企業会計ナビ

2019年3月期 決算上の留意事項

2019.02.28
(2019.04.16更新)
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士
鈴木 真策、村田 貴広、横井 貴徳

税効果会計編

Q1
税効果会計基準一部改正の適用

税効果会計基準一部改正等を適用した場合、2019年3月期では会計方針の変更になるのでしょうか。

A1

税効果会計基準一部改正等においては、繰延税金資産の回収可能性に関する定めを除く、日本公認会計士協会の税効果会計に関する実務指針の定めを基本的に踏襲しつつ、表示及び注記事項、一部の会計処理について、必要と考えられる見直しが行われています。適用時期は2018年4月1日以後開始する年度の期首からとされています(税効果会計基準一部改正6項)。

税効果会計基準一部改正等では会計処理並びに表示及び注記事項に関する改正が行われていますが、表示及び注記事項に関する改正は次のとおりです(会計処理に関する改正はQ4を参照)。

  • 繰延税金資産及び繰延税金負債の表示(すべての繰延税金資産は投資その他の資産、繰延税金負債は固定負債に分類)
  • 繰延税金資産に関する注記事項の追加(追加される事項については<図表>参照。連結財務諸表作成会社の個別財務諸表では評価性引当額の内訳に関する数値情報のみ追加)

<図表> 追加される注記事項

項目 数値情報(注) 定性的な情報
評価性引当額の内訳に関する情報
  • 税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額
  • 将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額
評価性引当額(合計額)に重要な変動が生じている場合における、当該変動の内容
税務上の繰越欠損金に関する情報 繰越期限別に税務上の繰越欠損金に係る次の金額
  • 税効果相当額(税務上の繰越欠損金×税率)
  • 評価性引当額
  • 繰延税金資産計上額
税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由

(注)繰延税金資産の発生原因別の注記として記載されている税務上の繰越欠損金の金額が重要であるときに記載

これらの表示及び注記事項に関する変更は表示方法の変更とされており、会計方針の変更にはなりません(税効果会計基準一部改正59項)。なお、表示方法の変更については、比較情報においては財務諸表の組替えが求められますが(過年度遡及会計基準14項)、注記事項においては経過措置として、評価性引当額の合計額を除き、適用初年度の比較情報を記載しないことができるとされています(税効果会計基準一部改正7項)。なお、会社法における(連結)計算書類は単年度開示であり比較情報はありませんが、繰延税金資産及び繰延税金負債の表示に関する改正については、表示方法の変更として変更の内容及び理由を注記することになります。

Q2
税務上の繰越欠損金の繰越期限別の数値情報

税務上の繰越欠損金の繰越期限別の数値情報は、何年ごとに分類して記載するのでしょうか。

A2

税効果会計基準一部改正では、繰越欠損金の繰越期限別の数値情報を記載する場合の年度の区切り方について、特段定められていません。これは、企業における税務上の繰越欠損金の発生状況はさまざまであり、また、在外子会社の税制は多様であるため、繰越期間の年数や有無はさまざまであると考えられることを考慮し、年度の区切り方については、企業が有している税務上の繰越欠損金の状況に応じて適切に設定することが考えられるためとされています(税効果会計基準一部改正42項)。このため、税務上の繰越欠損金の繰越期限別の数値情報の記載にあたっては、それぞれの企業における税務上の繰越欠損金の状況に応じて、年度の区切り方を検討することになると考えられます。

Q3
税効果会計基準一部改正に関する会社法計算書類の取扱い

税効果会計基準一部改正のうち、開示(表示及び注記事項)を適用する場合において、会社法計算書類においても注記事項の追加は必要でしょうか。

A3

2018年3月26日に、税効果会計基準一部改正を反映した会社計算規則の改正が公布されました。この改正は繰延税金資産及び繰延税金負債の表示に関するものであり、繰延税金資産に関する注記事項の追加は含まれていません。このため、会社法計算書類においては、「評価性引当額の内訳に関する情報」及び「税務上の繰越欠損金に関する情報の注記」は必要ではないと考えられます。

