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2019年6月第1四半期 決算上の留意事項

2019.07.12
EY新日本有限責任監査法人 会計情報トピックス
加藤 圭介、鈴木 真策、村田 貴広

実務対応報告18号等(2018年改正)

Q1
2018年改正の実務対応報告18号等の改正の概要

2018年に改正された実務対応報告18号等の概要等はどのようなものでしょうか。

A1

(1) 実務対応報告18号の当面の取扱い

連結財務諸表を作成する場合、同一環境下で行われた同一の性質の取引等について、親会社及び子会社が採用する会計方針は原則として統一するとされています(連結会計基準17項)。

ただし、在外子会社の財務諸表がIFRS又は米国会計基準に準拠して作成されている場合、当面の間、それらを連結決算手続上利用することができるものとするとされています。この場合であっても、のれんの償却など5項目については、当該修正額に重要性が乏しい場合を除き、連結決算手続上、当期純利益が適切に計上されるよう当該在外子会社等の会計処理を修正しなければならないとされています(実務対応報告18号 当面の取扱い)。これは当該項目のIFRS又は米国会計基準に準拠した会計処理が、我が国の会計基準に共通する考え方と乖離(かいり)するものであり、一般に当該差異に重要性があるため、修正なしに連結財務諸表に反映することは合理的でなく、その修正に実務上の支障は少ないと考えられたことによるものです(実務対応報告18号 本実務対応報告の考え方)

なお、実務対応報告18号で示される「修正5項目」以外についても、「明らかに合理的でないと認められる場合」には、連結決算手続上で修正を行う必要があることに留意するとされています(実務対応報告18号 当面の取扱い)。

(2) 2018年改正の概要

在外子会社等においてIFRS第9号を適用し、資本性金融商品の公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示する選択をしている場合、売却損益及び減損損失の累計額は、その他の包括利益に表示され、純損益への組替調整は行われません。このため、今回の改正において、これらの組替調整を修正項目として追加することとされています<図表1参照>。また、持分法適用関連会社において実務対応報告第18号に準じて処理を行う場合にも、当該修正を行うことになります。

なお、本改正は2019年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から原則適用となっています。

<図表1> 2018年改正により追加された修正項目

項目 日本基準 IFRS 実務対応報告18号の取扱い(※2)
資本性金融商品 評価差額をその他の包括利益(OCI)に計上(リサイクリングあり(※1)) 評価差額を当期の損益又はOCIに計上(リサイクリングなし) 評価差額をOCIに計上している場合、売却損益相当額及び減損損失相当額を当期の損益として修正
  • (※1)売却時又は減損時に、累積されたOCIを当期の損益に計上すること
  • (※2)「当面の取扱い」によりIFRSに準拠して作成された在外子会社等の財務諸表を連結決算手続上利用する場合

(3) 適用初年度の取扱い

実務対応報告18号等の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱われることになります。ただし、以下の経過措置が認められています。

  • 会計方針の変更による累積的影響額を当該適用初年度の期首時点の利益剰余金に計上することができる
  • 上記の場合、在外子会社等においてIFRS第9号を早期適用しているときには、遡及(そきゅう)適用した場合の累積的影響額を算定する上で、実務対応報告18号等の適用初年度の期首時点で減損の判定ができる

実務対応報告18号等(2019年改正)

Q2
2019年改正の実務対応報告18号等の概要

2019年に改正された実務対応報告18号等の概要等はどのようなものでしょうか。

A2

すべてのリースについて資産及び負債を認識するIFRS第16号が2019年1月1日以後開始する事業年度の期首から適用され(Topic842は2018年12月15日より後に開始する年度の期首から(非公開企業では2019年12月15日より後に開始する年度の期末から(四半期決算はその翌年度の第1四半期から)))、3月決算会社では2019年6月の第1四半期より在外子会社等でIFRS第16号等の適用が開始されることから、実務対応報告18号においてIFRS第16号等について、修正国際会計基準における評価を踏まえて修正項目として追加することが適当か否かの検討が行われました。

この点、IFRS第16号のすべてのリースについて資産及び負債を認識する処理及び費用処理(利息処理)については、改正修正国際基準の「公表にあたって」において、「我が国における企業評価の実務において、オペレーティング・リースを企業が借入金等で資金を調達して設備投資することと経済的な実態に違いはないと捉えて財務情報の調整を行っている例が見られるため、IFRS第16号の費用認識モデルの論拠のようにオペレーティング・リースを資金提供を含む取引として捉えて費用認識することには相応の有用性が認められると考えられる」と評価しています。実務対応報告18号の改正の審議においては、上記の修正国際基準の評価を参考に、IFRS第16号等に基づく会計処理の考え方が、我が国の会計基準に共通する考え方と乖離するか否かについて検討が行われた結果、IFRS第16号等における会計処理を修正項目としないことを内容とする実務対応報告18号の改正が2019年6月28日に公表され、同日以後適用されています。

