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2020年3月期 決算上の留意事項

2020.03.06
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士
髙平 圭、松下 洋、横井 貴徳
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開示府令編

Q16
改正開示府令の概要

2019年1月31日に公布、施行された開示府令の改正項目のうち、2020年3月期の有価証券報告書から適用となる項目の概要について教えてください。

A16

2019年1月31日に、改正開示府令が公布、施行されています。2018年6月に公表された金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告(以下「DWG報告」という。)における「財務情報及び記述情報の充実」、「建設的な対話の促進に向けた情報の提供」、「情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組」に関する提言を踏まえ、有価証券報告書等の記載内容の改正が行われています。2020年3月期の有価証券報告書から適用となる項目の概要は以下のとおりです。

(1) 財務情報及び記述情報の充実

  • 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題】について、市場の状況、競争優位性、主要製品・サービス、顧客基盤、販売網等に関する経営者の認識の説明を含めた記載を求めること
  • 【事業等のリスク】について、リスクが顕在化する可能性の程度や時期、リスクが顕在化した場合の経営成績等へ与える影響の内容、リスクへの対応策の説明を求めること
  • 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】において、会計上の見積りや見積りに用いた仮定について、見積り・不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響等、会計方針を補足する情報の記載を求めること

(2) 情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組

  • 【コーポレート・ガバナンスの状況等】の監査役監査の状況について、監査役会等の活動状況(開催頻度、主な検討事項等)の記載を求めること
  • 【コーポレート・ガバナンスの状況等】の会計監査の状況について、監査人による継続監査期間の記載を求めること
  • 【コーポレート・ガバナンスの状況等】の会計監査の状況について、監査人と同一のネットワークに属する組織に対する監査報酬及び非監査報酬の内容の記載を求めること(※)
  • 経過措置:2019年3月31日~2020年3月30日までの間に終了する年度は従前規定の適用が可能とされており、2019年3月期の有価証券報告書において当該経過措置を適用していた場合には、2020年3月期が適用初年度となります。
Q17
経営方針等、事業等のリスク、MD&A

改正開示府令のうち、有価証券報告書の【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】、【事業等のリスク】、【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】に与える具体的な影響はどのようなものでしょうか。

A17

今回の改正では、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】、【事業等のリスク】、【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】の開示に関して、経営者の認識に基づく開示を求めることなど、以下に記載のとおり、開示内容が拡充されており、2020年3月31日以後に終了する事業年度の有価証券報告書から適用となります。

(1) 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

改正後 従来
  • 最近日現在における連結会社の経営方針、経営戦略等の内容
    (連結会社の経営環境(例えば、企業構造、事業を行う市場の状況、競合他社との競争優位性、主要製品・サービスの内容、顧客基盤、販売網等)についての経営者の認識の説明を含め、主な事業の内容と関連付けて記載)
  • 最近日現在における連結会社の経営方針、経営戦略等の内容(経営方針・経営戦略等を定めている場合のみ)
  • 最近日現在における連結会社が優先的に対処すべき事業上、財務上の課題について、その内容、対処方針等を経営方針・経営戦略等と関連付けて具体的に記載
  • 最近日現在における連結会社が優先的に対処すべき事業上、財務上の課題についてその内容、対処方針等を具体的に記載

今回の改正により、経営方針等の内容として、経営環境についての経営者の認識の説明を含め、主な事業の内容と関連付けて記載することが求められます。これは、DWG報告で、「ビジネスモデルについても(中略)経営戦略と関連付けて説明し、投資家による経営戦略の適切性や実現可能性の考察にも資するものとすべき」という意見を反映したものです。

また、優先的に対処すべき事業上・財務上の課題について、その内容・対処方針等を経営方針等と関連付けて記載することも求められています。これは、DWG報告で、「経営戦略の実施状況や今後の課題もしっかりと示しながら、MD&AやKPI、リスク情報とも関連付けて、より具体的で充実した説明がなされるべき」という意見を反映したものです。