ただし、当該事項が会社の財産又は損益の状態を正確に判断するために必要と判断される場合には、会社法計算書類においても、「評価性引当額の内訳に関する情報」及び「税務上の繰越欠損金に関する情報の注記」を追加情報として記載することも考えられます(会社計算規則116条)。

Q4
税効果適用指針等の適用と会計方針の変更

連結財務諸表作成会社、連結財務諸表を作成しない会社のそれぞれにおいて、税効果適用指針等の適用が会計方針の変更に該当するのはどのようなケースでしょうか。

A4

(1) 税効果適用指針等の概要と会計方針の変更

税効果適用指針では、基本的に連結税効果実務指針、個別税効果実務指針の内容を踏襲した上で、必要と考えられる会計処理について見直しを行っています。また、回収可能性適用指針は、税効果適用指針の公表に伴い、所要の改正を行ったものです。これらの会計処理に関する改正点は以下のとおりです。

  • 個別財務諸表における子会社株式又は関連会社株式(以下、これらを合わせて「子会社株式等」という。)に係る将来加算一時差異の取扱い(税効果適用指針8項(2))
  • 子会社の利益のうち投資時に留保しているものに関する連結財務諸表上の繰延税金負債の取扱い(税効果適用指針24項)
  • (分類1)に該当する企業における繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い(回収可能性適用指針18項)

これらの項目が個別財務諸表、連結財務諸表のそれぞれに与える影響は、<図表>のとおりです。

<図表> 会計処理に関する改正が個別財務諸表、連結財務諸表に与える影響

  個別財務諸表 連結財務諸表
個別財務諸表における子会社株式等に係る将来加算一時差異の取扱い(将来、配当送金されると見込まれるもの以外) 個別財務諸表における子会社株式等に係る将来加算一時差異に対して繰延税金負債を計上していた企業は影響あり 左記に該当する企業で、連結財務諸表上も繰延税金負債を取り崩すことなく計上していた企業は影響あり
子会社の利益のうち投資時(支配獲得時)に留保しているものに関する繰延税金負債の取扱い 影響なし 子会社の利益のうち投資時に留保しているものに対して繰延税金負債を計上していた企業は影響あり
(分類1)に該当する企業における繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い 完全支配関係にある国内の子会社株式の評価損に対して繰延税金資産を計上していた場合で一定の場合には影響あり 非連結子会社株式の評価損に対して繰延税金資産を計上していた場合を除き影響なし

なお、個別財務諸表における子会社株式等に係る将来加算一時差異の取扱いについては、Q5もご確認ください。

(2) 適用初年度の取扱い

税効果適用指針の適用初年度においてこれまでの会計処理と異なることとなる場合、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱われ、経過的な取扱いも定められていないことから、新たな会計方針を過去のすべての期間に遡及適用する必要があります(税効果適用指針65項(2)、161項、過年度遡及会計基準6項(1))。会計方針の変更により遡及適用がなされた場合、本改正による影響は、比較年度(2018年3月期)の期首((連結)計算書類においては当期(2019年3月期)の期首)に反映され、当該影響については、会計方針の変更の影響額として注記を検討することになります。

また、(1) に記載したとおり、例えば、会計処理に関する改正が個別財務諸表には影響を与えるが連結財務諸表には影響を与えないケースもあり得ます。当該ケースについては、個別財務諸表においてのみ会計方針の変更に該当し、連結財務諸表においては会計方針の変更に該当しないことになりますので、留意が必要です。

