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2019年3月期 決算上の留意事項

2019.02.28
(2019.04.16更新)
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士
鈴木 真策、村田 貴広、横井 貴徳
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仮想通貨取扱い編

Q16
仮想通貨利用者の会計処理と開示

仮想通貨利用者が当期から仮想通貨取扱いを適用する場合の(連結)財務諸表上の会計処理と開示の概要を教えてください。

A16

仮想通貨取扱いは、2018年4月1日以後開始する事業年度の期首から原則適用されるため、3月末決算の(連結)財務諸表作成会社では、当期から原則適用されます。なお、自己(自己の関係会社を含む。)の発行した仮想通貨は、仮想通貨取扱いの適用対象とはされません。

(1) 仮想通貨利用者が保有する仮想通貨の会計処理

① 会計処理

仮想通貨利用者が保有する仮想通貨の会計処理は<図表>のとおりです(仮想通貨取扱い5項~7項)。

<図表> 期末における仮想通貨の評価に関する会計処理

  活発な市場が存在する場合 活発な市場が存在しない場合
貸借対照表価額 市場価格に基づく価額 取得原価
処分見込価額(※) < 取得原価の場合は処分見込価額
貸借対照表価額と帳簿価額との差額の処理 当期の損益 処分見込価額(※) < 取得原価の場合、その差額は当期の損失

(※) ゼロ又は備忘価額を含みます。

② 「活発な市場が存在する場合」

「活発な市場が存在する場合」とは、保有する仮想通貨について、継続的に価格情報が提供される程度に仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われている場合をいいます(仮想通貨取扱い8項)。

活発な市場が存在する仮想通貨が、活発な市場が存在しない仮想通貨となった場合、活発な市場が存在しない仮想通貨となる前に最後に観察された市場価格に基づく価額をもって取得原価とし、評価差額は当期の損益として処理します。活発な市場が存在しない仮想通貨となった後の期末評価は、活発な市場が存在しない仮想通貨として行います(仮想通貨取扱い11項)。また、活発な市場が存在しない仮想通貨が、その後、活発な市場が存在する仮想通貨となった場合、その後の期末評価は、活発な市場が存在する仮想通貨として行うことになります(仮想通貨取扱い12項)。

③ 活発な市場が存在する仮想通貨の市場価格

仮想通貨利用者において、活発な市場が存在する仮想通貨の期末評価は、保有する仮想通貨の種類ごとに、通常使用する自己の取引実績の最も大きい仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所における取引価格を用いることとされています(仮想通貨取扱い9項)。

④ 仮想通貨の売却損益の認識時点

仮想通貨の売却損益は、当該仮想通貨の売買の合意が成立した時点において認識します(仮想通貨取扱い13項)。

(2) 適用初年度の取扱い

仮想通貨取扱いの適用は、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱われますが、適用初年度における経過的な取扱いが定められていないことから、新たな会計方針を過去のすべての期間に遡及適用する必要があります(過年度遡及会計基準6項(1))。会計方針の変更により遡及適用がなされたことによる影響は、比較年度(2018年3月期)の期首(会社法における(連結)計算書類においては2019年3月期の期首)に反映され、当該影響については、会計方針の変更の影響額として注記することを検討することになります。

(3) 開示

① 表示

仮想通貨利用者が仮想通貨の売却取引を行う場合、当該仮想通貨の売却取引に係る売却収入から売却原価を控除して算定した純額を損益計算書に表示することとされています(仮想通貨取扱い16項)。

② 注記

仮想通貨利用者が期末日において保有する仮想通貨について、次の事項を注記することとされています(仮想通貨取扱い17項本文)。

  • 仮想通貨利用者が期末日において保有する仮想通貨の貸借対照表価額の合計額
  • 仮想通貨利用者が期末日において保有する仮想通貨について、活発な市場が存在する仮想通貨と活発な市場が存在しない仮想通貨の別に、仮想通貨の種類ごとの保有数量及び貸借対照表価額

ただし、貸借対照表価額が僅少な仮想通貨については、貸借対照表価額を集約して記載することができます(仮想通貨取扱い17項また書き)。

Q17
仮想通貨交換業者の会計処理と開示

仮想通貨交換業者が当期から仮想通貨取扱いを適用する場合の(連結)財務諸表上の会計処理及び開示の概要を教えてください。

A17

仮想通貨交換業者においては、仮想通貨交換業者自ら仮想通貨を保有する場合と、仮想通貨交換業者が預託者から預かっている場合とで会計処理や開示が異なります。

(1) 仮想通貨交換業者が保有する仮想通貨の会計処理

① 会計処理及び仮想通貨の売却損益の認識時点

会計処理及び売却損益の認識時点については、仮想通貨利用者が保有する仮想通貨の会計処理と同様です(Q12 (1)①、④参照)。

② 「活発な市場が存在する場合」及び活発な市場が存在する仮想通貨の市場価格

「活発な市場が存在する場合」の判断規準については、仮想通貨利用者の保有する仮想通貨と同様です(Q12 (1)③参照)。

ただし、仮想通貨交換業者においては、通常使用する自己の取引実績の最も大きい仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所が自己の運営する仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所である場合、当該仮想通貨交換業者は、自己の運営する仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所における取引価格等が「公正な評価額」を示している市場価格であるときに限り、時価として期末評価に用いることができます(仮想通貨取扱い10項)。

(2) 仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨の会計処理

① 仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨に係る資産及び負債の認識

仮想通貨交換業者は、預託者との預託の合意に基づいて仮想通貨を預かった時に、預かった仮想通貨を預かった時の時価により資産として認識します。

また、これと同時に、預託者に対する返還義務を負債として認識しますが、当該負債の当初認識時の帳簿価額は、預かった仮想通貨に係る資産の帳簿価額と同額とします(仮想通貨取扱い14項)。

② 仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨に係る期末の資産の評価及び負債の貸借対照表価額

仮想通貨交換業者は、預託者から預かった仮想通貨に係る資産の期末の帳簿価額について、仮想通貨交換業者自身が保有する同一種類の仮想通貨から簿価分離した上で、活発な市場が存在する仮想通貨と活発な市場が存在しない仮想通貨の分類に応じて、仮想通貨交換業者の保有する仮想通貨と同様の方法により評価を行います。

また、預託者への返還義務として計上した負債の期末の貸借対照表価額を、対応する預かった仮想通貨に係る資産の期末の貸借対照表価額と同額とし、預託者から預かった仮想通貨に係る資産及び負債の期末評価からは損益は計上されません(仮想通貨取扱い15項)。

