「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」のポイント

2018年3月19日
カテゴリー 会計情報トピックス

公認会計士 村田 貴広

ASBJから平成30年3月14日に公表

平成30年3月14日に、企業会計基準委員会(ASBJ)より実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」(以下「本実務対応報告」という。)が公表されています。

本実務対応報告は、平成28年に公布された「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第62号)により、「資金決済に関する法律」(平成21年法律第59号。以下「資金決済法」という。)が改正され、仮想通貨が定義された上で、仮想通貨交換業者に対して登録制が導入されたことを受けて、仮想通貨の会計処理及び開示に関する当面の取扱いを明らかにすることを目的として公表されたものです。 

1. 本実務対応報告の概要

(1)範囲(本実務対応報告第3項)

本実務対応報告は、資金決済法に規定するすべての仮想通貨を対象とすることとされています。ただし、自己(自己の関係会社を含む。)の発行した資金決済法に規定する仮想通貨は除くこととされています。

(2)仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が保有する仮想通貨の会計処理(本実務対応報告第5項から第13項)

① 期末における仮想通貨の評価に関する会計処理

仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、保有する仮想通貨(仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨を除く。以下同じ。)について、活発な市場が存在する場合、市場価格に基づく価額をもって当該仮想通貨の貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理することとされています。

また、仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、保有する仮想通貨について、活発な市場が存在しない場合、取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む。)が取得原価を下回る場合には、当該処分見込価額をもって貸借対照表価額とし、取得原価と当該処分見込価額との差額は当期の損失として処理することとされています。

② 活発な市場の判断規準

活発な市場が存在する場合とは、仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者の保有する仮想通貨について、継続的に価格情報が提供される程度に仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われている場合をいうものとされています。

③ 活発な市場が存在する仮想通貨の市場価格

仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、保有している活発な市場が存在する仮想通貨の期末評価において、保有する仮想通貨の種類ごとに、通常使用する自己の取引実績の最も大きい仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所における取引価格を用いることとされています。

また、仮想通貨交換業者において、通常使用する自己の取引実績の最も大きい仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所が自己の運営する仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所である場合、当該仮想通貨交換業者は、自己の運営する仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所における取引価格等が「公正な評価額」を示している市場価格であるときに限り、時価として期末評価に用いることができるとされています。

④ 仮想通貨の取引に係る活発な市場の判断の変更時の取扱い

活発な市場が存在する仮想通貨が、その後、活発な市場が存在しない仮想通貨となった場合、活発な市場が存在しない仮想通貨となる前に最後に観察された市場価格に基づく価額をもって取得原価とし、評価差額は当期の損益として処理します。活発な市場が存在しない仮想通貨となった後の期末評価は、活発な市場が存在しない仮想通貨として行うとされています。

また、活発な市場が存在しない仮想通貨が、その後、活発な市場が存在する仮想通貨となった場合、その後の期末評価は、活発な市場が存在する仮想通貨として行うとされています。

⑤ 仮想通貨の売却損益の認識時点

仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、仮想通貨の売却損益を当該仮想通貨の売買の合意が成立した時点において認識するとされています。

(3)仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨の会計処理(本実務対応報告第14項から第15項)

① 仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨に係る資産及び負債の認識

仮想通貨交換業者は、預託者との預託の合意に基づいて仮想通貨を預かった時に、預かった仮想通貨を預かった時の時価により資産として認識するとされています。

また、仮想通貨交換業者は、同時に、預託者に対する返還義務を、負債として認識します。当該負債の当初認識時の帳簿価額は、預かった仮想通貨に係る資産の帳簿価額と同額とするとされています。

② 仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨に係る期末の資産の評価及び負債の貸借対照表価額

仮想通貨交換業者は、預託者から預かった仮想通貨に係る資産の期末の帳簿価額について、仮想通貨交換業者が保有する同一種類の仮想通貨から簿価分離したうえで、活発な市場が存在する仮想通貨と活発な市場が存在しない仮想通貨の分類に応じて、仮想通貨交換業者の保有する仮想通貨と同様の方法により評価を行うとされています。

また、仮想通貨交換業者は、預託者への返還義務として計上した負債の期末の貸借対照表価額を、対応する預かった仮想通貨に係る資産の期末の貸借対照表価額と同額とするとされています。

(4)開示(本実務対応報告第16項から第17項)

① 表示

仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が仮想通貨の売却取引を行う場合、当該仮想通貨の売却取引に係る売却収入から売却原価を控除して算定した純額を損益計算書に表示することとされています。

② 注記事項

仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が期末日において保有する仮想通貨、及び仮想通貨交換業者が預託者から預かっている仮想通貨について、次の事項を注記することとされています。

ⅰ 仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が期末日において保有する仮想通貨の貸借対照表価額の合計額
ⅱ 仮想通貨交換業者が預託者から預かっている仮想通貨の貸借対照表価額の合計額
ⅲ 仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が期末日において保有する仮想通貨について、活発な市場が存在する仮想通貨と活発な市場が存在しない仮想通貨の別に、仮想通貨の種類ごとの保有数量及び貸借対照表価額

ただし、貸借対照表価額が僅少な仮想通貨については、貸借対照表価額を集約して記載することができます。

なお、仮想通貨交換業者は、仮想通貨交換業者の期末日において保有する仮想通貨の貸借対照表価額の合計額及び預託者から預かっている仮想通貨の貸借対照表価額の合計額を合算した額が資産総額に比して重要でない場合、注記を省略することができます。また、仮想通貨利用者は、仮想通貨利用者の期末日において保有する仮想通貨の貸借対照表価額の合計額が資産総額に比して重要でない場合、注記を省略することができます。

2. 適用時期

本実務対応報告は、平成30年4月1日以後開始する事業年度の期首から原則適用とし、公表日以後終了する事業年度及び四半期会計期間から早期適用することができることとされています。

なお、本稿は本実務対応報告の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。

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