(2) 事業等のリスク

改正後 従来
  • 有価証券報告書等に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の経営成績等の状況に重要な影響を与えると認識している「主要なリスク」(右記(ⅰ)~(ⅴ))について
    イ)リスクが顕在化する可能性の程度や時期
    ロ)リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容
    ハ)リスクへの対応策

    など具体的に記載
  • リスクの重要性や経営方針・経営戦略等との関連性の程度を考慮して分かりやすく記載
  • 有価証券報告書等に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、
    (ⅰ) 連結会社の経営成績等の状況の異常な変動
    (ⅱ) 特定の取引先・製品・技術等への依存
    (ⅲ) 特有の法的規制・取引慣行・経営方針
    (ⅳ) 重要な訴訟事件等の発生
    (ⅴ) 役員・大株主・関係会社等に関する重要事項等、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項
    について、一括して具体的に、分かりやすく、かつ、簡潔に記載

今回の改正により、「主要なリスク」について、顕在化する可能性の程度や時期、経営成績等の状況に与える影響の内容、対応策を記載することが求められます(従来は「主要な」という文言はありませんでした。)。また、リスクの重要性や経営方針等・経営戦略等との関連性の程度を考慮して記載することになります。

これは、DWG報告で、「経営者視点からみたリスクの重要度の順に、発生可能性や時期・事業に与える影響・リスクへの対応策等を含め、企業固有の事情に応じたより実効的なリスク情報の開示を促していく必要がある」という意見を反映したものです。

(3) 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)

改正後 従来
  • 経営成績等の状況に関して、事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとに、経営者による認識、分析・検討内容を、経営方針等の内容のほか、有報に記載した他の項目の内容と関連付けて記載
  • キャッシュ・フローの状況の分析等の記載にあたっては、資金調達の方法及び状況並びに資金の主要な使途を含む資金需要の動向についての経営者の認識を含めて記載
  • 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り、見積りに用いた仮定のうち、重要なものについて、見積りにより経営成績等に生じる影響など、「経理の状況」に記載した会計方針を補足する情報を記載(記載すべき事項の全部又は一部を「経理の状況」の注記に記載した場合には、その旨を記載することで省略可)
  • 経営成績等の状況に関して、事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとに、経営者による認識、分析・検討内容を記載

今回の改正により、経営成績等の状況に関して、経営者による認識・分析・検討内容を、経営方針等の内容のほか、他の項目の内容と関連付けて記載することが求められます。これは、DWG報告で、「セグメント分析に際しては、経営管理と同じセグメントに基づいて、セグメントごとの資本効率も含め、セグメントの状況がより明確に理解できるような情報が開示されることが必要である」という意見を反映したものです。

また、キャッシュ・フローの状況の分析等の記載について、資金調達の方法・資金需要の動向についての経営者の認識を含めて記載することが求められます。これは、DWG報告で、「投資判断に不可欠な情報であり、どこからどのように資本やキャッシュを調達しているのか、経営戦略の遂行上、調達した資本やキャッシュをどのように設備投資や研究開発に振り分けていくのか、といった情報がより実効的に開示されるべき」という意見を反映したものです。

さらに、会計上の見積りや見積りに用いた仮定について、「経理の状況」に記載した会計方針を補足する情報の記載が求められています。これは、DWG報告で、「会計上の見積り・仮定は、投資判断・経営判断に直結するものであり、経営陣の関与の下、より充実した開示が行われるべき」という意見を反映したものです。

Q18
監査の状況

改正開示府令のうち、【コーポレート・ガバナンスの状況等】の「監査の状況」について、有価証券報告書に与える具体的な影響はどのようなものでしょうか。

A18

今回の改正により、【コーポレート・ガバナンスの状況等】の「監査の状況」の開示に関して、監査役会等の活動状況、監査人の継続監査期間などの開示が拡充されています。

(1) 監査役監査の状況(監査役会等の活動状況)