(3) 適用初年度の取扱い

仮想通貨交換業者における仮想通貨取扱いの適用初年度の取扱いは、仮想通貨保有業者の場合と同様です(Q6 (2)参照)。

(4) 開示

① 表示

仮想通貨交換業者が仮想通貨の売却取引を行う場合も、仮想通貨利用者と同様に、当該仮想通貨の売却取引に係る売却収入から売却原価を控除して算定した純額を損益計算書に表示します(仮想通貨取扱い16項)。

② 注記

仮想通貨交換業者が期末日において保有する仮想通貨及び預託者から預かっている仮想通貨については、次の事項を注記することとされています(仮想通貨取扱い17項本文)。

  • 仮想通貨交換業者が期末日において保有する仮想通貨の貸借対照表価額の合計額
  • 仮想通貨交換業者が預託者から預かっている仮想通貨の貸借対照表価額の合計額
  • 仮想通貨交換業者が期末日において保有する仮想通貨について、活発な市場が存在する仮想通貨と活発な市場が存在しない仮想通貨の別に、仮想通貨の種類ごとの保有数量及び貸借対照表価額

ただし、仮想通貨交換業者は、仮想通貨交換業者自身が期末日において保有する仮想通貨の貸借対照表価額の合計額と預託者から預かっている仮想通貨の貸借対照表価額の合計額を合算した額が、資産総額に比して僅少な仮想通貨については、貸借対照表価額を集約して記載することができます(仮想通貨取扱い17項ただし書き)。

実務対応報告18号編

Q18
実務対応報告18号等の改正の概要

実務対応報告18号等は2018年に改正されましたが、改正の概要等はどのようなものでしょうか。

A18

2018年9月14日に実務対応報告18号等の改正が公表され、2019年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から原則適用となりますが、公表日以後最初に終了する連結会計年度及び四半期連結会計期間から早期適用することができます。

(1) 改正の概要

在外子会社等において国際財務報告基準(IFRS)第9号「金融商品」(以下「IFRS第9号」という。)を適用し、資本性金融商品の公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示する選択をしている場合、売却損益及び減損損失の累計額は、その他の包括利益に表示され、純損益への組替調整は行われません。このため、今回の改正において、これらの組替調整を修正項目として追加することとされています(<図表>参照)。また、持分法適用関連会社において実務対応報告第18号に準じて処理を行う場合にも、当該修正を行うことになります。

<図表> 追加された修正項目

項目 日本基準 IFRS 実務対応報告18号の取扱い(※2)
資本性金融商品 評価差額をその他の包括利益(OCI)に計上(リサイクリングあり(※1) 評価差額を当期の損益又はOCIに計上(リサイクリングなし) 評価差額をOCIに計上している場合、売却損益相当額及び減損損失相当額を当期の損益として修正

(※1) 売却時又は減損時に、累積されたOCIを当期の損益に計上すること
(※2) 「当面の取扱い」によりIFRSに準拠して作成された在外子会社等の財務諸表を連結決算手続上利用する場合

(2) 適用初年度の取扱い

改正実務対応報告18号等の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱われることになります。ただし、以下の経過措置が認められています。

  • 会計方針の変更による累積的影響額を当該適用初年度の期首時点の利益剰余金に計上することができる
  • 上記の場合、在外子会社等においてIFRS第9号を早期適用しているときには、遡及適用した場合の累積的影響額を算定する上で、2018年改正実務対応報告の適用初年度の期首時点で減損の判定ができる
Q19
IFRSや米国会計基準の改訂が行われたときの会計処理・開示上の取扱い

実務対応報告18号等の当面の取扱いを適用し、IFRSや米国会計基準により作成された連結子会社等の財務諸表を基礎に連結財務諸表を作成している場合、準拠しているIFRSや米国会計基準の改訂が行われたときには、連結財務諸表上も会計方針の変更として取り扱う必要がありますか。また、連結財務諸表上の表示科目及び注記についての影響はありますか。

A19

(1) 会計方針の変更としての取扱い

実務対応報告18号等の当面の取扱いを適用し、IFRSや米国会計基準により作成された連結子会社及び持分法適用会社(以下、これらを合わせて「連結子会社等」という。)の財務諸表を基礎に連結財務諸表を作成している場合において、連結子会社等の財務諸表が適用しているIFRSや米国会計基準の改訂が行われたときには、連結財務諸表においても会計方針の変更として取り扱われ、重要性に応じて会計方針の変更の注記の要否を検討する必要があります。また、IFRSや米国会計基準において公表済で未適用の会計基準等がある場合にも、その重要性を踏まえて注記の要否を検討する必要があります。

  • IFRS及び米国会計基準における主な改訂としては以下のものがありますが、影響度合いの把握などの準備が必要と考えられます。IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」(2018年1月1日以後開始事業年度から原則適用)
  • IFRS第9号「金融商品」(2018年1月1日以後開始事業年度から原則適用)
  • IFRS第16号「リース」(2019年1月1日以後開始事業年度から原則適用)
  • 米国会計基準 Topic606「顧客との契約から生じる収益」(公開企業体:2017年12月15日より後に開始する事業年度から適用、その他の企業:2018年12月15日より後に開始する事業年度から適用)
  • 米国会計基準ASU2016-1「金融商品-総論(Subtopic825-10):金融資産及び金融負債に関する認識及び測定」(公開企業体:2017年12月15日より後に開始する事業年度から適用、その他の企業:2018年12月15日より後に開始する事業年度から適用)
  • 米国会計基準 Topic842「リース」(公開企業体:2018年12月15日より後に開始する事業年度から適用、その他の企業:2019年12月15日より後に開始する事業年度から適用)

(2) 表示科目及び注記の取扱い

実務対応報告18号は、連結財務諸表作成における連結子会社の会計処理について定めたものであり、表示科目及び注記については特段の定めはされていません。したがって、IFRS及び米国会計基準の改訂により、連結子会社の個別財務諸表において新たな表示科目が使用されることになった場合等(例えば、連結子会社がIFRS第15号を適用し、契約資産等の表示科目を新たに使用する場合や、連結子会社がIFRS第9号を適用し、金融商品の分類及び測定を行った場合等)においても、連結財務諸表における表示科目及び注記については、連結財規等に基づき、適切と判断される表示科目を使用し、注記を行うものと考えられます。

開示府令編

Q20
開示府令改正の概要

2018年6月に公表された金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ報告」における提言を踏まえ、開示府令の改正が公布されましたが、改正の概要等はどのようなものでしょうか。