Q5
子会社株式等に係る将来加算一時差異における取扱いの改正

個別財務諸表における子会社株式等に係る将来加算一時差異における取扱いが改正されましたが、この改正が影響を与えるのはどのようなケースでしょうか。

A5

(1) 改正の概要

連結税効果実務指針では、連結財務諸表における子会社に対する投資に係る将来加算一時差異で、留保利益のうち、将来、配当送金されると見込まれるもの以外の将来加算一時差異については、原則として、繰延税金負債を計上しますが、「親会社がその投資の売却を親会社自身で決めることができ、かつ、予測可能な将来の期間に、その売却を行う意思がない場合には当該将来加算一時差異に対して」、繰延税金負債を計上しないこととされていました(連結税効果実務指針34項、37項)。一方で、個別税効果実務指針では、個別財務諸表における子会社株式に係る将来加算一時差異について、「支払が見込まれない場合」と「組織再編に伴い受け取った子会社株式等に係る一時差異のうち一定の要件を満たす場合」を除き、一律に繰延税金負債を計上することとされていました。

この点について、連結財務諸表における子会社又は関連会社(以下、これらを合わせて「子会社等」という。)に対する投資に係る将来加算一時差異(留保利益に係るものが配当により解消される場合を除く。)と、個別財務諸表における子会社株式等に係る将来加算一時差異の取扱いについて整合を図るため、個別財務諸表における子会社株式等に係る将来加算一時差異について、親会社又は投資会社がその投資の売却等を当該会社自身で決めることができ、かつ、予測可能な将来の期間にその売却等を行う意思がない場合、当該将来加算一時差異に係る繰延税金負債を計上しないこととする改正がなされています(税効果適用指針8項(2))。

(2) 改正が個別財務諸表に与える影響

個別財務諸表における子会社株式等に係る将来加算一時差異について、税効果適用指針においてはどのような内容のものが生じ得るかについて記載はありませんが、例えば、以下のケースで当該将来加算一時差異が生じると考えられます。

  • 子会社等において有償減資を行い、子会社株式等の会計上の簿価が税務上の簿価を上回るケース
  • 完全支配関係にある国内会社間の寄附金授受による投資価額修正により、完全親会社における寄附金支払側の子会社株式の会計上の簿価が税務上の簿価を上回るケース
  • 子会社等において有償減資を行い、子会社株式等の会計上の簿価が税務上の簿価を上回るケース
    有償減資が行われた場合、会計上は原則として子会社株式等の帳簿価額が減額されます(企業会計基準適用指針第3号「その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主の会計処理」3項)。一方、税務上は、払戻額に実質的な利益の分配と株式の譲渡対価と認められる部分があるとの考え方に基づき、払戻額(交付金銭等)から、交付金銭等のうち資本金等の額に対応する金額(減資資本金額)を控除した金額をみなし配当として計上し、減資資本金額と株式の譲渡原価(株式の帳簿価額×純資産減少割合)との差額を譲渡損益(完全子会社からの有償減資の場合は、譲渡損益に相当する額は、資本金等の額の加減算処理)として計上するため、在外子会社の有償減資により、会計上の簿価と税務上の簿価に差異が生じることがあります。
    会計上減額される子会社株式等よりも税務上減額される子会社株式等の方が大きい場合、個別財務諸表における子会社株式等に将来加算一時差異が生じますが、従来、将来の会計期間において支払が見込まれない税金の額を除き、一律に繰延税金負債を計上することとされていました(個別税効果実務指針16項、24項)。
  • 完全支配関係にある内国法人間の寄附金授受による投資価額修正により、完全親会社における寄附金支払側の子会社株式の会計上の簿価が税務上の簿価を上回るケース
    税務上、完全支配関係を有する内国法人間の寄附について、寄附を行った法人においては全額損金不算入となり、寄附を受けた法人においては全額益金不算入となるとされています(法人税法25条の2、37条2項)。また、完全支配関係にある内国法人間で寄附金授受がなされた場合には親会社において、寄附金に持分割合を乗じた金額で支出側の株式の帳簿価額を減額し、受贈益に持分割合を乗じた金額で受領側の株式の帳簿価額を増額する必要があります(法人税法施行令9条1項7号、119条の3第6項)。
    このように連結子会社間で寄附金の授受を行い、親会社が当該寄附金を受領した子会社の株式の簿価を税務上増額修正する場合の当該簿価修正額は将来減算一時差異となり(税効果適用指針84項(8))、親会社が当該寄附金を支出した子会社の株式の簿価を税務上減額修正する場合の当該簿価修正額は将来加算一時差異となります(税効果適用指針85項(5))。
    完全支配関係にある内国法人間の寄附金授受による投資簿価修正により繰延税金資産を上回る繰延税金負債が計上されていた企業又は繰延税金負債のみが計上されていた企業においては、親会社又は投資会社がその投資の売却等を当該会社自身で決めることができ、かつ、予測可能な将来の期間にその売却等を行う意思がない場合、本改正により、当該将来加算一時差異に係る繰延税金負債を取り崩す必要があり、当期の個別財務諸表に影響を及ぼすことになります。一方、寄附金支払側の子会社株式の連結上の簿価は寄附金支出による純資産の減少分だけ減少しており、寄附金についてだけみると、連結上の簿価と税務上の簿価と差異はないため、個別財務諸表上認識した繰延税金負債は、連結財務諸表上税効果がないものとして取り消す処理を行っていたと考えられます。この場合、連結財務諸表作成会社においては、このケースでの影響は生じないと考えられます。
Q6
税効果会計基準一部改正等が会計方針の変更に該当しない場合の注記