改正後 従来
以下の事項について具体的かつ分かりやすく記載
  • 監査役監査の組織
  • 監査役監査の人員
  • 監査役監査の手続
  • 最近事業年度における提出会社の監査役会等の活動状況(開催頻度、主な検討事項、個々の監査役の出席状況、常勤の監査役の活動等)
以下の事項について具体的かつ分かりやすく記載
  • 監査役監査の組織
  • 監査役監査の人員
  • 監査役監査の手続

今回の改正により、最近事業年度における監査役会等の活動状況(開催頻度、主な検討事項、個々の監査役の出席状況、常勤の監査役の活動等)の開示が求められています。

これは、DWG報告で、「監査役会等の具体的な活動状況は、監査役会等の実効性を判断する上で必要な情報である。監査人と監査役の連携状況等を理解するため、開催頻度や出席状況等の計数的な開示だけでなく、議論された内容や監査役会が監査人の指摘にどのように対応したか等も含まれるべきである」という意見を反映したものです。

(2) 会計監査の状況(継続監査期間)

改正後 従来
提出会社の監査公認会計士等が監査法人である場合
  • 当該監査法人の
    (ⅰ) 名称
    (ⅱ) 継続監査期間
  • 業務を執行した公認会計士の氏名
  • 監査業務に係る補助者の構成
提出会社の監査公認会計士等が公認会計士である場合 (略)
  • 業務を執行した公認会計士の
    (ⅰ) 氏名
    (ⅱ) 所属する監査法人名
    (ⅲ) 継続監査期間(7年を超える場合に限る。)
  • 監査業務に係る補助者の構成
  • 監査証明を個人会計士が行っている場合の審査体制

今回の改正により、監査公認会計士等が「監査法人である場合」と「公認会計士である場合」に分けて記載項目が定められています。また、監査法人である場合には、監査法人としての継続監査期間の開示が必須となっています。これは、DWG報告で、「監査法人におけるローテーション制度が導入されていない中、継続監査期間は、監査人の独立性を判断する観点から重要な情報である」という意見を反映したものです。

(3) 監査報酬の内容等(ネットワークベースの報酬、監査報酬の同意理由)

改正後 従来
  • 最近2連結会計年度において、提出会社及び提出会社の連結子会社がそれぞれ下記の者に支払った、又は支払うべき報酬(監査証明業務と非監査業務に区分して記載)
    (ⅰ) 監査公認会計士等
    (ⅱ) 監査公認会計士等と同一のネットワークに属する者
  • 最近2連結会計年度において、提出会社及び提出会社の連結子会社が下記の者に支払った、又は支払うべき報酬(監査証明業務と非監査業務に区分して記載)
    (ⅰ) 監査公認会計士等
  • ①に記載する報酬のほか、最近2連結会計年度において、連結会社の監査証明業務に基づく報酬として重要な報酬がある場合は、その内容を具体的かつ分かりやすく記載
  • ①に記載する報酬のほか、最近2連結会計年度において、連結会社の監査報酬等として重要な報酬がある場合は、その内容を具体的かつ分かりやすく記載(例えば、監査公認会計士等と同一のネットワークに属する者に対する報酬の内容)

従来、ネットワークベースの報酬は、重要な報酬の例として挙げられていました。今回の改正により、ネットワークベースの報酬の開示が必須となっており、監査証明業務と非監査業務に区分した開示(報酬を記載した非監査業務の内容を含む。)が求められています。これは、DWG報告で、「ネットワークベースの報酬額・業務内容は、監査人の独立性を判断する観点から重要な情報である」という意見を反映したものですが、2019年3月期は従前規定によることが認められていました。

Q19
継続監査期間

監査法人の継続監査期間の算定方法及び開示方法について、留意すべき事項を教えてください。

A19

継続監査期間の算定方法及び開示方法については、開示府令において明示的に定められておらず、2019年1月31日に公表された「「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」に対するパブリックコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」(以下「パブコメ回答」という。)のNo.36に記載された内容に沿った開示を行うことになると考えられます。