A20

2019年1月31日に、開示府令の改正が公布、施行されています。2018年6月に公表された金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告(以下「WG報告」という。)における「財務情報及び記述情報の充実」、「建設的な対話の促進に向けた情報の提供」、「情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組」に関する提言を踏まえ、有価証券報告書等の記載内容の改正が行われています。

(1) 改正の概要

① 財務情報及び記述情報の充実

  • 経営方針、経営戦略等について、市場の状況、競争優位性、主要製品・サービス、顧客基盤等に関する経営者の認識の説明を含めた記載を求めること
  • 事業等のリスクについて、顕在化する可能性の程度や時期、リスクの事業へ与える影響の内容、リスクへの対応策の説明を求めること
  • 会計上の見積りや見積りに用いた仮定について、不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響等に関する経営者の認識の記載を求めること

② 建設的な対話の促進に向けた情報の提供

  • 役員の報酬について、報酬プログラムの説明(業績連動報酬に関する情報や役職ごとの方針等)、プログラムに基づく報酬実績等の記載を求めること
  • 政策保有株式について、保有の合理性の検証方法等について開示を求めるとともに、個別開示の対象となる銘柄数を現状の30銘柄から60銘柄に拡大すること

③ 情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組

  • 監査役会等の活動状況、監査法人による継続監査期間、ネットワークファームに対する監査報酬等の開示を求めること

(2) 適用時期

適用時期 有報の記載内容 区分
2019年3月31日以後終了する年度の有報から適用
  • (※)経過措置:2019年3月31日~2020年3月30日までの間に終了する年度は従前規定の適用可
【コーポレート・ガバナンスの状況等】
  • 役員の報酬等(業績連動報酬)
  • 株式の保有状況(政策保有株式)
②建設的な対話の促進に向けた情報の提供
【コーポレート・ガバナンスの状況等】
【監査の状況】
  • 会計監査の状況(監査人の選定理由・評価)
  • 監査報酬の内容等(ネットワークベースの報酬(※)、監査報酬の同意理由)
③情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組
2020年3月31日以後終了する年度の有報から適用
ただし、2019年3月31日以後終了する年度の有報からの適用可
【コーポレート・ガバナンスの状況等】
【監査の状況】
  • 監査役監査の状況(監査役会等の活動状況)
  • 会計監査の状況(継続監査期間)
【経営方針等】(経営者の認識の説明)
【事業等のリスク】(主要なリスク)
【MD&A】(会計上の見積り)
①財務情報及び記述情報の充実

なお、財務会計基準機構(FASF)セミナー資料の「有価証券報告書の作成要領」ⅱページにおいて、2019年1月改正の開示府令に関する適用時期については、次の点が示されています。

  • 適用時期については、項目ごとに選択することができるものと考えられる
  • ただし、経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(第二号様式記載上の注意(30))と財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針(第二号様式記載上の注意(54)c)の規定は、同時に適用しなければならないと考えられる
  • また、提出会社が将来にわたって事業活動を継続するとの前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況その他提出会社の経営に重要な影響を及ぼす事象(第二号様式記載上の注意(31)b)と経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(第二号様式記載上の注意(32))の規定は、同時に適用しなければならないと考えられる

(3) 会社法・金商法の一体化に向けた議論

2018年3月30日に、財務会計基準機構(FASF)から「有価証券報告書の開示に関する事項-『一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について』を踏まえた取り組み-」が公表され、有価証券報告書と事業報告等の記載の共通化を図る上での留意点や記載事例が示されました。また、同日付けで、金融庁・法務省から公表された「『一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について』を踏まえた対応について」においては、「有価証券報告書の開示に関する事項」に掲げられた「作成にあたってのポイント」及び「記載事例」の内容は、関係法令の解釈上、問題ないものと考えられる旨が記載されています。

なお、2018年12月28日に、「事業報告と有価証券報告書の一体的開示のための取組の支援について」(内閣官房、金融庁、法務省、経済産業省の連名)が公表され、事業報告等と有価証券報告書の一体的開示の記載例の紹介がされています。

(4) 記述情報の開示に関する原則

① 公表の経緯及び目的

金融庁は、WG報告における提言を踏まえ、2019年3月19日に、「記述情報の開示に関する原則」(以下「本原則」という。)を公表しています。

WG報告では、ルールへの形式的な対応にとどまらない開示の充実に向けた企業の取組みを促すため、開示の考え方、望ましい開示の内容や取組みをまとめたプリンシプルベースのガイダンスを策定すべきと提言されました。

本原則は、企業情報の開示に関する上記提言を踏まえ、財務情報以外の開示情報である、いわゆる「記述情報」について、開示の考え方、望ましい開示の内容や取組みをまとめたものです。このため、新たな開示事項を加えるものではありませんが、開示書類の作成・公表に関与する者(例えば、経営者、作成事務担当者、IR 担当者等)には、この原則に沿った開示が実現しているか、自主的な点検を継続することが期待され、また、投資家が企業との対話を行う際に利用することも有用と考えられる、とされています。

② 総論

本原則では、まず総論として、以下の原則を定めるとともに、それぞれの原則について、考え方及び望ましい開示に向けた取組みが示されています。

ⅰ 企業の情報開示における記述情報の役割

  • 1-1.記述情報は、財務情報を補完し、投資家による適切な投資判断を可能とする。また、記述情報が開示されることにより、投資家と企業との建設的な対話が促進され、企業の経営の質を高めることができる。このため、記述情報の開示は、企業が持続的に企業価値を向上させる観点からも重要である。企業は、記述情報及びその開示のこのような機能を踏まえ、充実した開示をすることが期待される。

ⅱ 記述情報の開示に共通する事項

【取締役会や経営会議の議論の適切な反映】

  • 2-1.記述情報は、投資家が経営の目線で企業を理解することが可能となるように、取締役会や経営会議における議論を反映することが求められる。

【重要な情報の開示】

  • 2-2.記述情報の開示については、各企業において、重要性(マテリアリティ)という評価軸を持つことが求められる。

【セグメントごとの情報の開示】

  • 2-3.記述情報は、投資家に対して企業全体を経営の目線で理解し得る情報を提供するために、適切な区分で開示することが求められる。

【分かりやすい開示】

  • 2-4.記述情報の開示に当たっては、その意味内容を容易に、より深く理解することができるよう、分かりやすく記載することが期待される。

③ 各論

次に、各論として、以下の開示項目について、考え方及び望ましい開示に向けた取組みが示されています。また、以下の開示項目は、2019年1月31日に公布、施行された改正開示府令により記載が求められる事項として示されています。このため、前記「(2) 適用時期」のとおり、2020年3月31日以後に終了する事業年度の有価証券報告書から適用となりますが、この3月期の有価証券報告書からの早期適用も可能とされています。