税効果会計基準一部改正等の適用に伴う会計処理への影響がない場合、(連結)財務諸表においてどのような注記を行うことになるでしょうか。

A6

(1) 2018年3月期に表示及び開示に係る改正を早期適用していなかった場合

税効果会計基準一部改正等の適用に伴う会計処理への影響がない場合、会計方針の変更の注記を行う必要はありません。一方、税効果会計基準一部改正の適用初年度においては、表示方法の変更として取り扱われますので、表示方法の変更の注記として、過年度遡及会計基準16項に定める次の事項の注記が必要になります。

  • 財務諸表の組替えの内容
  • 財務諸表の組替えを行った理由
  • 組み替えられた過去の財務諸表の主な項目の金額(会社法における(連結)計算書類においては不要)

(2) 2018年3月期に表示及び開示に係る改正を早期適用していた場合

前期末に表示方法を変更していた場合、比較情報として表示される2018年3月期の(連結)貸借対照表は、税効果会計基準一部改正を適用して作成されていたため、当期において比較情報の財務諸表の組替えは行われません。税効果適用指針等の適用が会計方針の変更に該当せず、表示方法の変更にも該当しないため、会計方針の変更の注記、表示方法の変更の注記のいずれも不要と考えられます。

Q7
税効果会計基準一部改正による表示方法の変更の留意点

税効果会計基準一部改正に伴う貸借対照表における表示区分の変更に際し、どのような点に注意すべきでしょうか。

A7

税効果会計基準一部改正の適用初年度の比較情報においては、過年度遡及会計基準14項の定めに従って、表示する過去の財務諸表(すなわち2018年3月期の(連結)貸借対照表)について、新たな表示方法に従い財務諸表の組替えを行う必要があります(税効果会計基準一部改正59項)。連結財務諸表上、繰延税金資産と繰延税金負債の相殺は納税主体ごとに行われます。前期末の(連結)貸借対照表では、この相殺が流動項目と固定項目に分けて行われていますが、改正後は、流動項目では繰延税金資産、固定項目では繰延税金負債が計上されていた納税主体がある場合などでは、前期末の連結貸借対照表上流動資産又は流動負債に計上されている繰延税金資産又は繰延税金負債を単純に固定区分に組み替えればよいという訳ではありません。

例えば、前期末において、納税主体Aでは流動資産に繰延税金資産が20、固定負債に繰延税金負債が70計上されており、納税主体Bでは流動資産に繰延税金資産が40、固定負債に繰延税金負債が20計上されていたケースを想定します。正しく財務諸表の組替えを行うと、納税主体Aは繰延税金負債が50、納税主体Bは繰延税金資産が20となり、連結貸借対照表上、繰延税金資産(固定資産)を20、繰延税金負債(固定負債)を50計上することになります(<図表1>参照)。

