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平成29年3月期 決算上の留意事項

2017.03.03
(2017.04.04更新)
新日本有限責任監査法人 会計情報トピックス
西野 恵子 武澤 玲子 村田 貴広
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<リスク分担型企業年金編>

Q7
リスク分担型企業年金の分類

リスク分担型企業年金制度が確定拠出制度、確定給付制度のいずれに該当するかはどのように判断するのでしょうか。


A7

平成28年12月16日に公表されたリスク分担取扱いでは、リスク分担型企業年金のうち、企業の拠出義務が、給付に充当する各期の掛金として規約に定められた標準掛金相当額、特別掛金相当額及びリスク対応掛金相当額の拠出に限定され、企業が当該掛金相当額の他に拠出義務を実質的に負っていないものは、確定拠出制度(退職給付会計基準4項)に分類し、規約に基づきあらかじめ定められた各期の掛金の金額を各期に費用処理することとされています。一方、それ以外のリスク分担型企業年金は確定給付制度(退職給付会計基準5項)に分類することとされています。

企業が一定の掛金相当額の他に拠出義務を実質的に負っていないことについては、事実関係に即した判断が求められますが、企業ごとに様々なケースが想定され、具体的な判断基準を示すことは困難と考えられます(リスク分担取扱いコメント対応3)。また、企業が一定の掛金相当額の他に拠出義務を実質的に負っていると考えられる具体例を示すと、却って実態に合った判断を妨げる可能性があると考えられることから(リスク分担取扱いコメント対応4)、リスク分担取扱いでは、具体的にどのような場合に「企業が当該掛金相当額の他に拠出義務を実質的に負っていない」と判断されるかは記載されていません。このため、リスク分担型企業年金の分類にあたっては、年金規約、社内規程、労使の覚書、パンフレット、説明資料等も考慮し、実態に応じた慎重な判断が求められます。

なお、リスク分担型企業年金における給付額の減額調整に対応し、企業がリスク分担型企業年金以外の退職給付制度の給付額を増額する義務を負う場合、企業に追加的な負担が求められることから、分類にあたっては当該給付額を増額する義務を考慮する必要があるとされている点にも留意が必要です(リスク分担取扱い20項)。


Q8
決算日前後のリスク分担型企業年金への移行の規約変更等

決算日前に確定拠出制度に分類される企業年金制度へ移行する規約の改訂が行われ、施行は翌期となる場合、従来の確定給付企業年金制度からの移行の会計処理は、どのタイミングで実施すべきでしょうか。


A8

確定給付企業年金制度から確定拠出制度に分類される企業年金制度へ移行する場合、退職給付制度の退職給付制度の終了に該当するとされ、下記の会計処理を行うとされています(リスク分担取扱い10項)。

  • 分担型企業年金への移行の時点で、移行した部分に係る退職給付債務と、その減少分相当額に係るリスク分担型企業年金に移行した資産の額との差額を、損益として認識する。移行した部分に係る退職給付債務は、移行前の計算基礎に基づいて数理計算した退職給付債務と、移行後の計算基礎に基づいて数理計算した退職給付債務との差額として算定する。
  • 移行した部分に係る未認識過去勤務費用及び未認識数理計算上の差異は、損益として認識する。移行した部分に係る金額は、移行した時点における退職給付債務の比率その他合理的な方法により算定する。
  • 上記により認識される損益の算定において、移行の時点で規約に定める各期の掛金に特別掛金相当額が含まれる場合、当該特別掛金相当額の総額を未払金等として計上する。

退職給付制度の終了に関する規約の改訂を期末日前に行い、翌期から施行される場合、移行に伴う会計処理は原則として翌期に行うこととされています。また、移行日が翌期となる場合でも、移行による改訂日が当期中であり、移行に伴う損失の発生する可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当該終了損失を当期の退職給付費用として計上し、退職給付に係る負債(個別では退職給付引当金)の額を増加させる処理を行う必要があることとされています(実務対応報告第2号「退職給付制度間の移行等の会計処理に関する実務上の取扱い」Q1)。このため、確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金に移行する規約の改訂が期末日以前に行われ、施行日は翌期となる場合、移行に伴う会計処理は原則として翌期に行われますが、移行に伴い損失が発生する可能性が高く、その金額を合理的に見積ることができる場合には、移行に伴う損失を当期に費用計上する必要がある点に留意が必要です。