ⅰ 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

  • 1-1.経営方針・経営戦略等
  • 1-2.優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
  • 1-3.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

ⅱ 事業等のリスク

ⅲ 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)

  • 3-1.MD&Aに共通する事項
  • 3-2.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資本の流動性に係る情報
  • 3-3.重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

(5) 記述情報の開示の好事例集

① 公表の経緯及び目的

金融庁は、WG報告における提言を踏まえ、2019年3月19日に、「記述情報の開示の好事例集」(以下「本好事例集」という。)を公表しています。

我が国の開示内容の充実を図る上では、開示に関するルールやプリンシプルベースのガイダンスの整備に加え、適切な開示の実務の積上げを図る取組みも必要と考えられることから、金融庁は、投資家・アナリスト及び企業による開示の好事例(ベストプラクティス)収集のための勉強会を開催し、当該勉強会において投資家・アナリストから紹介された開示例を本好事例集として取りまとめました。

② 内容

本好事例集には、本原則に対応する形で、各開示例のよいポイントが示されています。また、有価証券報告書における開示例に加え、任意の開示書類における開示例のうち、有価証券報告書における開示の参考となり得るものも含められています。これらの開示例を参考に、本原則に即した有価証券報告書の開示の充実が図られることが期待されています。

なお、本好事例集は随時更新を行うとともに、必要に応じて、本原則に反映していくことにより、開示内容全体のレベルの向上を図ることも予定されています。

Q21
役員報酬

改正開示府令のうち、【コーポレート・ガバナンスの状況等】の「役員の報酬等」について、有価証券報告書に与える具体的な影響はどのようなものでしょうか。

A21

今回の改正により、【コーポレート・ガバナンスの状況等】の「役員の報酬等」の開示に関して、業績連動報酬などの開示が拡充されており、2019年3月31日以後に終了する事業年度の有価証券報告書から適用となります。なお、役員ごとの個別開示について、「連結報酬等の総額が1億円以上の者に限ることができる」という点は変更がされていません。

(1) 役員区分ごとの報酬等の種類別の総額

改正後 従来
報酬等の種類別(例えば、固定報酬、業績連動報酬及び退職慰労金等の区分)の総額 報酬等の種類別(例えば、基本報酬、ストック・オプション、賞与及び退職慰労金等の区分)の総額

今回の改正では、開示項目のうち、報酬等の「種類別」の例が変更されています。これは、従来の例として挙げられている「基本報酬」の定義が曖昧であったこと、「業績連動報酬」に関する開示の拡大に合わせているといったことが背景にあると考えられます。

(2) 報酬額等の決定方針

改正後 従来
提出日現在において、提出会社の役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針について、
①提出日現在における方針の内容、決定方法、方針を定めていない場合はその旨
②役職ごとの方針を定めている場合はその内容
③方針の決定権限を有する者の氏名又は名称、その権限の内容、裁量の範囲
④方針の決定に関与する委員会(以下「委員会等」という。)が存在する場合は、その手続の概要
提出日現在において、提出会社の役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針について、提出日現在における方針の内容、決定方法、方針を定めていない場合はその旨

今回の改正により、従来の開示に加えて、役職ごとの報酬額等の決定方針の開示が求められています。これは、WG報告で、「役職ごとの支給額についての考え方を定めている場合にはその内容など、報酬の決定・支給の方法やこれらに関する考え方を具体的かつ分かりやすく記載することを求めるべき」という意見を反映したものです。

また、今回の改正により、方針の決定権限者の情報、方針の決定に関与する委員会等の手続の概要の開示も求められています。これは、WG報告で、「報酬決定プロセスの客観性・透明性のチェックを可能とするため、算定方法の決定権者、その権限や裁量の範囲、報酬委員会がある場合にはその位置付け・構成メンバー等の情報(中略)についても開示を求めるべき」という意見を反映したものです。

(3) 業績連動報酬

改正後 従来
提出会社の役員の報酬等に、業績連動報酬が含まれる場合は、
①業績連動報酬とそれ以外の報酬等の支払割合の決定方針を定めているときは、その方針の内容
②当該業績連動報酬に係る指標
③当該指標を選択した理由
④当該業績連動報酬の額の決定方法
⑤最近事業年度における当該業績連動報酬に係る指標の目標、実績

ここでいう「業績連動報酬」とは、利益の状況を示す指標や株式の市場価格の状況を示す指標等、提出会社又は関係会社の業績を示す指標を基礎として算定される報酬等を指します。今回の改正では、以下のWG報告の提言を踏まえ、業績連動報酬に関する開示が求められています。

  • 経営陣の報酬内容・報酬体系と経営戦略や中長期的な企業価値向上との結び付きを検証できるよう(中略)固定報酬と短期・中長期の業績連動報酬の支給割合(中略)など、報酬の決定・支給の方法やこれらに関する考え方を具体的に分かりやすく記載することを求めるべき
  • 役員報酬の算定方法に KPI等の指標が関連付けられている場合には、その指標と指標の選定理由、業績連動報酬への反映方法(中略)についても記載されるべき
  • 報酬プログラムに基づく報酬実績について、経営陣のインセンティブとして実際に機能しているかを確認できるよう、当期の KPI の目標値と実際の達成度(中略)が開示されるべき

(4) その他

改正後 従来
①提出会社の役員の報酬等に関する株主総会の決議が
(ⅰ) ある場合は、当該決議年月日
(ⅱ) ない場合は、提出会社の役員の報酬等について定款に定めている事項の内容
②最近事業年度の提出会社の役員の報酬等の額の決定過程における提出会社の取締役会、委員会等の活動内容

今回の改正により、役員の報酬等に関する株主総会の決議の年月日(決議がない場合は定款の内容)の開示が求められています。また、最近事業年度の役員の報酬等の額の決定過程における、取締役会、委員会等の活動内容の開示も求められています。これは、WG報告で、「報酬決定プロセスの(中略)実効性を確認できるよう、取締役会・報酬委員会の具体的活動内容などについても開示を求めるべき」という意見を反映したものです。

Q22
政策保有株式

改正開示府令のうち、【コーポレート・ガバナンスの状況等】の「株式の保有状況」について、有価証券報告書に与える具体的な影響はどのようなものでしょうか。

A22

今回の改正により、【コーポレート・ガバナンスの状況等】の「株式の保有状況」の開示に関して、政策保有株式の保有の合理性の検証方法などの開示が拡充されており、2019年3月31日以後に終了する事業年度の有価証券報告書から適用となります。