<図表1> 正しい組替えの方法

  改正前 改正後
A B A B 連結
繰延税金資産(流動) 20 40      
繰延税金資産(固定)       20 20
繰延税金負債(流動)          
繰延税金負債(固定) 70 20 50   50

しかし、改正前の表示方法では繰延税金資産(流動資産)が60(納税主体Aの20+納税主体Bの40)、繰延税金負債(固定負債)が90(納税主体Aの70+納税主体Bの20)計上されていたため、そのまま組み替えると、繰延税金資産(固定)60、繰延税金負債(固定)90が計上され、繰延税金資産と繰延税金負債の相殺漏れが生じます(<図表2>誤った方法①参照)。

また、単純に前期の連結財務諸表の繰延税金資産を固定項目に振り替えた上で繰延税金資産と繰延税金負債を相殺すると、繰延税金負債(固定)30が計上され、納税主体Aと納税主体Bという異なる納税主体の繰延税金資産と繰延税金負債が相殺されることになります(<図表2>誤った方法②参照)。繰延税金資産と繰延税金負債を正確に相殺するためには、納税主体ごとに流動資産及び流動負債に計上されている繰延税金資産又は繰延税金負債を固定区分に組み替えて相殺を行った上で、各社の個別貸借対照表を合算し、連結財務諸表を作成することが必要となります。

<図表2> 誤った組替えの方法

  改正前 改正後
A B 連結 連結
誤った方法① 誤った方法②
繰延税金資産(流動) 20 40 60    
繰延税金資産(固定)       60  
繰延税金負債(流動)          
繰延税金負債(固定) 70 20 90 90 30

なお、上述の方法で納税主体ごとに相殺を行った場合、前期の総資産の額がこれまでと異なることにより、総資産額や自己資本比率が前期の有価証券報告書に表示した額と異なるケースが考えられます。この場合、有価証券報告書の主要な経営指標等の推移(ハイライト情報)において、最近連結会計年度(事業年度)に係る経営指標等を遡(さかのぼ)って修正した上で、経営指標等については当該会計基準等を遡って適用した後の指標等となっている旨を記載することが考えられます(開示ガイドライン5-12-2)。

Q8
評価性引当額の注記

評価性引当額の注記の対象となる範囲を教えてください。

A8

(1) 繰越外国税額控除や繰越可能な租税特別措置法上の法人税額の特別控除等

税効果会計基準第二 一 4では、「将来の課税所得と相殺可能な繰越欠損金等については、一時差異と同様に取り扱うものとする。」とされています。

当該「繰越欠損金等」の「等」については、「繰越欠損金等には、繰越外国税額控除や繰越可能な租税特別措置法上の法人税額の特別控除等が含まれる。」とされており、繰越外国税額控除や繰越可能な租税特別措置法上の法人税額の特別控除が含まれるとされています(税効果適用指針4項(3))。ただし、回収可能性適用指針公表前の2011年改正個別税効果実務指針25項においては「繰越外国税額控除については、(中略)翌期以降に外国税額控除余裕額が生ずることが確実に見込まれるときにのみ、繰越外国税額控除の実現が見込まれる額を繰延税金資産として計上する」とのみ記載されていたことから、繰越外国税額控除の実現が見込まれない場合に繰延税金資産の発生原因別の主な内訳の注記にあたって、繰越外国税額控除に係る繰延税金資産と評価性引当額を両建てで注記するのか、注記の対象としないのか、実務において取扱いが分かれていたと考えられます。

この点、企業会計基準公開草案第60号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正(案)」に寄せられたコメントのうち、評価性引当額の注記の対象となる範囲に関するコメントに対応するための審議の過程では、繰越外国税額控除や繰越可能な租税特別措置法上の法人税額の特別控除等に係る繰延税金資産について、繰延税金資産から控除された額(評価性引当額)を注記の対象とするか否かが必ずしも明らかではないとの意見が聞かれたことから、税効果会計基準一部改正の本文において、評価性引当額を定義し、注記の対象となる範囲が明確化されました(税効果会計基準注解(注8)(1)参照)。これにより、これらについて翌期以降に外国税額控除余裕額等が生ずることが確実に見込まれず繰延税金資産を計上しない場合においても、繰延税金資産と評価性引当額を両建てで注記することに留意が必要です。