<パブコメ回答No.36要旨>

(1) 継続監査期間の算定方法

例えば、以下のとおり整理することが考えられます。

  • 提出会社が有価証券届出書提出前から継続して同一の監査法人による監査を受けている場合、有価証券届出書前の監査期間も含めて算定する
  • ②-ⅰ過去に提出会社において、合併、会社分割、株式交換及び株式移転があった場合であって、会計上の取得企業の監査公認会計士等が提出会社の監査を継続して行っているときは、当該合併等の前の監査期間も含めて算定する
  • ②-ⅱ過去に提出会社において、合併、会社分割、株式交換及び株式移転があった場合であって、会計上の被取得企業の監査公認会計士等が提出会社の監査を継続して行っているときは、当該合併等の前の監査期間は含めないものとして算定する
  • ③-ⅰ過去に監査法人において、合併があった場合、当該合併前の監査法人による監査期間も含めて算定する
  • ③-ⅱ提出会社の監査業務を執行していた公認会計士が異なる監査法人に異動した場合において、当該公認会計士が移動後の監査法人においても継続して提出会社の監査業務を執行するとき又は当該公認会計士の異動前の監査法人と異動後の監査法人が同一のネットワークに属するとき等、同一の監査法人が提出会社の監査業務を継続して執行していると考えられる場合には、当該公認会計士の異動前の監査法人の監査期間も含めて算定する
  • 基本的には、可能な範囲で遡って調査すれば足り、その調査が著しく困難な場合には、調査が可能であった期間を記載した上で、調査が著しく困難であったため、継続監査期間がその期間を超える可能性がある旨を注記する

(2) 継続監査期間の記載方法

「●年間」と記載する方法のほか、「●年以降」といった記載も考えられる

(1) 継続監査期間の算定方法

上記の考え方に照らし、以下のそれぞれのケースについて検討します。

<①について>
提出会社が上場前から継続して同一の監査法人を選任していた場合は、上場前の期間も継続期間に含めて算定するものと考えられます。また、非上場会社で有価証券報告書を提出している場合においても同様と考えられます。
なお、継続監査期間には、会社法単独の監査を実施していた期間も含まれ、さらに任意監査を実施していた期間も含まれると考えられます。

<②-ⅰ及び②-ⅱについて>
2社による合併のケースで、会計上の取得企業の監査法人が合併後の会社の監査を継続して行った場合、合併前の期間も含めて算定し、会計上の被取得企業の監査法人が合併後の会社の監査を継続して行った場合は、合併した年度を起点として算定するものと考えられます。また、株式移転で持株会社を設立する場合においても同様と考えられます。
なお、合併前の2社の監査法人が異なる監査法人であった場合で、2社による合併が、会計上、旧企業結合会計基準で認められていた持分プーリング法(以下「旧持分プーリング法」という。)によって行われていた場合には、取得企業がないことから、合併した年度を起点として算定するものと考えられます。

<③-ⅰについて>
提出会社の監査法人が他の監査法人と合併した場合、当該監査法人が会計上の取得企業、被取得企業いずれの場合でも、合併前の監査期間も含めて算定するものと考えられます。また、旧持分プーリング法による場合も同様と考えられます。

<③-ⅱについて>
提出会社の監査責任者であった公認会計士が、他の監査法人に異動し、その後も継続して提出会社の監査を担当しており、実質的に同一の監査法人により継続して監査が行われているものと考えられる場合には、当該公認会計士の異動前の監査法人の監査期間を含めて算定するものと考えられます。

<④について>
提出会社において現在の監査法人を選任した期の証拠資料(監査契約書、監査報告書など)が発見できなかった場合には、証拠資料が現存する最も古い期を起点として算定し、「調査が著しく困難であったため、継続監査期間がその期間を超える可能性がある」旨を注記するものと考えられます。