(1) 基本情報

改正後 従来
①保有目的が純投資目的である投資株式と純投資目的以外の目的である投資株式(政策保有株式)の区分の基準や考え方
②政策保有株式について、提出会社の保有方針、保有の合理性を検討する方法
③政策保有株式について、個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等の検証の内容

今回の改正では、以下のWG報告の提言を踏まえ、政策保有株式の基本情報に関する開示の拡充が図られています。

  • 政策保有目的と思われる株式保有が純投資に区分されているケースがあるとの指摘があることから、純投資と政策投資の区分の基準や考え方の明確な説明を求める
  • 資本コストをかけリスクをとって株式を保有する以上、政策保有に関する方針、目的や効果は具体的かつ十分に説明されるべき
  • 政策保有株式の保有について、その合理性を検証する方法や取締役会等における議論の状況について開示を求めるべき

(2) 全体に関する情報

改正後 従来
保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式を非上場株式とそれ以外に区分し、
①銘柄数
②貸借対照表計上額の合計額
③最近事業年度における株式数が前事業年度における株式数から変動した銘柄について
(ⅰ) 増加(減少)した銘柄数
(ⅱ) 増加(減少)に係る取得(売却)価額の合計額
(ⅲ) 増加の理由
保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式の
①銘柄数
②貸借対照表計上額の合計額

今回の改正により、政策保有株式について、変動した銘柄数、変動に係る取得(売却)価額の合計額、増加の理由の開示が求められています。これは、WG 報告で、「時価変動等により開示銘柄に差が生じるケースにおいて、各年の異動状況の把握ができない」という意見を反映したものです。

(3) 個別開示の対象となる銘柄(要件)

改正後 従来
保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式(非上場株式を除く)及び、みなし保有株式のうち
①当該銘柄の貸借対照表計上額が提出会社の資本金額の1%を超えるもの
②当該銘柄の貸借対照表計上額の大きい順の60銘柄(①が60銘柄に満たない場合のみ) ②当該銘柄の貸借対照表計上額の大きい順の30銘柄(①が30銘柄に満たない場合のみ)

今回の改正により、個別開示の対象となる政策保有株式の範囲が30銘柄から60銘柄に拡大されています。これは、WG報告で、「開示対象となる銘柄数を増やすべき」という意見を反映するものです。また、60銘柄という数字は、「日経 500種企業による政策保有株式の保有銘柄数の中央値が 63.0」(WG 報告)という点を参考にしていると考えられます。

(4) 個別開示の対象となる銘柄(情報)

改正後 従来
①銘柄
②株式数
③貸借対照表計上額
④保有目的
⑤提出会社の経営方針・経営戦略等、事業の内容及びセグメント情報と関連付けた定量的な保有効果(定量的な保有効果の記載が困難な場合はその旨)
⑥株式数が増加した理由(最近事業年度における株式数が前事業年度における株式数から増加した銘柄に限る。)
⑦当該株式の発行者による提出会社の株式の保有に関する情報
①銘柄
②株式数
③貸借対照表計上額
④保有目的

今回の改正により、個別開示の対象となった政策保有株式について、経営方針等、事業の内容及びセグメント情報と関連付けた定量的な保有効果、株式数の増加理由の開示が求められています。これは、WG報告で、「政策保有株式に係る開示の現状をみると、保有目的の説明が定型的かつ抽象的な記載にとどまっており、保有の合理性・効果が検証できない」という意見を反映したものです。

また、個別開示の対象となった政策保有株式の発行者による、提出会社の株式の保有に関する情報の開示も求められています。これは、WG報告で、「投資判断を行う上では、(中略)当該投資先企業の株式が政策保有目的の株主に保有されている状況についても検証する必要がある」という意見を反映したものです。

(5) 保有目的が純投資目的である投資株式に関する開示

改正後 従来
非上場株式とそれ以外に区分し、
①最近事業年度とその前事業年度における貸借対照表計上額の合計額、銘柄数
非上場株式とそれ以外に区分し、
①最近事業年度とその前事業年度における貸借対照表計上額の合計額

今回の改正により、保有目的が純投資目的である投資株式について、新たに最近事業年度とその前事業年度における「銘柄数」の開示が追加されています。

Q23
監査の状況

改正開示府令のうち、【コーポレート・ガバナンスの状況等】の「監査の状況」について、有価証券報告書に与える具体的な影響はどのようなものでしょうか。

A23

今回の改正により、【コーポレート・ガバナンスの状況等】の「監査の状況」の開示に関して、監査人の選定理由・評価、監査報酬の同意理由などの開示が拡充されており、各開示項目の適用時期は以下となります。

  • 2019年3月31日以後終了する年度の有価証券報告書から適用
    (1) 会計監査の状況(監査人の選定理由・評価)
    (2) 監査報酬の内容等(ネットワークベースの報酬(※) 、監査報酬の同意理由)
    (※) 経過措置:2019年3月31日~2020年3月30日までの間に終了する年度は従前規定の適用可
  • 2020年3月31日以後終了する年度の有価証券報告書から適用、ただし、2019年3月31日以後終了する年度の有報からの適用可
    (3) 監査役監査の状況(監査役会等の活動状況)
    (4) 会計監査の状況(継続監査期間)

(1) 会計監査の状況(監査人の選定理由・評価)

改正後 従来
①提出会社が監査公認会計士等を選定した理由について、選定するにあたって考慮している方針(解任、不再任の決定の方針を含む。)を含めて具体的に記載
②提出会社の監査役会等が監査公認会計士等又は会計監査人の評価を行った場合、その旨及び内容

今回の改正では、以下のWG報告の提言を踏まえ、監査人の選定理由・選定方針(解任・不再任の決定方針を含む)の開示が求められています。これは、WG報告で、「監査人が被監査会社から報酬を得るという関係性に鑑みると、企業が適切に監査人を選任しているか、監査人の独立性が担保され十分に機能しているかを知る上で重要な情報である」という意見を反映したものです。

また、監査役会等が監査人の評価を行った場合、その旨及び内容の開示も求められています。

(2) 監査報酬の内容等(ネットワークベースの報酬、監査報酬の同意理由)