(2) 子会社に対する投資に係る連結財務諸表固有の将来減算一時差異等

子会社に対する投資に係る連結財務諸表固有の将来減算一時差異について税効果適用指針22項(1)を満たさないことにより繰延税金資産を計上していない場合には、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産が存在していません。このため、繰延税金資産から控除された額(評価性引当額)も存在しないと考えられますので、評価性引当額の注記の対象外となります。また、組織再編に伴い受け取った子会社株式又は関連会社株式(事業分離に伴い分離元企業が受け取った子会社株式等を除く。)に係る将来減算一時差異のうち、当該株式の受取時に生じていたものについて、予測可能な将来の期間に、その売却等を行う意思決定及び実施計画が存在しない場合に、税効果適用指針8項(1)ただし書きにより繰延税金資産を計上していないときについても同様であると考えられます(税効果会計基準一部改正32項)。

(3) 完全支配関係にある国内の子会社株式の評価損

完全支配関係にある国内の子会社株式の評価損のように、当該子会社株式を売却したときには税務上の損金に算入されるが、当該子会社を清算したときには税務上の損金に算入されないこととされているものについて、当該子会社株式を将来売却するか、当該子会社を清算するか等が判明していないときに、一時差異(将来減算一時差異)として取り扱うか否かが明確ではありませんでした。これについては、当該子会社株式を将来売却するか、当該子会社を清算するか等が判明していない場合であっても、個別貸借対照表に計上されている資産の額と課税所得計算上の資産の額との差額は、当該差額が解消する時にその期の課税所得を減額する効果を有する可能性があることから、一時差異が解消する時にその期の課税所得を減額する効果を持つものに含め、一時差異(将来減算一時差異)に該当するものと整理されました。このため、完全支配関係にある国内の子会社株式の評価損を計上している場合で、企業が当該子会社を清算するまで当該子会社株式を保有し続ける方針がある場合等、将来において税務上の損金に算入される可能性が低いと判断して繰延税金資産を計上しない場合にも、当該一時差異に係る繰延税金資産と評価性引当額を両建てで注記することに留意が必要です。

Q9
回収可能性適用指針の改正

(分類1)に該当する企業における繰延税金資産の回収可能性に関する取扱いの改正の影響と留意点について教えてください。

A9

(1) 改正の概要

2015年12月28日公表の回収可能性適用指針18項では、「(分類1)に該当する企業においては、繰延税金資産の全額について回収可能性があるものとする」とされ、監査委員会報告第66号の「判断できるものとする」との表現から変更されたことにより、(分類1)に該当する企業はスケジューリング不能な将来減算一時差異も含め、将来減算一時差異のすべてに対して繰延税金資産を計上するものとされていました(企業会計基準適用指針公開草案第54号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」に対するコメント5.主なコメントの概要とその対応91)。

この点、例えば、完全支配関係にある国内の子会社株式の評価損について、企業が当該子会社を清算するまで当該子会社株式を保有し続ける方針がある場合等、将来において税務上の損金に算入される可能性が低い場合のように、将来の状況により税務上の損金に算入されない項目に係る一時差異について、例外的に回収可能性がないと判断する場合があることを明らかにするため、改正回収可能性適用指針18項では、「(分類1)に該当する企業においては、原則として、繰延税金資産の全額について回収可能性があるものとする。」と「原則として、」との文言が追加されました(改正回収可能性適用指針67-4項)。

なお、当該改正は完全支配関係にある国内の子会社株式に係る将来減算一時差異に限定されています。すなわち、完全支配関係のない子会社株式等の評価損に係る将来減算一時差異は将来のいずれかの時点で損金に算入されるものであり、当該将来減算一時差異まで回収可能性がないものとして取り扱うことは、スケジューリング不能な一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性に関する取扱いを見直すことにつながるため、本改正の対象とされていません(改正回収可能性適用指針67-5項)。