(2) 継続監査期間の開示方法

開示府令において、継続監査期間の記載方法は明示されておりません。したがって、パブコメ回答に記載されている(ア)「●年間」、(イ)「●年以降」のほか、(ウ)(1)の考え方に基づいて提出会社と監査法人の関係をより明確にするための記載方法も可能と考えられます。例えば、A社(取得企業、X監査法人が2001年3月期より担当)及びB社(被取得企業、Y監査法人が2006年3月期より担当)が株式移転の方法により、2010年4月に持株会社C社(X監査法人が担当)を設立した場合、2020年3月期の有価証券報告書においては以下の開示方法が考えられます。

<開示例>
(ア) 20年間
(イ) 2001年3月期以降
(ウ) 2011年3月期以降 (注)当社は2010年4月にA社及びB社による株式移転の方法により設立されておりますが、会計上の取得企業A社は2001年3月期以降、X監査法人を会計監査人に選任しています。

Q20
記述情報の開示に関する原則、記述情報の開示の好事例集

2019年3月19日に金融庁より公表された「記述情報の開示に関する原則」及び「記述情報の開示の好事例集」の概要について教えてください。

A20

(1) 記述情報の開示に関する原則(https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20190319.html

① 公表の経緯及び目的

金融庁は、DWG報告における提言を踏まえ、2019年3月19日に、「記述情報の開示に関する原則」(以下「本原則」という。)を公表しています。

DWG報告では、ルールへの形式的な対応にとどまらない開示の充実に向けた企業の取組みを促すため、開示の考え方、望ましい開示の内容や取組みをまとめたプリンシプルベースのガイダンスを策定すべきと提言されました。

本原則は、企業情報の開示に関する上記提言を踏まえ、財務情報以外の開示情報である、いわゆる「記述情報」について、開示の考え方、望ましい開示の内容や取組みをまとめたものです。このため、新たな開示事項を加えるものではありませんが、開示書類の作成・公表に関与する者(例えば、経営者、作成事務担当者、IR 担当者等)には、この原則に沿った開示が実現しているか、自主的な点検を継続することが期待され、また、投資家が企業との対話を行う際に利用することも有用と考えられる、とされています。

② 総論

本原則では、まず総論として、以下の原則を定めるとともに、それぞれの原則について、考え方及び望ましい開示に向けた取組みが示されています。

ⅰ 企業の情報開示における記述情報の役割

1-1. 記述情報は、財務情報を補完し、投資家による適切な投資判断を可能とする。また、記述情報が開示されることにより、投資家と企業との建設的な対話が促進され、企業の経営の質を高めることができる。このため、記述情報の開示は、企業が持続的に企業価値を向上させる観点からも重要である。企業は、記述情報及びその開示のこのような機能を踏まえ、充実した開示をすることが期待される。

ⅱ 記述情報の開示に共通する事項

【取締役会や経営会議の議論の適切な反映】

2-1. 記述情報は、投資家が経営の目線で企業を理解することが可能となるように、取締役会や経営会議における議論を反映することが求められる。

【重要な情報の開示】

2-2. 記述情報の開示については、各企業において、重要性(マテリアリティ)という評価軸を持つことが求められる。

【セグメントごとの情報の開示】

2-3. 記述情報は、投資家に対して企業全体を経営の目線で理解し得る情報を提供するために、適切な区分で開示することが求められる。

【分かりやすい開示】

2-4. 記述情報の開示に当たっては、その意味内容を容易に、より深く理解することができるよう、分かりやすく記載することが期待される。

③ 各論

次に、各論として、以下の開示項目について、考え方及び望ましい開示に向けた取組みが示されています。また、以下の開示項目は、2019年1月31日に公布、施行された改正開示府令により記載が求められる事項として示されています。

ⅰ 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

1-1. 経営方針・経営戦略等
1-2. 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
1-3. 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

ⅱ 事業等のリスク

ⅲ 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)

3-1. MD&Aに共通する事項
3-2. キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資本の流動性に係る情報
3-3. 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