改正後 従来
  • ① 最近2連結会計年度において、提出会社及び提出会社の連結子会社がそれぞれ下記の者に支払った、又は支払うべき報酬(監査証明業務と非監査業務に区分して記載)
    (ⅰ) 監査公認会計士等
    (ⅱ) 監査公認会計士等と同一のネットワークに属する者
  • ② ①に記載する報酬のほか、最近2連結会計年度において、連結会社の監査証明業務に基づく報酬として重要な報酬がある場合は、その内容を具体的かつ分かりやすく記載
  • 監査役会が「会計監査人の職務を行うべき者の報酬等」について同意をした理由
  • ① 最近2連結会計年度において、提出会社及び提出会社の連結子会社が下記の者に支払った、又は支払うべき報酬(監査証明業務と非監査業務に区分して記載)
    (ⅰ) 監査公認会計士等
  • ② ①に記載する報酬のほか、最近2連結会計年度において、連結会社の監査報酬等として重要な報酬がある場合は、その内容を具体的かつ分かりやすく記載
    (例えば、監査公認会計士等と同一のネットワークに属する者に対する報酬の内容)

従来、ネットワークベースの報酬は、重要な報酬の例として挙げられていました。今回の改正により、ネットワークベースの報酬の開示が必須となっており、監査証明業務と非監査業務に区分した開示(報酬を記載した非監査業務の内容を含む。)が求められています。これは、WG報告で、「ネットワークベースの報酬額・業務内容は、監査人の独立性を判断する観点から重要な情報である」という意見を反映したものですが、2019年3月期は従前規定によることが認められています。

また、監査役会が監査報酬に同意をした理由の開示も求められています。これは、WG報告で、「有価証券報告書における総覧性の向上の観点から、会社法上開示されている(中略)監査役会等が監査報酬額に同意した理由(中略)について、有価証券報告書でも開示されるべき」という意見を反映したものです。

(3) 監査役監査の状況(監査役会等の活動状況)

改正後 従来
以下の事項について具体的かつ分かりやすく記載
①監査役監査の組織
②監査役監査の人員
③監査役監査の手続
④最近事業年度における提出会社の監査役会等の活動状況(開催頻度、主な検討事項、個々の監査役の出席状況、常勤の監査役の活動等)
以下の事項について具体的かつ分かりやすく記載
①監査役監査の組織
②監査役監査の人員
③監査役監査の手続

今回の改正により、最近事業年度における監査役会等の活動状況(開催頻度、主な検討事項、個々の監査役の出席状況、常勤の監査役の活動等)の開示が求められています。

これは、WG報告で、「監査役会等の具体的な活動状況は、監査役会等の実効性を判断する上で必要な情報である。監査人と監査役の連携状況等を理解するため、開催頻度や出席状況等の計数的な開示だけでなく、議論された内容や監査役会が監査人の指摘にどのように対応したか等も含まれるべきである」という意見を反映したものです。

(4) 会計監査の状況(継続監査期間)

改正後 従来
提出会社の監査公認会計士等が監査法人である場合
①当該監査法人の
(ⅰ) 名称
(ⅱ) 継続監査期間
②業務を執行した公認会計士の氏名
③監査業務に係る補助者の構成
①業務を執行した公認会計士の
(ⅰ) 氏名
(ⅱ) 所属する監査法人名
(ⅲ) 継続監査期間(7年を超える場合に限る。)
②監査業務に係る補助者の構成
③監査証明を個人会計士が行っている場合の審査体制
提出会社の監査公認会計士等が公認会計士である場合
(略)

今回の改正により、監査公認会計士等が「監査法人である場合」と「公認会計士である場合」に区分した記載が求められています。また、監査法人である場合は、継続監査期間について 7会計期間以下であっても開示が必須となっています(従来は7年超の場合に限るとされていました。)。これは、WG報告で、「監査法人におけるローテーション制度が導入されていない中、継続監査期間は、監査人の独立性を判断する観点から重要な情報である」という意見を反映したものです。

Q24
経営方針等、事業等のリスク、MD&A

改正開示府令のうち、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】、【事業等のリスク】、【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】について、有価証券報告書に与える具体的な影響はどのようなものでしょうか。

A24

今回の改正では、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】、【事業等のリスク】、【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】の開示に関して、経営者の認識に基づく開示などが拡充されており、2020年3月31日以後に終了する事業年度の有価証券報告書から適用となります。ただし、2019年3月31日以後終了する事業年度の有価証券報告書からの早期適用も可能です。

(1) 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

改正後 従来
①最近日現在における連結会社の経営方針、経営戦略等の内容
(連結会社の経営環境(例えば、企業構造、事業を行う市場の状況、競合他社との競争優位性、主要製品・サービスの内容、顧客基盤、販売網等)についての経営者の認識の説明を含め、主な事業の内容と関連付けて記載)
②最近日現在における連結会社が優先的に対処すべき事業上、財務上の課題について、その内容、対処方針等を経営方針・経営戦略等と関連付けて具体的に記載
①最近日現在における連結会社の経営方針、経営戦略等の内容
(経営方針・経営戦略等を定めている場合のみ)

②最近日現在における連結会社が優先的に対処すべき事業上、財務上の課題についてその内容、対処方針等を具体的に記載

今回の改正により、経営方針等の内容として、経営環境についての経営者の認識の説明を含め、主な事業の内容と関連付けて記載することが求められます。これは、WG報告で、「ビジネスモデルについても(中略)経営戦略と関連付けて説明し、投資家による経営戦略の適切性や実現可能性の考察にも資するものとすべき」という意見を反映したものです。

また、優先的に対処すべき事業上・財務上の課題について、その内容・対処方針等を経営方針等と関連付けて記載することも求められています。これは、WG報告で、「経営戦略の実施状況や今後の課題もしっかりと示しながら、MD&AやKPI、リスク情報とも関連付けて、より具体的で充実した説明がなされるべき」という意見を反映したものです。

(2) 事業等のリスク

改正後 従来
① 有価証券報告書等に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、
経営者が連結会社の経営成績等の状況に重要な影響を与えると認識している「主要なリスク」(右記(ⅰ)~(ⅴ))について
イ)リスクが顕在化する可能性の程度や時期
ロ)リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容
ハ)リスクへの対応策
など具体的に記載
② リスクの重要性や経営方針・経営戦略等との関連性の程度を考慮して分かりやすく記載
① 有価証券報告書等に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、
(ⅰ) 連結会社の経営成績等の状況の異常な変動
(ⅱ) 特定の取引先・製品・技術等への依存
(ⅲ) 特有の法的規制・取引慣行・経営方針
(ⅳ) 重要な訴訟事件等の発生
(ⅴ) 役員・大株主・関係会社等に関する重要事項等、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項
について、一括して具体的に、分かりやすく、かつ、簡潔に記載