したがって、実務対応報告18号の「当面の取扱い」を適用し、在外子会社がIFRS又は米国会計基準に準拠して会計処理を行った財務諸表を連結決算手続上で取り込んでいる場合、IFRS第16号等のリース取引を「日本基準」(リース取引会計基準)に修正することなく、オンバランスされた在外子会社のリース取引が親会社の連結財務諸表に取り込まれることになります。

Q3
IFRS第16号及びTopic842の概要

2019年改正の実務対応報告18号により、IFRS16号等が適用された在外子会社の財務諸表を親会社の連結決算上で修正なしに利用することとされていますが、IFRS第16号及びTopic842の概要を教えてください。

A3

(1) IFRS第16号の概要

IFRS第16号は、2019年に開始する事業年度から適用される新しい基準です。

従来のリース基準における借手は、リースをファイナンス・リースとオペレーティング・リースに区分していましたが、IFRS第16号ではこの区分がなくなり、基本的には、すべてのリースを貸借対照表に認識するようになります。したがって、IFRS第16号を適用すると、賃借不動産、車両、社宅などに関して、資産や負債が認識されることになる可能性があります。

この際に借手は、リース料の支払義務である「リース負債」と、リース期間にわたって原資産を使用する権利である「使用権資産」を認識します。

「リース負債」は、リース期間にわたって支払われるリース料総額の割引現在価値に基づいて測定します。「使用権資産」は、リース負債に前払リース料、リース・インセンティブ、当初直接コスト、および原状回復の見積コストを調整した金額により測定します。したがって、IFRS第16号の適用によって、貸借対照表の資産及び負債が増加することになります。

一方で、利息の計上に伴ってリース負債を増額し、リース料の支払に伴ってリース負債を減額します。また、使用権資産は、IAS第16号「有形固定資産」に従って減価償却を行います。リース負債の認識に伴う支払利息が発生することにより、借手のリースに係る費用は、リース負債の残高の多いリース期間の初期においてより多く生じることになります。これにより、IFRS第16号ではリース費用がリース期間において前加重になるといわれます<図表2参照>。

また、この基準書を適用する際には、いくつかの移行措置が認められています。おおまかに区分すると、リースを契約した時まで遡(さかのぼ)って会計処理をする完全遡及適用アプローチと、適用した期の期首時点の情報を用いて会計処理をする修正遡及適用アプローチが認められています。

<図表2> IFRS第16号「リース」の変更イメージ

図表2 IFRS第16号「リース」の変更イメージ

(2) Topic842の概要

Topic842は、米国財務会計基準審議会(FASB)が公表した新たなリース会計基準で、米国の公開企業は2018年12月15日より後に開始する事業年度及びその四半期決算より、米国の非公開企業は2019年12月15日より後に開始する事業年度の年度末及び四半期決算はその翌年度(2020年12月15日より後に開始する事業年度の四半期決算)から本基準を適用します。いずれの企業であっても、本基準を早期適用することが可能です。

Topic842における借手の会計処理に関して、IFRS第16号と同様に、基本的にすべてのリースについて「リース負債」と「使用権資産」を貸借対照表に認識することになります。なお、IFRS第16号とは異なり、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分は維持されます。

Topic842におけるファイナンス・リースについては、基本的にIFRS第16号と同様の会計処理となります。オペレーティング・リースについては、リース開始日のリース負債と使用権資産の測定はファイナンス・リースと同様となりますが、リース開始日後は、毎期末同じ割引率を用いて未払リース料の現在価値でリース負債を測定し、使用権資産は、リース期間を通してその時点でのリース負債に前払又は未払のリース料、受領したリース・インセンティブの残存金額、未償却の初期直接費用、使用権資産の減損金額を加減して測定します。なお、それぞれの費用認識の方法及びタイミングは従前の基準(Topic840)と変更はありません。つまり、ファイナンス・リースでは減価償却費と金利費用を別々に認識し、オペレーティング・リースではリース費用のみを認識することになります<図表3参照>。

本基準適用に際しては、IFRS第16号と同様に、いくつかの経過措置が認められています。原則として修正遡及アプローチにより、適用初年度の比較年度として表示されるすべての会計期間に遡って適用することが求められますが、Topic842の発効日を適用開始日とする緩和措置を選択することも可能です。緩和措置を選択した場合は、適用初年度の比較情報については修正再表示を行わず、移行に伴う累積的影響を適用開始日に認識することになります。

<図表3> Topic842「リース」の変更イメージ

図表3 Topic842「リース」の変更イメージ
Q4
決算期が相違している在外子会社等のIFRS第16号の適用時期

親会社が3月決算、在外子会社が12月決算であり、当該子会社の3カ月ズレの決算をそのまま連結決算に取り込んでいる場合、及び連結決算日に仮決算を行って取り込んでいる場合の連結財務諸表におけるIFRS第16号の適用時期はいつになりますか。