なお、確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金へ移行する意思決定を期末日前に行い、規約の改訂は翌期になる場合及び移行の意思決定を期末日後に行う場合は、移行に伴う会計処理は翌期以降に行い、当期の財務諸表においては重要性に応じて後発事象の注記を検討することが考えられます。


<実務対応報告18号編>

Q9
改正実務対応報告18号の適用範囲

国内子会社等が作成した指定国際会計基準等を適用した連結財務諸表を一定の修正項目を除き親会社又は投資会社の連結決算手続上利用することができるのは、どのような場合でしょうか。


A9

国内子会社又は国内関連会社(以下、「国内子会社等」という。)が指定国際会計基準又は修正国際基準(以下、「指定国際会計基準等」という。)に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合(当連結会計年度の有価証券報告書により開示する予定の場合も含む。)には、当面の間、実務対応報告18号及び実務対応報告24号の対象範囲に含め、それらを連結決算手続上利用できるとされています。

「(当連結会計年度の有価証券報告書により開示する予定の場合も含む。)」とある通り、年度末(会社法)から国内子会社等が指定国際会計基準等に移行する場合に、親会社又は投資会社の会社法の連結決算手続において国内子会社等の連結財務諸表を利用できると考えられます。

一方、国内子会社等の年度末の会社法決算は日本基準に準拠し、年度末の有価証券報告書から指定国際会計基準等に移行する場合には、親会社の連結計算書類において国内子会社等が日本基準により作成した連結計算書類を取り込むことになるため、親会社の有価証券報告書も親会社の連結計算書類に合わせた数値を用いることが考えられます。したがって、親会社の年度末の有価証券報告書の連結決算手続において国内子会社等の指定国際会計基準等による連結財務諸表を利用できず、翌第1四半期から利用することになると考えられます(改正実務対応報告18号コメント対応5)。

なお、在外子会社の財務諸表については、国際財務報告基準又は米国会計基準に準拠して作成されている場合が対象になりますが、国内子会社等の場合は、米国会計基準に準拠している場合は対象にならないことに留意が必要です。

また、国内子会社等が任意に指定国際会計基準等に準拠した連結財務諸表を作成している場合も対象にならないことに留意が必要です。


<開示府令編>

Q10
開示府令改正の影響

開示府令の改正が公布されましたが、この改正が有価証券報告書に与える影響はどのようなものでしょうか。


A10

平成28年4月に公表された金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告では、制度開示の開示内容の自由度を高め、例えば、事業報告等と有価証券報告書の開示内容の共通化や、欧米に見られるような両者の一体的な書類としての開示などをより容易にすること、有価証券報告書の経営方針・経営成績等の分析等の非財務情報の開示を充実することなどを提案していました。

この提案を受けて、平成29年2月14日、金融庁から企業内容等の開示に関する内閣府令等の改正が公布されました。この改正により、有価証券報告書の「事業の状況」における「対処すべき課題」が「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に変更されました。また、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の記載上の注意において、経営方針・経営戦略等の内容を記載すること、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等がある場合には、その内容について記載することが追加されています。当該改正は公布日以降施行され、平成29年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書から適用されます。このため、平成29年3月期の有価証券報告書において、これまで決算短信に記載していた経営方針・経営戦略等の内容を記載することが求められます。

なお、上述の「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告の公表を受けて、平成29年2月10日、東京証券取引所から「決算短信・四半期決算短信の様式に関する自由度の向上のための有価証券上場規程の一部改正について」が公表され、短信の様式のうち、本体である短信のサマリー情報について、上場会社に対して課している使用の強制が撤廃されています。


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