今回の改正により、「主要なリスク」について、顕在化する可能性の程度や時期、経営成績等の状況に与える影響の内容、対応策を記載することが求められます(従来は「主要な」という文言なし)。また、リスクの重要性や経営方針等・経営戦略等との関連性の程度を考慮して記載することになります。

これは、WG報告で、「経営者視点からみたリスクの重要度の順に、発生可能性や時期・事業に与える影響・リスクへの対応策等を含め、企業固有の事情に応じたより実効的なリスク情報の開示を促していく必要がある」という意見を反映したものです。

(3) 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)

改正後 従来
① 経営成績等の状況に関して、事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとに、経営者による認識、分析・検討内容を、経営方針等の内容のほか、有報に記載した他の項目の内容と関連付けて記載
② キャッシュ・フローの状況の分析等の記載にあたっては、資金調達の方法及び状況並びに資金の主要な使途を含む資金需要の動向についての経営者の認識を含めて記載
③ 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り、見積りに用いた仮定のうち、特に重要なものについて、見積りにより経営成績等に生じる影響など、「経理の状況」に記載した会計方針を補足する情報を記載
(「経理の状況」の注記にその旨を記載することで省略可)
① 経営成績等の状況に関して、事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとに、経営者による認識、分析・検討内容を記載

今回の改正により、経営成績等の状況に関して、経営者による認識・分析・検討内容を、経営方針等の内容のほか、他の項目の内容と関連付けて記載することが求められます。これは、WG報告で、「セグメント分析に際しては、経営管理と同じセグメントに基づいて、セグメントごとの資本効率も含め、セグメントの状況がより明確に理解できるような情報が開示されることが必要である」という意見を反映したものです。

また、キャッシュ・フローの状況の分析等の記載について、資金調達の方法・資金需要の動向についての経営者の認識を含めて記載することが求められます。これは、WG報告で、「投資判断に不可欠な情報であり、どこからどのように資本やキャッシュを調達しているのか、経営戦略の遂行上、調達した資本やキャッシュをどのように設備投資や研究開発に振り分けていくのか、といった情報がより実効的に開示されるべき」という意見を反映したものです。

さらに、会計上の見積りや見積りに用いた仮定について、「経理の状況」に記載した会計方針を補足する情報の記載が求められています。これは、WG報告で、「会計上の見積り・仮定は、投資判断・経営判断に直結するものであり、経営陣の関与の下、より充実した開示が行われるべき」という意見を反映したものです。

Q25
その他の改正項目

開示府令の改正のうち、「財務情報及び記述情報の充実」、「建設的な対話の促進に向けた情報の提供」、「情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組」以外の改正項目について、有価証券報告書に与える具体的な影響はどのようなものでしょうか。

A25

「財務情報及び記述情報の充実」、「建設的な対話の促進に向けた情報の提供」、「情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組」以外の改正項目として、主要な経営指標等の推移(株主総利回り)、コーポレート・ガバナンスの概要(基本的な考え方等)などの開示が拡充されており、2019年3月31日以後に終了する事業年度の有価証券報告書から適用となります。

(1) 主要な経営指標等の推移(株主総利回り)

今回の改正では、最近 5 年間の株主総利回りの推移を、提出会社が選択する株価指数の最近 5 年間の総利回りと比較して記載することを新たに求めています。

(2) コーポレート・ガバナンスの概要(基本的な考え方等)

今回の改正では、コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方を記載することを求めています。また、企業統治の体制の概要に、設置する機関に関する名称、目的、権限、構成員の氏名を記載することになります。

収益認識会計基準編

Q26
収益認識会計基準の早期適用

収益認識会計基準を早期適用する場合の適用初年度の留意事項を教えてください。

A26

① 適用初年度の取扱い

収益認識会計基準の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、原則として、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用することとされています(以下「原則的な取扱い」という。)。ただし、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することができるとする経過措置が定められています(収益認識会計基準84項)。

収益認識会計基準を遡及適用する場合、比較年度から収益認識会計基準を適用することになりますので、システム変更や内部統制の見直し等が必要となる企業においては、導入スケジュールにも影響が及ぶ可能性があります。したがって、適用初年度において、遡及適用するのか、適用初年度の期首から新たな会計方針を適用するのかの方針については早めの検討が必要となることに留意が必要です。

② 原則的な取扱いに従って遡及適用する場合

原則的な取扱いに従って遡及適用する場合であっても、以下ⅰからⅲの方法の1つ又は複数を適用することができるとされています(収益認識会計基準85項)。遡及適用する企業においても以下のいずれの方法で遡及適用するのか、早めの検討と対応が必要になると考えられます。

  • 適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期首より前までに従前の取扱いに従ってほとんどすべての収益の額を認識した契約について、適用初年度の前連結会計年度の連結財務諸表及び適用初年度の前事業年度の個別財務諸表(以下、これらを合わせて「適用初年度の比較情報」という。)を遡及的に修正しないこと
  • 適用初年度の期首より前までに従前の取扱いに従ってほとんどすべての収益の額を認識した契約に変動対価が含まれる場合、当該契約に含まれる変動対価の額について、変動対価の額に関する不確実性が解消された時の金額を用いて適用初年度の比較情報を遡及的に修正すること
  • 適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期首より前までに行われた契約変更について、すべての契約変更を反映した後の契約条件に基づき、次の処理を行い、適用初年度の比較情報を遡及的に修正すること
    (ア) 履行義務の充足分及び未充足分の区分
    (イ) 取引価格の算定
    (ウ) 履行義務の充足分及び未充足分への取引価格の配分

③ 適用初年度に経過措置を選択する場合

適用初年度に経過措置を選択する場合、適用初年度の期首より前までに従前の取扱いに従ってほとんどすべての収益の額を認識した契約に、新たな会計方針を遡及適用しないことができるとされています。また、経過措置を選択する場合、契約変更について、次のいずれかを適用し、その累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減することができることとされています(収益認識会計基準86項)。

  • 適用初年度の期首より前までに行われた契約変更について、すべての契約変更を反映した後の契約条件に基づき、上記の(ア)から(ウ)の処理を行うこと
  • 適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期首より前までに行われた契約変更について、すべての契約変更を反映した後の契約条件に基づき、上記の(ア)から(ウ)の処理を行うこと