A4

(1) 在外子会社の3カ月ズレの決算を連結決算上そのまま取り込んでいる場合

在外子会社の個別決算上はIFRS第16号の適用時期の定めに従い、2019年12月期の期首からIFRS第16号を適用することになります。12月末決算の在外子会社の決算を基本的にそのまま取り込んでいる場合、2019年12月期の期首からIFRS第16号が原則適用となった当該子会社の決算を連結決算に取り込む形となるため、親会社の連結財務諸表においては、2020年3月期の第1四半期から、在外子会社でIFRS第16号が適用された財務諸表を取り込むことになります。

(2) 連結決算日に仮決算を行って取り込んでいる場合

(1) のとおり、在外子会社の個別決算上はIFRS第16号の適用時期の定めに従い、2019年12月期の期首からIFRS第16号を適用することになります。ただし、連結決算日は親会社の会計期間を基礎として決定されることから(連結会計基準15項)、会計基準の適用も親会社の連結会計年度ベースで決定されると考えられます。このため、12月決算会社を連結決算日に仮決算を行って取り込んでいる場合、親会社の連結財務諸表の観点からは、2019年1月1日以後開始する連結会計年度、すなわち、2020年3月期の期首からIFRS第16号を原則適用することになると考えられます。したがって、連結決算日に仮決算を行って取り込んでいる場合でも連結財務諸表においてIFRS第16号が適用されるのは、2020年3月期の第1四半期決算からとなります。

Q5
四半期連結財務諸表における表示

在外子会社がIFRS第16号等を適用し、使用権資産を計上している場合、四半期連結財務諸表における表示科目を教えてください。

A5

IFRS第16号等では、借手のリース取引において「使用権資産」や「リース負債」などの新たな表示科目が使われます。実務対応報告18号は会計処理を定めるものであり、連結財務諸表の表示、注記は原則として連結会計基準や連結財務諸表規則等に従うとされていますが(実務対応報告公開草案第44号『連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い(案)』に対するコメント コメント対応(2))、我が国における会計基準や開示規則上、連結子会社等がIFRS第16号等を適用したときの表示に関する明文の規定はありません。したがって、基本的には各企業において、従来の表示方法との整合性や重要性等を踏まえ、適切な表示方法を検討する必要があると考えられます。

なお、四半期連結貸借対照表における「使用権資産」の表示については、以下の方法が考えられます。

(1) 有形固定資産として表示する場合

  • 「有形固定資産」として一括掲記
  • 有形固定資産の「使用権資産」として表示
  • 有形固定資産のそれぞれの科目に含めて表示(従前からそれぞれの科目に含めていた場合)
  • 有形固定資産の「リース資産」に含めて表示(従前からそれぞれの科目に含めず、「リース資産」として表示していた場合)

(2) 無形固定資産として表示する場合

  • のれんがある場合には「その他」として表示
  • のれんの重要性が乏しい場合には「無形固定資産」として一括表示
  • 無形固定資産に「使用権資産」として表示
Q6
IFRSや米国会計基準の改訂が行われたときの会計処理・開示上の取扱い

実務対応報告18号等の当面の取扱いを適用し、IFRSや米国会計基準により作成された連結子会社等の財務諸表を基礎に連結財務諸表を作成している場合、準拠しているIFRSや米国会計基準の改訂が行われたときには、四半期連結財務諸表上も会計方針の変更として取り扱う必要がありますか。

A6

実務対応報告18号等の当面の取扱いを適用し、IFRSや米国会計基準により作成された連結子会社及び持分法適用会社(以下、これらを合わせて「連結子会社等」という。)の財務諸表を基礎に連結財務諸表を作成している場合において、連結子会社等の財務諸表が適用しているIFRSや米国会計基準の改訂が行われたときには、連結財務諸表においても会計方針の変更として取り扱われ、重要性に応じて会計方針の変更の注記の要否を検討する必要があります。

したがって、連結子会社等におけるIFRS第16号又はTopic842の適用による影響が連結財務諸表上も重要性がある場合には、四半期連結財務諸表において会計基準等の改正等による会計方針の変更に準じて、当該会計基準等の名称、当該会計方針の変更の内容、税金等調整前四半期純損益金額に対する前連結会計年度の対応する四半期連結累計期間における影響額及びその他の重要な項目に対する影響額、経過措置を適用した場合、その旨及び当該経過的な取扱いの概要、将来に影響を及ぼす可能性がある場合にはその旨、影響額を記載することに留意が必要です。

なお、すでにIFRS第16号等が適用されている連結子会社等の連結財務諸表を利用しているケースとして、12月決算会社の第1四半期連結財務諸表では以下のような記載がなされています。

  • IFRS第16号、Topic842を第1四半期連結会計期間から適用している旨
  • IFRS第16号、Topic842の経過措置を適用した場合、その旨及び当該経過的な取扱いの概要、影響額
  • これに伴い、借手のリース取引について、原則としてすべてのリースについて使用権資産及びリース負債を認識している旨
  • 四半期連結貸借対照表、四半期連結損益計算書等に対する影響額

情報量は適当ですか?

文章はわかりやすいですか?

参考になりましたか?