(2) 記述情報の開示の好事例集(https://www.fsa.go.jp/news/r1/singi/20191220.html

① 公表の経緯及び目的

金融庁は、DWG報告における提言を踏まえ、2019年3月19日に、「記述情報の開示の好事例集」(以下「好事例集」という。)を公表しています。

我が国の開示内容の充実を図る上では、開示に関するルールやプリンシプルベースのガイダンスの整備に加え、適切な開示の実務の積上げを図る取組みも必要と考えられることから、金融庁は、投資家・アナリスト及び企業による開示の好事例(ベストプラクティス)収集のための勉強会を開催し、当該勉強会において投資家・アナリストから紹介された開示例を好事例集として取りまとめました。

② 内容

本好事例集には、本原則に対応する形で、各開示例のよいポイントが示されています。また、有価証券報告書における開示例に加え、任意の開示書類における開示例のうち、有価証券報告書における開示の参考となり得るものも含められています。これらの開示例を参考に、本原則に即した有価証券報告書の開示の充実が図られることが期待されています。

なお、本好事例集は随時更新を行うとともに、必要に応じて、本原則に反映していくことにより、開示内容全体のレベルの向上を図ることとされており、2019年11月及び12月に内容の更新が行われています。

Q21
その他の改正項目

2020年3月期の有価証券報告書に影響のあるその他の開示府令の改正項目について教えてください。

A21

2019年12月12日に開示府令の改正案が公表され、IFRS任意適用の拡大促進の観点から、指定国際会計基準を適用する企業の開示負担の軽減等を図ることを目的とした改正が提案されています。具体的には、有価証券報告書の「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」で開示が求められていたIFRS任意適用企業における主要項目についての日本基準との差異に関する事項(当該差異の概算額等)について、継続的な開示を廃止し、IFRS適用初年度においてのみ、当該事項を記載することが提案されています。本改正は、公布日から施行され、2020年3月期の有価証券報告書から適用されることが提案されています。改正の概要は、<図表>のとおりです。

<図表> 改正の概要 (クリックすると拡大します)

図表1 IFRS第16号「リース」の変更イメージ
(出典:金融庁ウェブサイト)

連結納税制度の見直し(グループ通算制度)編

Q22
グループ通算制度の税効果会計への影響

連結納税制度の見直し(グループ通算制度の導入)を含む、令和2年度税制改正法案が国会に提出されています。2020年3月31日までに国会で可決、成立した場合、税効果適用指針44項に従って、グループ通算制度の適用を前提として税効果会計の適用を行う必要があるのでしょうか。

A22

税効果適用指針44項では、繰延税金資産及び繰延税金負債の額は、決算日において国会で成立している税法に規定されている方法に基づいて将来の会計期間における減額税金又は増額税金の見積額を計算することとされています。

この点、連結納税制度を適用する場合の税効果会計の適用に関する取扱いは、実務対応報告第5号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」(以下「実務対応報告第5号」という。)及び実務対応報告第7号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その2)」(以下、実務対応報告第5号と合わせて「実務対応報告第5号等」という。)に定められています。

ここで、令和2年度税制改正法案では、企業グループ全体を一つの納税単位とする現行制度に代えてグループ通算制度が導入されますが、納税主体を連結グループから個別法人に変更するという、基本的な仕組みが変更されるものと考えられます。

しかしながら、税効果適用指針44項に従って税効果会計の適用を行う場合、グループ通算制度に基づいた税効果会計の考え方の整理を行う必要があります。このためには、政省令、税務通達に関する情報が必要となる可能性があり、また、会計上の論点の検討には一定の時間を要すると考えられます。

このため、ASBJから、2020年2月13日、グループ通算制度税効果取扱い案が公表され、以下の提案がなされています。

  • 改正法人税法の成立日以後に終了する事業年度の決算(四半期決算を含む。)におけるグループ通算制度の適用を前提とした税効果会計における繰延税金資産及び繰延税金負債の額については、グループ通算制度への移行及びこれに合わせて単体納税制度の見直しが行われた項目につき、税効果適用指針44項の定めを適用せず、令和2年度税制改正が行われる前の税法の規定に基づくことができるとする特例的な取扱いを定める
  • 改正法人税法の成立日の属する事業年度において連結納税制度を適用している企業及び改正法人税法の成立日より後に開始する事業年度から連結納税制度を適用する企業を対象とする
  • 特例的な取扱いを適用する期間は、実務対応報告第5号等に関する必要な改廃をASBJが行うまでの間とする
  • 特例的な取扱いを適用した場合、その旨を注記する