④ 国際財務報告基準(IFRS)又は米国会計基準を連結財務諸表に適用している企業の適用初年度の取扱い

国際財務報告基準(IFRS)又は米国会計基準を連結財務諸表に適用している企業(又はその連結子会社)が当該企業の個別財務諸表に収益認識会計基準を適用する場合には、適用初年度において、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」又はTopic 606「顧客との契約から生じる収益」のいずれかの経過措置の定めを適用することができることとされています。また、IFRSを連結財務諸表に初めて適用する企業(又はその連結子会社)が当該企業の個別財務諸表に収益認識会計基準を適用する場合には、その適用初年度において、IFRS第1号「国際財務報告基準の初度適用」における経過措置に関する定めを適用することができるとされています(収益認識会計基準87項)。

⑤ 消費税等の会計処理に関する経過措置

適用初年度において、消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の会計処理を税込方式から税抜方式に変更する場合には、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うこととされています。したがって、消費税等の会計処理も遡及適用することが原則となりますが、適用初年度の期首より前までに税込方式に従って消費税等が算入された固定資産等の取得原価から消費税等相当額を控除しないことができるとする経過措置が定められています(収益認識会計基準89項)。

Q27
経過措置の適用方法

収益認識会計基準86項では「適用初年度の期首より前までに従前の取扱いに従ってほとんどすべての収益の額を認識した契約に、新たな会計方針を遡及適用しないことができる」との経過措置が定められています。当該定めは契約ごとに適用することができるでしょうか。

A27

(1) 経過措置の定めを適用する単位

収益認識会計基準18項では「本会計基準の定め(適用指針92項から104項に定める重要性等に関する代替的な取扱いを含む。)は、顧客との個々の契約を対象として適用する」と定められています。また、同項ただし書きにおいて「ただし、本会計基準の定めを複数の特性の類似した契約又は履行義務から構成されるグループ全体を対象として適用することによる財務諸表上の影響が、当該グループの中の個々の契約又は履行義務を対象として適用することによる影響と比較して重要性のある差異を生じさせないことが合理的に見込まれる場合に限り、当該グループ全体を対象として本会計基準の定めを適用することができる。」と定められています。

この収益認識会計基準18項のただし書きの定めは「例えば、特性の類似した複数の契約に含まれる財及びサービスのそれぞれが履行義務として識別され、当該履行義務に取引価格を配分する際には、原則として、個々の契約について、財及びサービスのそれぞれの独立販売価格の比率に基づくこととなる。ただし、個々の契約に基づき配分された取引価格との差異が財務諸表上の重要性のある影響を生じさせないことが合理的に見込まれる場合には、類似した複数の契約を1つのグループとし、当該グループに含まれる財及びサービスの独立販売価格の合計と取引価格の合計との比率を用いて、当該グループに含まれる各契約の財及びサービスの独立販売価格から当該財及びサービスに配分される取引価格を算定する方法も認められる」(収益認識会計基準116項)とされているように、個々の契約に対して収益認識会計基準を適用すると、実務負担が非常に重たくなることを想定して定められたものであることから、同項本文の定めは収益認識の単位について定めているものであり、経過措置には適用されないものと考えられます。

(2) 経過措置適用にあたっての留意点

IFRS第15号においても同様の経過措置が定められていますが、これを適用する場合には、表示されるすべての契約に首尾一貫して適用しなければならないとされています(IFRS15.C6)。

この点、収益認識会計基準の開発における経過措置の検討において、経過措置は、IFRS第15号をベースとしているため、IFRS第15号における定めを原則とするとの方向性で議論がなされ、IFRS第15号と同様の経過措置が定められました。このことから、収益認識会計基準86項の経過措置もIFRS第15号と同様に、会社のすべての「従前の取扱いに従ってほとんどすべての収益の額を認識した契約」に首尾一貫して適用しなければならないと考えられます。

なお、同一環境下で行われた同一の性質の取引等について、親会社及び子会社が採用する会計方針は、原則として統一する必要があり、かつ、連結財務諸表は一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成した個別財務諸表を基礎として作成しなければならないとされています(連結会計基準17項、10項、親子会社間会計処理統一取扱い3項、4項(1)、(3)、5項(1))。このため、親会社が連結財務諸表及び個別財務諸表において収益認識会計基準86項の経過措置を適用した場合、連結子会社の個別財務諸表においても同項の経過措置を適用することが原則となります。

Q28
収益認識会計基準の早期適用時の表示・開示

収益認識会計基準を早期適用する場合の表示・開示の取扱いを教えてください。

A28

早期適用時における表示及び注記事項に関しては以下の定めが設けられています。

(1) 表示及び注記事項

① 表示

収益認識会計基準においては、契約資産、契約負債又は債権を適切な科目をもって貸借対照表に表示し、これらを区分して表示しない場合は、それぞれの残高を注記することとされています。

ただし、収益認識会計基準を早期適用する場合においては、契約資産と債権を貸借対照表において区分表示せず、かつ、それぞれの残高を注記しないことができるとされています(収益認識会計基準88項)。

② 注記事項

顧客との契約から生じる収益については、企業の主要な事業における主な履行義務の内容及び企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)を注記することとされています(収益認識会計基準80項)。なお、上記以外の注記事項については、原則適用時までに検討することとされています(収益認識会計基準156項)。

(2) 財規等及び計規の改正

収益認識会計基準の公表に伴い、財規や計規も以下のとおり改正されていることに留意が必要となります。なお、いずれも適用時期は収益認識会計基準の適用と同様とされ、早期適用する企業においては、2019年3月期から下記の改正が適用されることになります。

① 財規等の改正

収益認識に関する注記として以下の事項が追加されています(財規8条の32、連結財規15条の26)。

  • 顧客との契約から生じる収益については、企業の主要な事業における主な履行義務の内容及び企業が当該履行義務に関する収益を認識する通常の時点

また、収益認識会計基準等の適用により企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」、企業会計基準適用指針第18号「工事契約に関する会計基準の適用指針」が廃止されることから、たな卸資産及び工事損失引当金の注記に関しての規定が削除されています(財規54条の4、連結財規40条、中間財規31条の3、中間連結財規43条)。

さらに、収益を認識するための5ステップの適用及び割賦基準に基づく収益計上が認められなくなることに伴い、以下の規定が削除されています(財規72条、73条)。

  • 総売上高の項目を示す名称を付した科目及びその控除科目として売上値引及び戻り高を示す名称を付した科目で掲記することができるとする規定を削除
  • 割賦販売売上高の表示を定めた規定を削除

② 計規の改正

収益認識に関する注記として以下の事項が追加されています(計規115条の2)。

  • 顧客との契約から生じる収益については、企業の主要な事業における主な履行義務の内容及び企業が当該履行義務に関する収益を認識する通常の時点
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