(2) 2019年3月期決算における留意点

上記改正により、(分類1)の企業が完全支配関係にある国内の子会社株式の評価損に対して繰延税金資産を計上していた場合で、企業が当該子会社を清算するまで当該子会社株式を保有し続ける方針がある場合等、将来において税務上の損金に算入される可能性が低い場合においては、当該繰延税金資産を取り崩すことに留意が必要になります。

なお、連結財務諸表作成会社が個別財務諸表において、当該繰延税金資産を取り崩した場合、子会社株式の評価損に係る将来減算一時差異に対して繰延税金資産が計上されており、資本連結手続に伴い生じた当該評価損の消去に係る連結財務諸表固有の将来加算一時差異に対して、当該繰延税金資産と同額の繰延税金負債を計上していたケースから、当該評価損に対して繰延税金資産が計上されておらず、資本連結手続に伴い生じた当該評価損の消去に係る連結財務諸表固有の将来加算一時差異に対して繰延税金負債を計上しないケースになります(税効果適用指針20項)。このため、連結財務諸表上、当該評価損の消去に係る繰延税金負債を取り崩すことになると考えられ、個別財務諸表上の繰延税金資産の取崩しの影響は連結財務諸表上の繰延税金負債の取崩しにより相殺されることになります。したがって、連結財務諸表作成会社の連結財務諸表においては本改正による影響は生じないと考えられます。

(3) 適用初年度の取扱い

改正回収可能性適用指針18項を適用することによりこれまでの会計処理と異なることとなる場合、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱われることから新たな会計方針を過去のすべての期間に遡及適用する必要があります(改正回収可能性適用指針49-3項、過年度遡及会計基準6項(1))。新たな会計方針を遡及適用する場合には、表示期間(当期の財務諸表及びこれに併せて過去の財務諸表が表示されている場合の、その表示期間をいう。)より前の期間に関する遡及適用による累積的影響額は、表示する財務諸表のうち、最も古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映することとされています(過年度遡及会計基準6項、7項)。したがって、会計方針の変更により遡及適用がなされた場合、本改正による繰延税金資産の取崩しの影響は、比較情報として表示される財務諸表(2018年3月期)の期首に反映され、株主資本等変動計算書における前期首の繰越利益剰余金に計上される会計方針の変更の影響額は「会計方針の変更による累積的影響額」として比較情報における繰越利益剰余金の「当期首残高」に加算し、影響額反映後の当期首残高は「会計方針の変更を反映した当期首残高」として表示されることになるため留意が必要です。

なお、会社法における計算書類は単年度開示であるため、計算書類における累積的影響額を反映させるべき最も古い期間の期首は「当期首」となります。したがって、計算書類における遡及適用の影響額は当期首の残高に調整することから(会社計算規則96条7項1号かっこ書き)、財務諸表と計算書類とで、累積的影響額を反映させるべき時点が異なることに留意が必要です。

Q10
税効果会計に影響する税制改正

今後予定されている税制改正で当期の税効果会計に影響を与える可能性のある事項はあるのでしょうか。

A10

改正法人税法及び改正地方税法(2019年3月27日成立)では、法人課税関係で以下の見直しが行われました。

  • 法人事業税(所得割、収入割)の税率の改正(標準税率の引下げ)
  • 特別法人事業税(仮称)の創設

当該改正は2019年10月1日以後に開始する事業年度から適用するとされています。
ただし、当該改正は地方法人課税における税源の偏在を是正するための見直しであり、企業の実質的な負担は変わらないものと考えられ、当期の税効果会計に適用される税率への実質的な影響はないものと考えられます。

その他、現時点で多くの会社に影響する可能性のある税制改正は予定されていません。


情報量は適当ですか?

文章はわかりやすいですか?

参考になりましたか?