上記の特例的な取扱いについて、例えば、繰越欠損金に重要性のない企業では、特例的な取扱いを適用する必要のない場合が生じることも考えられるため、選択適用とすることが提案されています。本公開草案のとおりに公表議決された場合には、令和2年度税制改正法案が、2020年3月31日までに国会で可決、成立した場合であっても、令和2年度税制改正が行われる前の税法の規定に基づくことができることになります。

なお、改正法人税法ではグループ通算制度への移行にあわせて単体納税制度についても以下の見直しが行われています。

  • 受取配当等の益金不算入制度
  • 寄付金の損金不算入制度
  • 貸倒引当金の対象となる金銭債権の範囲
  • 資産の譲渡に係る特別控除額の特例

当該見直しは、グループ通算制度への移行を前提として設けられたものであるため、特例的な取扱いの対象に含めることが提案されています。

ここで、単体納税制度における当該見直しは、グループ通算制度を適用しない企業も対象となります。しかし、グループ通算制度税効果取扱い案における特例的な取扱いは、グループ通算制度の適用を前提とする場合の取扱いであることから、グループ通算制度の適用を前提としない企業には、適用されないと考えられます。

したがって、グループ通算制度の適用を前提としない企業は、令和2年度税制改正法案が2020年3月31日までに成立した場合、改正後の税法に基づいて、税効果適用指針44項の定めを適用することになると考えられる点には留意が必要です。

会社法編

Q23
会社法改正の概要

2019年12月の会社法の改正の概要はどのようなものでしょうか。

A23

2019年12月4日に「会社法の一部を改正する法律」(以下「改正会社法」という。)が成立し、同月11日に公布されました。公布日(2019年12月11日)から1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日(2020年後半頃から2021年前半頃)から施行されますが、次の事項については、公布の日から3年6か月を超えない範囲内において政令で定める日(2022年から2023年頃)から施行されます。

  • 株主総会資料の電子提供制度の創設
  • 会社の支店の所在地における登記の廃止

改正会社法は、2020年3月期の決算に直接的な影響はありませんが、今後の決算やその手続に影響を及ぼす可能性のある項目は次のとおりです。

(1) 株主総会に関する規律の見直し

項目 背景 改正の概要
株主総会資料の電子提供制度の創設 現行法上、インターネット等を用いて株主総会資料を株主に提供するためには、株主の個別の承諾が必要 株主総会資料をウェブサイトに掲載し、株主に対してそのアドレス等を書面で通知する方法により、株主総会資料を株主に提供することができる制度を新たに設ける

(2) 取締役に関する規律の見直し

項目 背景 改正の概要
取締役の報酬に関する規律の見直し 取締役の個人別の報酬の内容は、取締役会又は代表取締役が決定していることが多い。報酬は取締役に適切な職務執行のインセンティブを付与する手段となり得るものであり、これを適切に機能させ、その手続を透明化する必要がある
  • 上場会社等の取締役会は、取締役の個人別の報酬等に関する決定方針を定めなければならない
  • 上場会社が取締役又は執行役の報酬等として株式の発行等をする場合は、金銭の払込み等を要しない

(3) その他

項目 背景 改正の概要
株式交付制度の創設 現行法上、自社の株式を対価として他の会社を子会社とする手段として株式交換の制度があるが、完全子会社とする場合でなければ利用することができない。他方、自社の新株発行等と他の会社の株式の現物出資という構成をとる場合には、手続が複雑でコストが掛かるという指摘がされている 完全子会社とすることを予定していない場合であっても、株式会社が他の株式会社を子会社とするため、自社の株式を他の株式会社の株主に交付することができる制度を新たに設ける
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