質問が示されています。

  • [質問1] 適用範囲に関する提案に同意するか否か
  • [質問2] 金利指標置換前の特例的な取扱いに関する提案に同意するか否か
  • [質問3] 金利指標置換時の特例的な取扱いに関する提案に同意するか否か
  • [質問4] 金利指標置換後の特例的な取扱いに関する提案に同意するか否か
  • [質問5] 注意事項に関する提案に同意するか否か
  • [質問6] 適用時期等に関する提案に同意するか否か
  • [質問7] その他

なお、本稿は本公開草案の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。

ASBJウェブサイト


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